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第4話

Author: ガサガサチョコレート
ヴィンセントの瞳に浮かぶ嫌悪感は、どんな凶器よりも私を深く傷つけた。

その時、ヴィンセントの腕の中で「震えて」いたエヴァが顔を上げ、涙をいっぱいに溜めた目で私を見た。

「イザベラ、お姉ちゃん、お願いだからやめて……」

彼女は力なく言い、その声はすでに震え、涙声になっていた。

「私が憎いのは分かるわ、でも事実を曲げることはできない……ヴィンセントの命を救ったのは私よ。今までずっと、洋服も、賞も、宝石も、何もかもお姉ちゃんに譲ってきた。でも、彼だけは駄目。ヴィンセントだけは絶対に譲らないわ」

そう言うと、彼女はヴィンセントの腕から離れて私に歩み寄り、懇願するかのように手を伸ばしてきた。

「これが私のせいだと言うなら、私を殴って!さあ!」

彼女が近づいたその瞬間、その瞳の奥の感情が変わった。氷のように冷たく、悪意に満ちた色へ。

ヴィンセントの死角で、彼女の指が私の腕に深く食い込んだ。

鋭い痛みが走った。思わず腕を振り払おうとしたが、彼女は突然自ら後ろにのけぞり、デスクの尖った角に体を強く打ち付けた。

「きゃあああっ――!」

血の凍るような悲鳴が書斎に響き渡った。

あまりにも一瞬の出来事で、私は反応することすらできなかった。

エヴァはすでに床にへたり込み、腕を抱えていた。その袖は見る間に血に染まっていく。

私は凍りついたように立ち尽くしていた。彼女に引かれた時のまま、手は宙に浮いていた。

ヴィンセントが目を見開いた。彼は猛然と飛び出し、私を力任せに突き飛ばした。

「イザベラ!」部屋を揺るがすほどの声で彼は怒鳴りつけた。「狂ったのか?!いったい何をしているんだ?!」

彼はエヴァをそっと抱き起こし、血を流す彼女の腕を見た瞬間、その目のパニックは殺意へと変わった。

彼は顔を上げ、私を睨みつけた。

「信じられないな。彼女に手を出すぐらい性根が腐っていたとは」

彼の腕の中で「震える」女、その瞳の奥に得意げな光を宿した女を見た。そして、彼の顔に浮かぶ隠そうともしない嫌悪と失望を見た。私は笑い出した。

涙が頬を伝い落ちるほど、腹の底から笑い転げた。

そうか、10年の愛も、10年の献身も、彼の目にはただ嫉妬に狂った「歪んだ」女の振る舞いとしか映っていなかったのだ。

「あなたは本当に、見る目のない哀れな愚か者ね、ヴィンセント・コルレオーネ」私は掠れた声で笑いながら言った。自分自身の声の冷静さが、恐ろしいほどだった。

ヴィンセントは怒りで声を震わせた。彼はエヴァをさらに強く抱きしめた。「エヴァに謝れ。今すぐにだ!」

謝れ?

私はこの豪奢な書斎を見回した。壁の絵画は私が彼のために手に入れたもの。デスクの書類は私が徹夜でまとめ上げたもの。

ここにあるすべてが、かつては私の愛の証だった。そして今は、私の愚かさの証拠でしかない。

私はゆっくりと暖炉に歩み寄り、引き裂かれた監査報告書の破片を拾い上げた。

「イザベラ、何をするつもりだ?」ヴィンセントは警戒して私を見た。

「何でもないわ」私は炎の揺らめきを見つめながら、その紙切れを一枚、また一枚と火の中に落としていった。「ただの……ゴミ掃除よ」

紙は火の中で丸まり、黒く焦げ、灰となって消えていった。

それは私の青春。私の10年の血と汗。

そして、彼への愛の最後の欠片だった。

最後の欠片が燃え尽きた時、私は振り返り、彼の信じられないという視線を受け止めた。

「ヴィンセント・コルレオーネ。今この瞬間をもって、私、イザベラ・ロッシは、あなたとの婚約を正式に破棄する」

決して大きな声ではなかったが、その言葉は部屋の隅々にまで響き渡った。

「その大事なドンナの肩書きは、あなたの腕の中にいる『勇敢』な命の恩人にとっておけばいいわ。二人の……末永い幸せを祈っているわ」

ヴィンセントは呆然としていた。私がそんなことを言うとは、夢にも思っていなかったのだろう。彼の中での私は、彼と結婚するためなら何でもするイカれた女で、何度追い払っても必ずすがりついてくる女だったのだ。

彼は私を見た。その顔の驚きは、やがて見下すような冷笑へと変わった。

「婚約破棄だと?」彼は最高の冗談でも聞いたかのように鼻で笑った。「イザベラ、そんな駆け引きはやめろ。子供じみているぞ」

彼はなだめるようにエヴァの背中をポンポンと叩き、王が恩赦を与えるかのような口調で私に言った。「今日はお前が感情的になっていることは分かっている。水に流してやろう。さあ、自分の部屋に戻れ。俺がいなければ、お前は無価値なんだ」

彼の声は低くなり、脅しを帯びた。「俺のファミリーがいなければ、ロッシの名など泥に等しい。部屋に戻れ。そして許しを乞う気になったら、エヴァに謝りに来い」

彼は、私が決して離れていかないと固く信じていた。

自分が私の世界のすべてだと思い込んでいた。

10年経った今、自分が何をしようとも、指を鳴らせば私が這いつくばって戻ってくると思っていたのだ。

私は振り返ることなく背を向け、ドアへと歩き出した。

背後から、ヴィンセントの侮蔑的な声が聞こえた。

「行こう、エヴァ。あいつの頭を冷やさせておけ」
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