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9 求めているのは紗良

Author: 缶小豆
last update publish date: 2026-10-13 19:30:00

澪奈が呼び鈴を鳴らすとすぐに扉には応答があった。

だが、扉を開けた瞬間、澪奈が外で感じた不愉快な声は、この部屋の中であったことに気づく。

それだけではない。

「あら、かわいい子猫ちゃんがやっと来たわよ」

目の前には、60代ぐらいの豊満というよりは肥満に近い女性が、胸元がはだけた状態で出迎える。

「紗良、さらぁ、愛してる。いかないでくれ」

その聞き慣れた声に澪奈は目を見開く。

「あらあら、いかないわ。あなたの紗良よ」

「凌平……まさか!」

部屋に聞こえる声に、澪奈は目の奥にすさまじい殺気を宿しながら、出迎えた女性を押しのけて部屋に飛び込む。

だがそこには、複数のでっぷり太った女性の胸にまさに飛びつき、見ているだけで吐き気を催すほど無様に腰を振り続ける凌平がいた。

しかも憎き、紗良の名前を叫び続けている。

「ああ、大人の遊びを見せてあげる子がきたわよ。本当は甘えたいんだよねえ、凌ちゃん」

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  • 貴方が愛したわたしはもういない   9 求めているのは紗良

    澪奈が呼び鈴を鳴らすとすぐに扉には応答があった。だが、扉を開けた瞬間、澪奈が外で感じた不愉快な声は、この部屋の中であったことに気づく。それだけではない。「あら、かわいい子猫ちゃんがやっと来たわよ」目の前には、60代ぐらいの豊満というよりは肥満に近い女性が、胸元がはだけた状態で出迎える。「紗良、さらぁ、愛してる。いかないでくれ」その聞き慣れた声に澪奈は目を見開く。「あらあら、いかないわ。あなたの紗良よ」「凌平……まさか!」部屋に聞こえる声に、澪奈は目の奥にすさまじい殺気を宿しながら、出迎えた女性を押しのけて部屋に飛び込む。だがそこには、複数のでっぷり太った女性の胸にまさに飛びつき、見ているだけで吐き気を催すほど無様に腰を振り続ける凌平がいた。しかも憎き、紗良の名前を叫び続けている。「ああ、大人の遊びを見せてあげる子がきたわよ。本当は甘えたいんだよねえ、凌ちゃん」「やだ……紗良がいい!」「あら、もっと子供に戻る?大丈夫、彼女も見守ってくれているからねえ」そういわれた凌平は「うん」と嬉しそうにしている。「凌平、しっかりしてよ。紗良は!どこにいるの?」澪奈は、吊り上がった目でわなわな震えながら叫ぶ。だが、凌平の目は目の前にいる澪奈を素通りする。焦点が合わない目で、澪奈の言葉に反応して探すのは【紗良】だけだ。高齢女性であっても、紗良ならいいのだ。「紗良は……どこ?紗良、紗良!」凌平は涙を滲ませ、乱れた呼吸のまま紗良と叫び、目の前にいる澪奈を明確に拒否している。「大丈夫。ここには凌ちゃんが愛している紗良しかいないよ」そう凌平の周りの女性が、再びその豊満な体で凌平を懐柔する。「ああ。紗良!愛してる」何度も凌平に抱かれる女性たちが「だめよ、お子様も入れてあげなきゃ」と笑いながら囁いているのに、凌平は無

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    東山ホテルは、日本では知らないものはいないと言われる五つ星ホテルだ。 その中でも、302号は隣の301号とコネクティングルームになっており軽いパーティーができるぐらいの広さがあった。「凌平、皆さんお待ちかねよ」そのままベッドに倒れ込んだ凌平だったが、眠りにつくと言うよりは頬を赤らめ、胸や呼吸の動きが荒くなっていく。 どうやら薬は、睡眠よりも快楽が勝りはじめたようだ。「皆さん、彼は大人の女性との快楽を求めたいみたいなの。どうもね、お付き合いしている子がお子様すぎて物足りないんですって」紗良は豊満な胸と体を持つ熟女クラブから何人か派遣を依頼する。名前は全員「紗良」 年齢は60から80代の高齢者対象クラブだ。301号の待機室からゾロゾロと下着姿の女性たちが凌平を囲んだ。「いい男じゃないの」「ええ、これから上場するかもしれない会社の社長さんよ。羽目を外して開放的になりたいみたい」紗良は、長い重圧の中で戦い続けた可哀想な男だと告げた。まずその中でも比較的若い60代の娼婦の1人がさらりと衣服の下から触れるとすでに熱い反応が始まっているらしく「ああ……紗良……」と吐息が漏れ始めていた。「皆さん、自由恋愛ですからね。必ず恋してくださいよ。これは、お互いが求め合った結果ですから。そうそう、彼は大人の遊びをお付き合いしているお子様に見せてあげたいんですって」「あら、じゃあいろんなプレーを見せてあげる方がいい?」大人の玩具から手錠に蝋燭、なわ、おしゃぶりとおむつまでずらりとベッドの横に置いていく。「そうね。童心に帰りたいようなら彼の希望に合わせてセッティングしてあげて。もし、嗜虐されたいならそれも。そして……もし、そのお子様が混じって遊びたいというなら仲間に入れてあげてね」紗良はくすくす笑うと、凌平の耳元に触れる。 そして、ふっと息を吹きかけると、凌平は恍惚とした顔でぼんやりと目を開いた。「あら、私恋をしたみたいだわ」娼婦たちが話すと、紗良はそのまま耳元で囁く。「皆さんあなたに恋をしたみたいよ。凌平……お返事できる?」すでに娼婦たちは、凌平の服の下に入れた手に動きを見せ始める。「はは、俺も恋したみたい……気持ち良くなってきた……」「そう。そのままお任せしましょうね」紗良が退いた耳もとには、すでに豊満な胸を持った娼婦が占拠し始め、とろんと

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    紗良は、実妹の里美に今後を相談した。「別荘を用意したから、あの男も簡単に潜りこむことは出来ないはず。お父様とお母様にはここに匿うことは話してある。ただ、4年前に家を飛び出てしまったあなたと、以前のような関係に戻るのは難しいみたい」紗良にも、その理由は分かっていた。綾川財閥の長女であり、その相続権を持つ自分が、兄を亡くした直後に婚約者を捨て、別の男と駆け落ち同然で姿を消したのだ。戻ってきたからといって、何事もなかったように迎え入れられるはずもない。「反省はしてる。あの頃の私は間違えていた。すぐに許されるとも思っていない。それでも、私は藤代宗明とやり直すと決めた」「それならいい」里美との通話も必要最低限だった。 紗良は小さく息を吐く。 今の自分には、まだ家族という後ろ盾がない。それでも別荘には本宅から、自分の専属使用人だった松田幸恵が派遣されていた。 それだけで、両親が本当は心配していることが伝わってくる。「松田さん、またお世話になります。しばらくは部屋で仕事をするつもりなので、食事もここに運んでもらえますか」「もちろんです。遠慮なくお申し付けください」松田はそう言って、紗良が好きなダージリンを置くと部屋から出ていった。少しして、静かになった室内でスマートフォンが鳴る。「休む暇もないわね……」紗良は、苦笑しながら電話に出る。「綾川副社長、お世話になっております」「渋谷さん、どうされました?」 渋谷は兄の名を冠した綾川将暉研究支援基金の利用者だ。 その彼の少し慌てたうわずった声が、スマホから響いていた。「AIとドローンを活用して、山間部の集落に薬と食料を届ける実験中だとご存知ですよね。来月ももう基金でその予算を組んでいて、待っている人もいるんです。給与もそこから……」渋谷の声は明らかに動揺している。「それなのに、本日突然、柏木凌平社長の名前で通知が届きまして、綾川将暉研究支援基金は終了する、と」「……は?」紗良は思わずその場に立ち上がった。「その文書を転送して下さい」届いた文面には【綾川将暉研究支援基金中止のお知らせ】とだけ記されていた。その理由の説明もない、 一方的な中止の通告だ。 そして柏木凌平の署名もあった。紗良は、唇を噛み締めた。この基金を頼りに研究している人たちにとって、中止は研究の継続そのもの

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    関口の目からは怒りが伝わり、凌平を睨みつけることを隠していない。それだけで、複数の株主たちの目は泳ぎ、ざわつき始める。「このメールは、明らかに私の名前を使って偽造されていた。そこで独自のルートを使い調べさせていただいたよ。柏木社長、あんたの実家が発信源だ。説明いただこうか?」「私も説明願いたい。この席で私の名前を騙るものが副社長に暴行を働こうとしたと聞いている。私の名刺とは違うものが現場には落ちており、その映像の男は柏木社長や他の幹部の学生時代の友人だとか?」理沙がレーザーポインターで指したのは、紗良に関口勉と名乗った男だ。その瞬間、凌平が抱き込んだ株主たちは次々様子を見る姿勢になった。役員変更は否決、更には紗良がいないことによって、中身のない研究報告をするしかなくなり会場は紛糾する。凌平たちはひたすら頭を下げたり、身に覚えがないと言い続ける騒ぎになる。「私はこういう行為は許さない!被害届を提出すると同時に、民事訴訟も起こして徹底的に責任を追及する」関口の言葉に、会社は上場どころではない騒ぎとなる。積み上げたものが壊れるのは一瞬――その騒ぎを、紗良は複雑な心境で見つめるしかなかった。会社は連日問い合わせが殺到し、関口が巻き込まれたことでニュースになった。実績がないのに副社長になろうとした義妹の澪奈にも、嫌疑の目がむけられ始める。紗良は、そのニュースを見終わると、病室のテレビを切った。「退院準備できた?荷物を持つよ」車を病院入り口に回すために、理沙が、駐車場に車を取りに行った時だ。「紗良!」入り口に凌平が待ち構えている。「帰るぞ!」凌平は、突然紗良の腕を掴む。「やめて!もうあなたとは終わりよ!帰るつもりなんてないわ。よくもこんな目に合わせて、すごすごやってきたものね」「俺と一緒に帰るんだ」「離して。もう別れたって言ったでしょう。私たちはもう何も関係ない。終わったの」再び、凌平は強く紗良の腕を掴み、無理やり引っ張って自分の車に乗せようとする。その車の中には――澪奈!助手席に座り、微笑んで紗良を見つめている。「彼女から手を離してもらおうか!」その凌平の手を葛城が掴む。そして、遅れてすぐ理沙も飛び込んできた。「彼女に触れないで!こちらも護衛はつけさせてもらっている。力でねじ伏せるなら彼が相手よ。また、前回、自宅で

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    「紗良!目が覚めた?無事でよかった。本当に!」「理沙……なの?」まだぼんやりとする。そこには、紗良が目覚めたことに気づいてボロボロと涙を流す親友の理沙がいた。紗良は、自分にはきちんと味方がいるのだという安心感と同時に、どうしてここに運ばれたのかと思い出して、ぞわっと冷たいものが体を駆け巡った。あの下品な男たちの顔を思い出すと同時に、安易に信じてしまった自分の馬鹿さ加減に怒りが抑えきれない。 紗良は、たくましい理沙の言葉に少しだけ目元を和らげて、ひきつった頬を引き上げて、笑顔を見せようとした。「理沙、私は大丈夫よ」そう言って、目線を理沙に合わせようとする。——そんなはずがない。理沙は病院に駆けつけたとき、医師から聞かされた言葉を思い出していた。「彼女の精神状態はかなり不安定です。くれぐれも刺激しないようにしてください」理沙は再び紗良を見つめる。その瞳には、隠し切れない心配と痛々しいほどの慈しみが滲んでいた。紗良は、小さく二度ほど咳き込むと、水を二口飲んでから再び口を開いた。「凌平と組んでいる株主たちの件だけど……今どうなっている?」「あなたを陥れようとしている株主たちと凌平は、あなたの会社の持ち株を、水野澪奈の名義に移そうとしていたみたい」「そんなものに私が頷くわけないでしょう」「ええ、そんな事、あなたが譲渡契約書にサインをするしか手がないもの。意識がないことをいいことにサインをさせようとしていたのか、動画で脅そうとしていたのか……」「凌平からは恨まれたものね。ただ、関口義男やその息子の名前を語ったのは失敗ね」紗良の口元は少し上がる。関口は誰も信用しない。それだけに、自分の名前を騙った奴がいればそれは誰なのか必ず突き止める。「関口を味方につけましょう。あと今回名前を騙られた株主たちも味方にするわ。上場の役員に澪奈は絶対に絡ませない」紗良は、関口からの偽メールが来たことや、関口の息子の名前を騙る男が現れたので、注意喚起をしたいと関口に伝える。「これで充分よ。後は勝手に関口が、自分の名前を騙った奴に制裁を加えるわ。防犯カメラのようなものに、昨日の男たちの映像が残っていたら押さえて欲しいの。あとゴミの中に名刺などが残っていたら、それも回収しましょう」「それを使うというわけね」理沙の言葉に紗良も頷く。「偽物だったなら、

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