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涅槃、そして女王になれ
涅槃、そして女王になれ
Auteur: ガサガサチョコレート

第1話

Auteur: ガサガサチョコレート
ロッシファミリーには一つの掟がある。

次期「ドンナ」(ドンの伴侶、マダムと同じ)の座を望むなら、その実力を証明しなければならない。たった一年で、3億ドルものクリーンな金を稼ぎ出すこと。

ファミリーの援助は一切なし、すべて自分自身の力だけで。

ヴィンセントのため、私は10年もの歳月を費やしてこの試練に挑み続けた。ゼロから10社もの会社を立ち上げた。

しかし毎回、ゴールテープを切る直前になって、必ず何かが狂い出す。すべてが……脆くも崩れ去ってしまうのだ。

そして今年、私はついにやり遂げた。

激しく打ち鳴る心臓を抱えながら、私は監査報告書を手に彼の書斎へと駆け込んだ。ようやく勝ったのだと思った。

しかし、書斎の外に立っていた私は、全身の血が凍りつくような言葉を耳にした。

「ボス、イザベラの画廊が最終監査をパスしそうです」ヴィンセントの右腕、マルコの声だった。「もし彼女が本当にやり遂げたら……」

「彼女には無理だ」ヴィンセントは言葉を遮った。その声は氷のように冷たかった。「経理部には税務上の爆弾を落とす準備をさせてある。明日の朝一番で『問題が発覚』する手はずだ」

私の心が重く沈んだ。

「ですがボス、これで9回目ですよ。彼女も怪しむのではありませんか?」

「怪しんだところでどうなる?」ヴィンセントは冷笑した。「あいつは俺に夢中だ。逆らうことなど絶対にできない。それに、エヴァの準備を整えるのにもう少し時間が要る」

エヴァ。私の父の隠し子。またあの女だ。

「ボス、本当に……」

「エヴァと結婚するかって?違う」

ヴィンセントの声に緊張が走った。

「イザベラは俺のために10年も戦ってくれた。簡単に見捨てるわけにはいかない。

ただ……エヴァは違うんだ。彼女は純粋で、脆い。俺がいなければ、このファミリーで生きていく場所がない。俺の保護が必要なんだ。彼女はイザベラのように強くはない。

それに、彼女は俺の命の恩人だ。俺がいなければ、イザベラはとっくに彼女を狼の群れに放り込んでいただろう」

私は壁に寄りかかった。視界が激しく回り出す。

10年。

目が焼けつくように痛むまで、夜な夜な帳簿に向かい合った日々。

芸術への情熱を押し殺し、彼が望むという完璧な「ドンナ」になるため、自分自身を造り変えてきた歳月。

あの数々の「アクシデント」や失敗……そのすべてが、彼によって仕組まれていたのだ。

「イザベラの失敗したプロジェクトの資産は、今どうなっている?」ヴィンセントが続けた。

「ご指示の通り、いくつかのダミー会社を経由してエヴァお嬢様に資金を流しました。彼女の帳簿はクリーンです。彼女はすでに役員会に名を連ねており、立派な実力者です」

私はあやうく笑い出しそうになった。

当然だ。

私が築き上げたビジネスは、「失敗」したとされるものでさえ、資産が本当に失われたわけではなかったのだ。彼のかわいい恋人に流れていただけだった。

これがヴィンセント・コルレオーネ。この町最大のファミリーの跡取り。

私が10年間愛し続けた男。

私は一つ息を吸い込み、ドアを押し開けた。

「ヴィンセント」

彼は勢いよく振り向いた。その顔には驚きが走ったが、すぐに後ろめたさを隠すような落ち着きへと変わった。

マルコは気配を消し、部屋の隅へと後ずさりした。

「イザベラ。来ていたのか」ヴィンセントは立ち上がった。「ちょうどファミリーの用事を片付けていたところでね……」

「知っているわ」私は彼のデスクに歩み寄り、報告書を投げ置いた。「いい知らせを持ってきたの」

ヴィンセントの視線が報告書に泳ぐ。彼が一瞬、焦りをのぞかせたのを見逃さなかった。

「画廊の監査報告書が出たわ」私は努めて明るい声を出した。「最終的な利益は……」

「イザベラお嬢様!イザベラお嬢様!」

満面の笑みを浮かべた経理部長が、突然部屋に飛び込んできた。

「朗報です!素晴らしいニュースですよ!」彼は息を切らして言った。「昨夜の競売会社Zのオークションで、あのF国宮廷画が3億ドルで落札されました!画廊の利益は3倍です!税務調整を加味しても、完璧な数字です!」

ヴィンセントの顔から血の気が引いた。

彼の瞳にパニックが走るのを、私はじっと見つめていた。その瞬間、私の中に残っていた最後の希望の火種が、完全に消え去った。

彼にとって、私はその程度の存在だったのだ。いつでも都合よく動かせる、ただの駒。

「コホン」

私は咳払いをした。経理部長が私の方を向く。

「実は、さっきよく見直したんだけど」

私は報告書を手に取り、言葉を紡いだ。愕然とするヴィンセントの目の前で、それを真っ二つに引き裂く。

「どうやら、少し問題にぶち当たったみたいね」

経理部長はあんぐりと口を開けた。ヴィンセントの表情は、恐怖から信じられないほどの安堵へと変わった。

「下がっていいわ」私は経理部長に告げた。「それから、このことは誰にも絶対に口外しないように」

「は、はい、イザベラお嬢様」

カチャリとドアが閉まった。私はヴィンセントに向き直る。

彼は再び仮面を被っていた。冷酷で、尊大な顔。先ほどのパニックなど、私の見間違いだったかのように。

「イザベラ、正しい判断だ」彼は私に歩み寄り、私の手を取ろうとした。「物事を急ぐのは、我がファミリーのやり方ではないからね」

私は一歩下がり、彼の手を避けた。

私は10年も身を粉にして働いてきたのだ。それが「急ぐ」ことだと言うのか?

苦い思いと傷みが、私の中で渦巻いていた。

彼を試さなければならない。最後に一度だけ。

「ヴィンセント」私は張り詰めた声で言った。「3日後は母の命日よ。それまでに私たちが結婚すれば、母への――そして私たちの10年への――最高の供養になるわ。利益なら来年埋め合わせる。2倍にして稼いでみせるから」
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