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甘々な謎の美女、沙耶。桃色の妖しい光

last update Dernière mise à jour: 2025-12-27 21:33:53

翌日、

予定通り俺は横浜駅の相鉄ジョイナス前の広場にて路上ライブを敢行した。

昨晩作った新曲を引っ提げてエレキギターを担ぐ。

だが、

いつもの通り誰も俺の歌に興味を持ち、

足を止めて聴いてくれる人はいない。

諦めて帰ろうと思った時に横から視線を感じた。

「藤沢亮さんですよね」

パステルピンクの綿あめみたいな、

柔らかく甘々な声が聞こえる。

二十代前半くらいか茶髪の前髪ありの三つ編みおさげにした女性が俺を見ていた。

マイクスタンドを挟んで目の前に立つ彼女は、

ライブ前に配ったフライヤーを両手で持っていた。

決して大きすぎないつぶらな瞳、

綺麗な並行二重まぶたが魅力的だ。

緊張から鼓動が速くなり、

苦しい。

「はっ、

はい、

そ、

そうですけどっ。

何かありましたかね」

彼女は目を三日月型にし、

上の歯だけ見せるようにニッと笑む。

桃色の唇の間からバロックパールにも見える綺麗な歯が覗く。

「歌、

上手ですね。

つい聞き入っちゃいました」

動揺から上手く言葉が出ない。

聞こえるか聞こえないかギリギリの掠れ声で感謝を述べ、

深くお辞儀した。

褒められるのは嬉しいが百パーセント本気にはできない。

常に皮肉の可能性も考える。

歌手として実力がないと分かっており、

額面通りに受け入れない。

調子に乗っていると思われてはいけないので喜んで見せる行動も慎む。

褒められて調子に乗ったと見られたり、

他の曲を演奏してがっかりされたりしたくないので、

今日はこのまま片づけて去ろう。

プッツリとアンプの電源を切った。

「他の歌も聞かせてくださいよ」

適当におだてて下手な曲を聴いて馬鹿にしたいだけの可能性もある。

通りすがりの人間に俺の無様さを晒す目的も考えられる。

そうでなければ、

こんな可愛い子が俺を褒めるわけない。

歌手として成功できていない事実を完璧に自覚しているため、

万が一罠だった場合を考慮する。

「どうしてですか、

俺は全然、

人から必要、

とされてなくて結果を出していない、

売れていない歌手ですよっ」

彼女のカスタードクリームを連想させる滑らかな頬がオレンジに色づく。

「そんなことないですよ、

もっと自信持ってくださいよ」

自信なんて高価なものは身の丈に合っていない。

路上ライブをしても誰からも相手にされず、

唯織からも呆れられている俺が自信なんて身に着けて良いわけがない。

彼女は小ぶりの唇を結び、

挙動不審な俺をまっすぐ見つめる。

こんな俺を受け入れてくれるのか。

「今度ライブする時呼んでくださいよ。

ラインのアカウント教えるから絶対に連絡して」

穿いていたワイドジーンズのポケットからスマホを取り出した。

喉から歓喜と焦燥の声が勢い良く出そうになった。

最高に可愛い子がスマホを既に準備している。

俺なんかが待たせて良いわけない。

ギターケースのポケットか、

リュックのポケットか、

着ているレザージャケットのポケットか。

どこにスマホをしまったか。

ギターケースのポケットに入っていた。

スマホを見つけるだけでも慌てている様は哀れに見えただろう。

慌てすぎと笑いながら彼女はQRコードを差し出した。

佐々木沙耶。

アイコンの画像は背後から撮影した着物姿のおそらく沙耶本人だ。

「佐々木沙耶さんですね、スタンプ送りましたっ」

「ありがとうございます。記念に写真撮りましょうよ」

帰り道、

電車に乗っていると沙耶から写真が送られた。

ムフと、

思わず鼻から空気が漏れた。

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  • 艶撫亮~embryo~   第二章 藤沢亮の登場。今は呑気にしているも……。

       ♠ 亮帰宅すると部屋の中は真っ暗で唯織は帰っていなかった。確か今日は朝からいなかったので昼勤のはずだ。既に二十一時半、まだ帰って来ていないのは珍しかった。大体二十一時までには帰っており、居間で筋トレをする習慣がある。彼女は同じ高校の同級生だ。学生の頃にシュートボクシングの選手として日々汗を流しており、高校を卒業してから七年間恐らく筋トレは欠かしていないほどストイックだ。高一の時の夏に協会が主催する試合で負けてから、負けず嫌いに拍車がかかったと言っていた。俺は特に体に気を使っていないので、夕食用に買っておいた一食五百円の焼きそばを作る。パソコンを起動させて途中になっていた曲作りの打ち込みを再開する。明日は横浜駅前の広場で歌手藤沢亮として路上ライブを行う。俺は売れていないアーティストだ。このまま売れないで死ぬわけにはいかないと常に焦りを抱いている。時間があれば音楽のことを考え、毎日曲作りをするように意識している。焼きそばを箸で突きながら必死にキーボードを叩いていると、背後から施錠を解く音が聞こえた。ようやく唯織が帰宅したようだ。おかえりと挨拶しても、うんと一言淡泊な言葉が虚しく響くだけだ。唯織が冷たいのはいつものことなので特に不満を抱きはしない。だが、悲しみがゼロだと言えば嘘になる。売れていない歌手である俺を一人前の人間だと認めていないに違いない。唯織は毎日看護師としてプライドを持って仕事に向かっている。売れずに何も価値を生み出せない俺に負の感情を抱いてもおかしいとは思わない。悲しい現実ではあるが、結果を出していない俺が悪いので文句を言う筋合いなどない。現状を変えるためには歌手として売れるしかないので、毎日必死で曲を作って路上ライブを敢行し実践を積むしかない。「亮さ。『生きとし生けるもの合同会社』って聞いたことないかな」振り返ると唯織は椅子に座って腕を組んでこちらを見ていた。顎が細くて唇は薄く奥二重の目が冷酷そうに見えるが、仕事に対して誰よりも情熱がある人だ。「聞いたことのない会社名だよ。それがどうかしたの」「この前さ、うちに赤ん坊の死体置かれたじゃん」一週間ほど前、うちに赤ん坊の死体を放棄される事件が起きた。その夜スタジオに籠っていたので直接目にはしていないが唯織から

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