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第4話

Auteur: 袋々
私は彼をじっと見つめ、しばらくしてから首を横に振った。

「いいえ」

彼はその瞬間、ほっとしたように表情を緩めた。

「時間がないんだ。ブブをもう少しでも見つけられなかったら、一生戻ってこないかもしれない。それに、命に関わる問題だ。お前の誕生日なんて毎年あるんだから、別の日に補えばいい」

彼の目を正面から見つめ、無表情で口を開いた。

「もういいわ。深津、私たち、離婚しましょう」

その言葉が出た瞬間、彼の眉間が深く寄り、厳しい声で言い返してきた。

「お前、もう少し大人になれないのか?」

これまで彼が私に最も多く言った言葉だ。

では、「大人になる」というのは一体どういうことなのか?

「どうしてそんなに感情的になるんだ?心ちゃんは悪気がないんだよ。彼女はお前と僕を争うつもりなんかない。こんな大事なときに、どうして離婚なんて言い出すんだ?たかが誕生日じゃないか。いつだって補えるだろう?」

彼は正々堂々と言い切った。その無関心そうな表情があまりにも当然のようだった。

そんな彼を見て、私は急に迷い、そして急に安心した。

その瞬間、「手遅れになる前にやめる」という言葉の意味を初めて実感した。

彼は私を叱りつけると、待ちきれない様子で車を出した。

私は空っぽになった座席を見つめ、一人でステーキを食べ終え、口元を拭いてからタクシーで家に帰った。

深津はその夜、家に帰らなかった。

けれど、私は彼に電話で問い詰めることもなく、何をしているのかを聞くこともなかった。

まさか翌日、彼のほうから電話がかかってくるとは思わなかった。

彼は言った。

「心がお前を食事に招待したいそうだ。どうだ?」

少し考えた後、私はそれを快く承諾した。

別れの食事会だと思えばいい。誰と食べるかは重要じゃない。

神崎と顔を合わせた瞬間、彼女は申し訳なさそうに私にこう言った。

「青さん、本当にすみません。もう怒らないでくださいね。悠馬くんはただ私を喜ばせたくて、交際宣言ごっこをしていただけなんです。

それに、昨日はわざと悠馬くんを呼び出したわけじゃないんです。あの猫は私と彼の共同の子供みたいなものでして。子供がいなくなったら、パパとして来ないわけにはいかないじゃないですかって。本当にごめんなさい」

その言葉は、彼女が深津にとって私よりも重要だと言っているのと同じだった。

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