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第295話

Penulis: 花朔
そう言いかけて、彼は彼女の白い耳先に浮かぶ淡い紅を見つめながら、わざとゆっくりと言葉を継いだ。

「......君が作ったケーキと料理を、ね」

紗夜は彼を一瞥する。

文翔は笑い、彼女の頬を軽くつまんでから手を放し、ロウソクを取り出してケーキに差した。

「今は十一時。十二時までまだ一時間ある。俺の誕生日は、まだ終わってない」

ライターで火をつけると、揺れる炎が彼の端正な輪郭を照らし出す。

溶けかけのケーキの前に立ち、両手を合わせ、目を閉じて静かに願いを口にした。

「さーちゃんと、お腹の中の子が無事でありますように。健康で、穏やかに、幸せに過ごせますように」

「願い事って、口に出したら叶わないんじゃないの」

紗夜が横目で見る。

文翔は少し不思議そうにする。

「そうなのか?」

「今まで誕生日に願い事したこと、ないの?」

紗夜は眉をひそめた。

「ない」

文翔はうなずく。

「誕生日を祝ったことがなかった。これが、俺の初めての誕生日だ」

紗夜は一瞬言葉を失い、彼を見つめた。

長沢家の後継者であり、長沢グループのトップが、一度も誕生日を祝われたことがないなんて。

疑わしげな視線に、文翔はただ微笑んだ。

「本当だよ。嘘じゃない」

そう言ったとき、彼の目の奥に、わずかな寂しさがよぎった。

確かに、彼自身の誕生日を祝われたことはなかった。

毎年雅恵が用意していたのは、「長沢文翔」という立場の誕生日であって、彼自身のものではない。

それもまた、京浜の名門や権力者を集めるための口実に過ぎず、主役である彼がいてもいなくても、さして問題ではなかった。

だから紗夜が理久の誕生日を祝う姿を見るたび、彼は密かに羨ましさを覚えていたのだ。

紗夜は視線を逸らし、少し硬い口調で言った。

「願い終わったなら、吹いて」

「わかった」

文翔は目元を緩め、ロウソクを吹き消す。

煙がゆらりと立ちのぼる中、彼は紗夜をじっと見つめ、静かに言った。

「俺は願い事をしないのは、運命を神様に委ねたくないからだ。さっきの願いも、自分の力で叶えるつもり」

紗夜が無事であること。

そして胸の奥に、もうひとつ密かな願いがあった――

彼女が、ずっと自分のそばにいてくれること。

この日の最後の一時間、二人はようやく並んで座り、静かに夕食を終えた。

文翔は紗夜のためにス
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