LOGIN遠くに嫁いで十年目、やっと私たち夫婦に待望の子供が授かった。 妊娠六ヶ月を迎えたある日、義母が子供は夫のものではないと疑い始めた。 その疑いを晴らすため、私は子供の親子鑑定を受けることを決意した。 結果を受け取りに行くはずだったその日、義母は私を寝室に追い詰めていた。 手には私の不貞の証拠だと言うものを握りしめた。 義母は皆の前で私を罵倒し、刃物で私の顔を切り刻み、暴力で流産に追い込んだ。 「恥知らずな女! 不倫だけじゃ飽き足らず、他人の子を息子に押し付けようとするなんて。 今日こそ親代わりにお前をしつけてやる」 後になって、義母は全ての真実を知ることになった。 号泣しながら「孫を返して」と取り乱した。
View More私の弟は暴力など振るわない。私たちは義母と違って、私たちは義母と違って、法律を重んじる人間だから。家族の支えを得て、私は警察署へ赴き、診断書と防犯カメラの映像を提出した。すぐに義母とそのグループのおばさんたちは警察に呼び出された。暴行による流産の共犯として実刑の可能性を告げられ、彼女たちの顔から血の気が引いた。彼女たちは義母を責め立てた。「全部あんたのせいじゃない。責任は節子さんが取るって言ってたのに、これからどうするつもりなの?」「そうよ、節子さん。嫁には身寄りがないから黙って耐えるしかないって、あんたが言ってたでしょう。これはどういうことだ?」「こんな年で刑務所なんて、世間体が......」義母とそのグループは団地内での評判が最悪だった。日頃から弱い立場の人々を威圧していたのは周知の事実だった。私が示談を断固として拒否すると、彼女たちは慌てふためいて謝罪を始めた。年長者への配慮を求めたり、直接手を下していないと言い訳したり。。「年長者なら、なおさらでしょう。義母が私の顔を傷つけ、子供の命を奪った時、どうして止めなかったんですか」問い詰めると、彼女たちは顔を真っ赤にして黙り込んだ。私は冷笑を浮かべながら言った。「誰も無実じゃありません。正義のためじゃなく、ただの見世物として加担したんです。あんたたちこそが社会の害悪。刑務所でじっくり反省してください」今度は彼女たちの子供たちまでが訪ねてきた。「お隣同士なんですから、ここまでする必要はないでしょう」「うちの母は関係ないはずです。責めるなら義母と義妹だけにしてください」「みんなが不幸になる前に、示談にしませんか。慰謝料はいくらでも」私の答えは終始一貫していた。許さない。示談もしない。お金など要らない。数日姿を消していた夫が現れ、静かに言った。「美咲、母さんを刑務所に入れたいのなら、それでもいい。でもこれ以上近所との関係を壊さないでくれないか。これからもここで暮らしていくんだから」私は冷ややかに笑った。「誰があんたたちと暮らすって言ったの?離婚したら、ここに住む必要はないわ」夫の顔から血の気が引いた。「まだ離婚にこだわるの?母のことは目をつぶるのに、どうしてですか?」「あんたに完全に
家に戻ると、義母はいなかった。由美の見舞いに行っているのだろう。由美の怪我は相当重いと聞いたが、自業自得としか言えない。あの男のことは知っている。背が低くて不細工な男で、由美が何を見たのか、私には理解できない。迷わず寝室へ向かった。赤ちゃんの様子を見守るために設置していた防犯カメラが、今は大切な証拠になる。メモリーカードを取り出し、荷物から診断書を探し出して玄関へ向かった時、文彦がようやく事態の重大さを察したのか、私の前に立ちはだかった。「どこへ行くんだ?」「警察署よ」その瞬間、義母が玄関に現れた。警察という言葉に、目を見開いて声を荒げた。「本当に通報する気なの?」義母は目を吊り上げて言った。「美咲、正気かしら?ちょっと手を上げただけで警察沙汰にするなんて、そんな嫁、どこにいるっていうの」私は冷ややかに笑った。「こんな義母もどこにもいないでしょう。暴力を振るった代償は、必ず払ってもらいます」義母は激高し、また手を振り上げようとした。私は咄嗟に彼女の手首を掴み、逆に平手打ちを食らわせた。義母は頬を押さえたまま一瞬凍りつき、やがて夫に泣きすがった。「これが文彦の選んだ嫁なのよ」「もういいから、母さん」夫は私を見つめながら言った。「美咲、警察沙汰にしないって約束したじゃないか。丸く収めよう」「その言葉、どうしてお母さんには言わないの」私は足早に玄関を出た。夫が再び私の前に立ちはだかった。暗い表情で言う。「辛くしないでくれ。妻である君も、母も、どちらも大切なんだ。どちらに味方しても不公平になる」「よくそんなことが言えるわね。あんたはもう母親の味方をしているじゃない。警察には必ず通報する」私が彼を押しのけようとした。「美咲!」文彦が大声で叫んだ。「警察に通報したら、もう一緒にやっていけない」「なら離婚すればいい」私の決意の固さを見て、義母はその場に崩れ落ち、泣き始めた。「何て因果な、こんな厄介者に巡り会うなんて」私には彼女の芝居を見ている暇などなかった。ドアに手をかけた瞬間、義母が文彦に向かって慌てて叫んだ。「行かせちゃダメよ!」夫は駆け寄って私の手を掴んだ。「離婚して警察沙汰にするなんて、そんなことさせない。
「警察?」その言葉に夫の表情が一変した。「警察沙汰にする必要はないだろう。母さんだって悪意があったわけじゃないんだから」「悪意がない?私の子供を奪っておいて?」私は涙声で詰め寄った。「由美ちゃんが殴られた時は決して許さないって言ったのに、私が殴られた時は許せっていうの?」「それは違う。母さんなんだから」その一言で私の心は氷のように冷たくなった。今まで深く愛されていると信じていたのに、結局この程度の愛情だったのか。「あなたの母親であって、私の母親じゃないでしょう」言葉の重みに気づいた夫は、慌てて謝罪し、自分の頬を打った。「美咲、全て僕が遅く帰ってきたせいだ。子供を失って辛いのは分かる。でも今この状況は誰も望んでいないんだ。どうしても許せないなら、僕を責めてくれ」私の手を強く握りながら、切々と訴えた。「美咲も母さんも、僕にとって大切な存在なんだ。これ以上こだわらずに、水に流そう」目の前の夫が突然よそよそしく感じられた。その言葉の一つ一つが、全てを軽く済ませようとしているかのように。「この出来事に何の痛みも感じないの?さっき赤ちゃんを見たのよ。このまま生まれていれば、ママって呼んでくれたはずだったのに」夫の目が潤んだ。それでも「怒らないでくれ」と言い続けた。「まずは体を休めて。母さんには必ず謝らせるから」私は顔を背けた。麻酔の効果か、すぐに深い眠りに落ちていった。どれほど眠っていたのか、目を覚ますと辺りは既に闇に包まれていた。病室の外から義母の声が漏れてくる。「体の具合はどう?早く良くなって、また孫を授かれるように」夫が声を荒らげた。「こんな目に遭わせておいて、まだそんなこと言うのか」義母の声がか細くなる。「私だって自分が間違っていたと分かってるわ。わざとじゃなかったの。帰ってから鈴木おばさんとも取っ組み合いの喧嘩したのよ」義母は嘘を言っていなかった。団地の住民グループには確かに二人の喧嘩動画が上がっていた。でも、その喧嘩は私のためじゃない。由美のことで始まったものだった。髪を掴み合い、罵詈雑言を投げかける二人の姿は見ものだった。ただ、鈴木おばさん相手には、私を痛めつけた時のような凶暴さは微塵もなかった。私は冷笑を浮かべて携帯を置いた。夫
部屋の中の四人は言葉を失い、私は無意識にお腹に手を当てた。心拍がない?だからずっと動かなかったのね。夫が震える声で医師に問いかけた。「先生、本当なんですか?私たちの子供が......」「はい」その一言で夫はふらつき、義母を睨みつけた。「これで満足か」義母も血の気が引いた顔で医師に尋ねた。「申し訳ありませんが、一つだけ.....性別は......分かりますでしょうか?」医師は義母を冷ややかな目で見た。子供を失ったというのに、まだ性別を気にするとは。もう言って構わないだろう。「男児です。後ほど処置の同意書をお持ちします」「男の子......」その言葉を聞いた途端、義母の足から力が抜け、後ずさりながら声を震わせた。「まさか......私の孫が......男の子だったなんて!」義母は胸を押さえながらその場にへたり込んだ。「神様、どうして......どうしてもっと早く教えてくださらなかったの」義母は常々男孫を望んでいた。私が夫と結婚した時から、毎日のように「男の子を産んでくれたら」と言い続けていた。毎年神社に参り、男孫を祈願していた。それは義母の執念となっていた。ただ、一昨年の夫の健康診断以降、その話題は出なくなっていた。義母は床に座り込み、まるで正気を失ったように自分の体を叩き始めた。床を叩きながら、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていた。「私の可愛い孫よ......おばあちゃんが間違っていた......なんて取り返しのつかないことを......」義母は泣き崩れ、今にも気を失いそうだった。夫も深い悲しみを浮かべながら、泣き叫ぶ義母を冷たい目で見つめていた。しばらくして、夫は義母の前にしゃがみ込んだ。「全部母さんのせいだ」夫は目を真っ赤にして、憎しみの目で義母を見つめながら言った。「母さんが......私の息子を、自分の孫を殺したんだ」義母は声を上げて泣き崩れた。二人は激しく言い争い、私の目覚めにも気付かないでいた。私は目を閉じた。義母の嗚咽が天井まで響き渡る。若い看護師が同意書を持ってきて、夫にサインを求めた。私は手術室へと運ばれていった。麻酔医が麻酔薬を準備する時、私は目を開けて願い出た。「意識のある状態でお願いできませんか」