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第10話

作者: 桃入り
病院にいる蓮は、スマホを見つめたまま呆然としていた。

真紀が「別れましょう」と言ったのか?

二十数年一緒にいて、どんなに激しい喧嘩をしても、その言葉だけは一度も口にしなかったのに。

蓮は再び真紀に電話をかけたが、もう繋がらなかった。

手術室の前で倒れた瞬間、真紀が振り返りもせずに走り去った光景が蘇る。

さらに、自分が瀕死の状態だった時、祖父が電話をかけても彼女は来なかった。

あんなにも冷酷な言葉を吐き捨てて。

蓮は怒りでどうにかなりそうだった。

この七年間、半年に一度、恵美がこっそり帰国して血液をストックしてくれていなければ、今回こそ本当に死んでいただろう。

蓮は幼い頃から自分の体の問題を知っていた。

祖父からは「お前と同じ血液型の成人ドナーを数人確保している。一回の輸血につき一億円払っている」と聞かされていた。

若い頃は血気盛んで、真紀を守るためによく喧嘩をし、輸血が必要になることが多かった。

社会に出て、手段を選ばず問題を解決するようになってからは怪我をしたことはなかったが、まさか、そのすべての輸血が、金で雇われた他人ではなく、恵美の華奢な体から提供されていたものだったとは。

彼女は二十年間、自分の命を救い、自分を愛し続けてくれていたのだ。

ずっと、それは真紀だと思っていた。

輸血をするたび、隣のベッドにはいつも真紀が寝ていたからだ。

あの頃、彼女はよく言っていた。

「蓮、私もフラフラするの。美味しいものたくさん食べさせてね」

そんな彼女を、自分は世界一甘やかしたいと思っていた。

だが半年前、祖父に強要されて恵美と一夜を共にした際、自傷して血を流した時に初めて知ったのだ。ずっと自分に血をくれていたのは恵美であり、真紀ではなかったと。

隣の病室から看護師が走ってきた。

「西園寺様、奥様が目を覚まされました」

「奥様」という言葉を聞いて、蓮は反射的に思った。

「真紀が……」

だがすぐに思い直した。

今の妻は真紀ではない、恵美だ。

蓮はすぐに隣室へ向かった。

恵美は顔を涙で濡らしていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、蓮さん。離婚しましょう。私、もう子供も産めないし、蓮さんと真紀さんの間を裂くようなことになってしまって……私のせいです。もうおそばにはいられません」

蓮は恵美を抱きしめた。

胸が痛みと自責の念で
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