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第4話

Author: 一途な皇帝陛下
翌日の回診に向かうと、大輔の病室には人が増えていた。

雅美だけではない。黒いスーツ姿のボディガードが何人も立ち並び、カメラを抱えた記者までいる。

「この人よ!」

私が入るなり、雅美はすぐさま私を指さして叫んだ。

「このヤブ医者よ!手術でわざと細工して、私の婚約者の脚の神経を傷つけたの!

ほら、早く撮って!この病院の医療ミスを世間に晒して!」

記者はすぐに私へカメラを向け、立て続けにシャッターを切った。フラッシュがまぶしくて、思わず目を細める。

大輔はベッドの背にもたれたまま、暗い顔で私を見ていた。

「静香、俺はチャンスをやったはずだ。

自分の非を認めて、雅美の前にひざまずいて謝れ。それから、二度と医者はやらないと誓え。

そうすれば、法的手段までは取らずにいてやる」

何もかも自分の思い通りになると信じて疑わない顔だった。

まるで、もう私の急所を押さえたつもりでいるみたいに。

この茶番を前にして、私はただ呆れるしかなかった。

「脚の神経を傷つけた?」

私はカルテを手に取ると、そのまま大輔の目の前へ放った。

「筋電図もMRIも、結果は全部ここに出てる。神経伝達はすべて正常よ。

岸本さん、人を陥れたいなら、もう少しましな口実を考えなさい。

データなんて、いくらでも改ざんできるでしょ!」

雅美が甲高い声でわめき立てる。

「あんたは院長なんだから、どうとでもできるじゃない!

現に大輔さんは脚がしびれるって言ってるのよ!それが何よりの証拠でしょ!

今日ここでちゃんと説明しないなら、私たちは絶対に帰らないから!

ネット中に広めてやるわ! あんたが金のために患者を殺しかける最低の女だって!」

要するに、私を社会的に潰すつもりらしい。

わめき散らす雅美を一瞥し、それを当然のように黙認している大輔へ視線を移す。

その瞬間、胸の奥に残っていた最後の我慢が、ぷつりと切れた。

「いいわ。そこまで騒ぎたいなら、最後まで付き合ってあげる」

私はスマホを取り出し、警備を呼ぼうとした。

だが、そのとき大輔が先に口を開いた。

「静香、無駄なことはやめろ。

この病院の出資者には、俺も多少顔が利く。

俺がひと言かければ、お前の院長の椅子なんてすぐ吹っ飛ぶ」

彼は私を見て、まるで情けでもかけてやるような目を向けた。

「これが最後だ。

こっちへ来て、ひざまずいて謝れ。

それから俺のところへ戻れ、黙って従う愛人になればいい。

それが、お前に残された唯一の道だ」

彼は手を差し出した。昔みたいに、私が惨めにその手を取るとでも思っているのだろう。

周囲ではボディガードたちがじりじりと距離を詰め、私の逃げ道を塞いでいた。

雅美は勝ち誇ったように笑い、私が屈辱に沈む瞬間を今か今かと待ち構えている。

そのときだった。

病室のドアが勢いよく開いた。

幼いのによく通る声が、室内に鋭く響く。

「ママをいじめないで!」

羽菜は両腕を広げ、ベッドの上の大輔をじっとにらみつけた。

「悪者!ママに近づかないで!」

そのすぐあと、長くしなやかな指をした手が、羽菜の肩にそっと置かれた。

響也は仕立てのいいダークグレーのコートをまとい、すらりとした長身をまっすぐに伸ばして立っていた。穏やかな目もとには、見逃せない冷たさが宿っている。

彼はそのまま中へ入ってくると、自然な仕草で私の腰を抱き寄せた。

「ごめん、遅くなった」

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