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第3話

Auteur: 神崎琉美
真司と桜子は熱いキスを交わしながら階段を上り、家のドアの前でさらに盛り上がろうとした。だがドアを開けた瞬間、リビングに無表情で立った平弥の姿を見てその動きが止まった。

真司は気まずそうに桜子から離れた。桜子が軽く胸を叩くと、彼はその拳を優しく手で包み込んだ。

「お前、ちゃんと隠せよ。母さんが帰ってきたらまた怒られるぞ」

堂々とした二人を見て、平弥は冷ややかに言い放った。

真司はそれがまた金の話だと思い込み、スマホを取り出して平弥に振込を始めた。

「おばあちゃんが実家に帰ってる間、お前もゆっくり休めよ。金のことは心配するな」

振込が完了すると、平弥は「OK」と軽く手を挙げて部屋に向かって歩き出した。その背中を見送りながら、桜子は不満げに小声でつぶやいた。「本当に甘やかしすぎよ、息子のこと」

その言葉に反応して平弥はその場で立ち止まり、振り返って静かに言った。「石川先生、少しは口を慎んだ方がいいですよ」

「だって、私がいなかったら、あなたも父親と出会えなかったでしょう?」

その言葉を聞いて、私は彼にビンタをしようとしたが、手を振り上げた瞬間に力が抜けてしまった。「それが問題だって分かってるんだよな?」

平弥は静かに尋ねた。「母さん、どこ行った?」

真司は桜子をなだめながら振り返り、「ん?なんか言ったか?」とぼんやり答えた。

平弥は「バタン」と勢いよく部屋のドアを閉め、「なんでもない」と低くつぶやいた。

「母さんが旅行に行ってる間に、父さんはさっそく女を家に連れ込んだよ。どう思う?」

平弥は「美香ちゃん」という名前の女にメッセージを送った。すぐに返信が届いた。「当然じゃない?だって、お母さん、私のこと嫌いだもの」

「だよね。あの人、俺の生活に干渉してばっかりだったから、これで少しは静かになるよ」

そうメッセージを打ったものの、平弥は少し迷い送信する前に削除して、改めてこう送った。「大学受験が終われば、もうあの人も俺たちに干渉してこないよ」

受験結果発表の日、真司は息子のために祝賀会を開いた。宴会には多くの親戚や学校の先生が招待されていた。

桜子もその場にいて、司会者が「本日は、高松平弥さんの合格祝いにお集まりいただき、誠にありがとうございます。高松平弥さんのこのたびの合格、誠におめでとうございます」と話すのに合わせ、平弥に優しい視線を送っていた。

私はその視線を遮るように立ち、平弥が不快そうに顔をしかめたのを見逃さなかった。

会場では姑が楽しげに話していたが、真司はバックヤードで苛立ちながら私に電話をかけ続けていた。

電話は繋がらず、真司は次々と怒りのメッセージを送りつけてきた。

「今どこにいるんだ?」

「この2ヶ月、どこで遊んでた?息子の祝賀会に来ないとかありえないだろ」

「本当にカードを止めるぞ」

「お前の持ってるカードは俺の給料用だ。それがなきゃ遊べないだろ?」

「返信しろよ、ビビってんのか?」

「夫も子供も捨てる女なんて、ふざけんなよ」

「お前、母親の資格ないだろ」

真司は感情をぶつけ続けながらも、次第に焦りを募らせていった。

彼は私がもうこの世にいないことを知らず、返事を待ち続けていたのだ。

姑に呼ばれ、真司が会場に戻ると、親戚たちが平弥に聞いた。「今日はおめでたい日なのに、どうしてお母さん来てないの?」

平弥は寂しげに目を伏せ、「受験が終わったから、母さんも自由に旅行したいんだよ。きっと今は旅の途中さ」と答えた。

姑は冷ややかに鼻で笑った。「あの女、2ヶ月も家に帰らず、遊び歩いてばっかりなんだから」

真司は眉をひそめ、「カードを止めて見せるぞ。もう好き勝手にはさせないから!」

親戚たちは不不安そうにささやいた。「2ヶ月も連絡が取れないなら、何かあったんじゃないかって思わないの?」

そのとき、真司の電話が鳴った。彼は画面も見ず、イライラしながら電話に出た。「やっと電話してきたのか?死んでたんじゃないかと思ったぞ!」
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