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第2話

Author: 氷砂糖
宏介は驚き、顔を少し赤くして、気まずそうに口を開いた。

「優香、気が早すぎるだろ。もう子供のことなんて。ちょうど言おうと思ってたんだ。結婚式は1年、延期しないか?明日香のことで、ちょっと問題が起きてな。心配だから1年そばにいてやろうと思って」

明日香は、まるで私をわざと刺激したいかのように、さらに説明を加えた。

「優香さん、ごめんなさい。私がお二人と同じタイミングで結婚式を挙げたいなんて言うから……私も早く彼氏を見つけるから、怒らないでよ」

なんて馬鹿げた言い訳だろう。

しかし、宏介は隣で慌てて明日香を慰めるなんかし始める。

こそこそと二人で何年も一緒にいたのにまだ足りないのか。今度は堂々と1年だなんて。

あまりに可笑しくて、私はどうでもいいという風に口を開いた。

「もう私には関係ない。私はもう結婚……」

しかし、宏介の友達がいきなり野次を飛ばしてきたせいで、私の言葉は誰の耳にも届かなかった。

「たいしたことじゃないって、優香さん。そんなに怒るなよ。久しぶりに会ったんだからさ、チュウの一つでもすれば全て気にならなくなるって」

私は呆れて、早くこの場を立ち去りたかった。

なのに、宏介に腕を掴まれ、強く抱きしめられた。

私が抵抗しているのにもかかわらず、彼は勝手な幸福感に浸っているようだ。

周りの面白がって煽る声に乗せられて、無理やりキスをしようとしてきた。

腕が引っ張られてすごく痛かった。やっとの思いで宏介を振りほどくと、思い切りその頬を叩いて、きっぱりと言い放った。

「私はもう結婚してるの。あなたたちも、少しは慎んだらどう?」

その場が、しんと静まり返った。

宏介は一瞬気まずそうな顔をしたが、すぐにその表情は怒りに変わった。

「優香、そんな冗談はよせ。俺のプロポーズだって同意しただろ。結婚に困ってるわけでもあるまいし、なんでそんな嘘をつくんだ」

宏介の口から出てきた最低な言葉を聞いて、私は思わず乾いた笑いを漏らした。

結婚式の1週間前、明日香が秘密機関で働く人が好きだという、たった一言だけで、宏介は私に一言も相談せずに、機関の適性審査を受けに行った。

私は宏介のキャリアのことを考えて、ぐっとこらえた。

でも、たった彼の写真一枚を家で眺めるだけで、3年間も耐えろっていうの?

ただ明日香のわがままのためだけに、3年間まるごと、たったの一日だって私のために面会のチャンスをくれなかった。

隊員たちはみんな、宏介の妻は明日香だと思っていたんじゃないかしら。

そのおかげで、私はまるで既婚者の浮気相手にでもなったかのように、冷たい目で見られることも耐えなくちゃいけなかった。

「もうここに来るのやめてください。松本隊長は婚約者と喧嘩中なんですよ。隊長には家庭があるんだから、あなたが毎日探しに来て何になります?」

ある時から、私が宏介について何か聞こうとするたび、周りの人たちに無視されるようになった。

私たちが言い争っている間に、明日香の体勢が突然崩れて、そばにあった盆栽にぶつかった。

ずっしりと置かれてあった植木鉢が、自分たちの方へと倒れてきた。

避けきれず、私はとっさに宏介の腕を掴んだ。しかし、彼は私の手を荒々しく振り払い、隣にいた明日香をその腕の中に引き寄せた。

植木鉢の破片が足にぶつかり、あっという間に血が垂れてきた。

宏介は慌てて謝った。

「優香、俺は……」

すごく痛かったけれど、私は彼を無視して、医者を探そうとした。

近くにいた看護師も、すぐに駆け寄って来てくれた。

明日香を守ることはもう、宏介の無意識の行動になっていたのだ。

胸がすっと冷えた。幸い、もう宏介を愛していないのだ。

彼がほかの女を庇おうかなんて、どうでもよかった。

明日香は心配の様子をしていたけれど、その瞳の奥には一瞬、得意げな色がよぎった。

「宏介さんったら!私なら、ちょっと避けるくらいのことなのに。優香さんを先に守ってあげなきゃダメじゃない?」

私は明日香のわざとらしい振る舞いを遮って、冷静に言った。

「治療費と、これから仕事を休む分のお金と、慰謝料、全部払ってくれる?」

明日香は目を大きくして、悔しそうに唇を噛んだ。

宏介は私の足の傷には目もくれず、明日香の代わりに弁解することしか頭にない様子で、私を責めた。

「明日香だって、すごく気にしてるに違いないじゃないか。お前、そんな冷たいことを言うのはダメだろ」

私は肩をすくめた。ダメなんてことはないでしょ。だって、私にはもう関係ない人たちなんだから。

明日香は私が言った請求を考えながら、少し気まずそうな顔をした。

「家にお金を取りに帰ればいいんでしょ。ずいぶんとお高い足なのね、ちょっとぶつかっただけでお金を請求するなんて」

宏介は、慌てて明日香を追いかけて行った。

彼は一度振り返り、まだうまく歩けない私の姿を確認した。少しためらったようだけれど、やっぱりすぐ明日香のあとを追った。
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