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第8話

作者: チンモク
東都を離れる前、最後に父のお墓に行った。

墓前に新しい会社の内定通知を供え、静かに語りかける。

「お父さん、結婚はしないことにしたよ。でも大丈夫。ちゃんと前を向いて生きていくから」

悠人は、墓地の外で長い間待っていた。

今度は、私を力ずくで引き留めるようなことはしなかった。

彼はただ、分厚い書類を付き添いで来ていた従姉に託した。

中には父と私が負担した金額を全て返済した証明書類と、会社の資産や私有不動産を整理したうえでの返済計画書が入っていた。

彼はようやく、行動で償うということを学んだらしい。

それでも、彼の手から直接それらを受け取る資格は、もう私にはなかった。

そこへ、百合も駆けつけてきた。

彼女は私の手を握り、涙ながらに感謝してくれた。「杉本家は酒井家に、一生かけても返せない借りがあるわ、感謝してもしきれない」

私は怒りはしなかった。ただ静かにこう伝えた。

「お父さんがあの時あなたを助けたのは、何か見返りが欲しかったからじゃないんです。

私が悠人の元を去ったのも、誰かに罪滅ぼしをさせたかったわけではありません」

彼女は涙を流しながら頷いた。

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  • 父の最期に、あなたはいなかった   第8話

    東都を離れる前、最後に父のお墓に行った。墓前に新しい会社の内定通知を供え、静かに語りかける。「お父さん、結婚はしないことにしたよ。でも大丈夫。ちゃんと前を向いて生きていくから」悠人は、墓地の外で長い間待っていた。今度は、私を力ずくで引き留めるようなことはしなかった。彼はただ、分厚い書類を付き添いで来ていた従姉に託した。中には父と私が負担した金額を全て返済した証明書類と、会社の資産や私有不動産を整理したうえでの返済計画書が入っていた。彼はようやく、行動で償うということを学んだらしい。それでも、彼の手から直接それらを受け取る資格は、もう私にはなかった。そこへ、百合も駆けつけてきた。彼女は私の手を握り、涙ながらに感謝してくれた。「杉本家は酒井家に、一生かけても返せない借りがあるわ、感謝してもしきれない」私は怒りはしなかった。ただ静かにこう伝えた。「お父さんがあの時あなたを助けたのは、何か見返りが欲しかったからじゃないんです。私が悠人の元を去ったのも、誰かに罪滅ぼしをさせたかったわけではありません」彼女は涙を流しながら頷いた。離れた場所に立っていた悠人は、その言葉を全て聞いていた。彼は俯いたまま肩を震わせ、涙を流した。知紗の末路は、思ったよりも無残なものだった。かつて悠人を利用して自身の立場を築き上げようとしたことが、新しい出資者たちによって次々と明るみに出たのだ。仕事は次々と取り消され、彼女を持ち上げていた連中も、まるで避けるように姿を消した。彼女が最後に悠人のもとを訪れ、泣きついた時、彼は冷たく言い放った。「俺は、本当に守るべきだった人を失ってしまったんだ」それから悠人は、私がかつて住んでいたマンションの前まで何度も通っていたという。けれどそこには【入居者募集】と書かれた看板と、見知らぬ住人しかいなかった。彼が私宛に手紙を大量に書いていたと聞いた。父のこと、結婚できなかったこと、100キロ走った高速のこと、そして私からの助けを求める声に応えなかった夜のこと。後悔ばかりが綴られていた。けれど、その手紙は1通も送っていなかった。彼も、今の私には、その手紙も、彼の償いも必要ないということをわかっていたはずだ。東都を発った日は、誰にも告げなかった。新幹線がホームを

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