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第29話

Author: 雲間探
彼らが到着した時、会場にはほとんどの招待客が揃っていた。

玲奈は美貌と気品があり、会場に姿を現すなり、多くの客の視線を集めた。

主催者は礼二と親しく、彼らを見かけると笑顔で近づいてきた。

挨拶をしようとした時、会場の入り口に新たな客が到着した。

来客を見た主催者は一瞬固まり、目を疑った。

他の客たちも同様に、来客を見て驚きを隠せなかった。

背を向けていた玲奈と礼二は何が起きたのかわからず、周りの客たちが突然驚きと喜びの表情を見せるのを不思議に思い、振り返ろうとした時、主催者は申し訳なさそうな目を向けると、彼らを通り過ぎて入り口へ向かった。

「藤田社長、島村様、村田様……」

玲奈はその声を聞き、胸が締め付けられ、ある予感が頭をよぎった。

振り返ると、笑顔が一瞬凍りついた。

来客は予想通り智昭、辰也、清司の三人だった。

だが、彼らだけでなく、優里も一緒だった。

しかも彼女は昨日、礼服店で見かけた6億円もする薄紫のドレスを着ていた。

優里は背が高く、スタイルも良く、オーラも強い。その華やかで優雅なドレスは、彼女が着ることで色気と品格を放ち、近寄り難い雰囲気を醸し出していた。

「まさか智昭、辰也、清司たちとは!めったにパーティーには来ないのに、今日はどうして揃って?」

「本当ね、一体どういうこと?」

「彼らが連れてきた美女は誰?智昭の女?あの色っぽくて美しくて高嶺の花みたいな雰囲気、本当に凄いわ。さすが大物、女を見る目が違う!あんな女性が手に入るなら、寿命が10年縮んでも惜しくないわ!」

「でも私は先程のベージュのドレスの美女の方が好みだな。清楚で静かな佇まいが上品で美しい。あの方が珍しい気がする。でも、もう伴侶がいるみたいだけど」

その時、玲奈は誰かが驚きの声を上げるのを聞いた。

「うわ、このドレス!昨日見た時は感動したよ。店主が大物が彼女のために注文したって言ってたけど、まさか智昭とは!6億円だぞ、マジで!」

「なに?6億円?!」

それを聞いて、玲奈はゆっくりと目を伏せた。

先程ドレスを優里が着ているのを見た時、智昭が優里のために用意したものかもしれないと思っていた。

確かに大森家は今は順調だが、一回のパーティーのために数億円もドレスに使うのは、今の大森家の財力では贅沢すぎる。

でも智昭にとって6億円など大したことではない
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Comments (1)
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岸本史子
ドレスに6億って!1億でもバカみたいな値段だと思う。
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