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第2話

Auteur: おうぎ
きらびやかな御殿の中は、たちまち騒然となった。

「靖王殿下だと?」

「よりにもよって靖王殿下に嫁ぎたいだなんて……」

「皇太子殿下に嫁ぐ方がずっと良いだろうに。なぜわざわざ靖王殿下を選ぶんだ?」

「まさか、靖王殿下の身に起きたことを知らないのでは?」

沈薬の耳にも周りの者たちの話は届いた。皇帝も親切心から彼女を諭す。「それではそなたが不憫すぎる。やはり朕が他の皇族の中から、ふさわしい夫を選んでやろう」

しかし沈薬の決意は変わらない。「陛下のお気遣いには深く感謝いたします。ですが、私はすでに仏前で誓いを立てましたので、この一生、靖王殿下以外の方に嫁ぐつもりはございません。どうか、私の願いをお聞き届けください」

彼女は再び、額が床に打ち付けられ「ドン」と音が鳴るほど、勢いよく頭を下げて懇願した。

靖王・謝淵(シャエン)とは、皇帝と同じ父母から生まれた弟であり、一族の中での序列は九番目にあたる。

皇帝がまだ一介の皇子として兄弟たちと後継者の座を争っていた頃、謝淵は確固として彼を支持し、幾度も危機から救い出した。つまり、皇帝を玉座へと押し上げた立役者であり、その後も各地を平定して領土を広げ、多大なる武功を立てた人物である。

しかし数年前、謝淵は西北の戦地で突如として意識を失ってしまい、今も靖王府(セイオウフ)で昏睡状態のままだった。

彼を診察した医官も、一生このままだろうと言った。

沈薬ももちろんこれらのことを、すべて知っている。

そしてもう一つ、知っていることがあった。それは、前世で自分が謝景初に嫁いだ三年後、謝淵が目を覚ましたということ。

さらにその年は、沈薬が一向に子供を身籠らなかったことにより、皇后が謝景初に側室を与えたので、沈薬の生活は非常に惨めなものだった。

さらに、沈薬よりもその側室の方が謝景初の寵愛を受けたため、東宮の者たちも皆、側室を敬った。

謝淵が昏睡状態から目覚めた後、謝景初は沈薬と側室を連れて靖王府へ見舞いに行った。

謝淵への挨拶を終え、靖王府から帰ろうとした時、謝景初の側室に裏で手を回され、沈薬は故意的に置き去りにされてしまった。

帰り道が分からない沈薬は、他の馬車に同乗させてもらえないか頼んだ。だが、謝氏の皇族たちは皆、謝景初が彼女を疎ましく思っているのを知っていたため、謝景初の機嫌を損ねるのを恐れて誰も沈薬を助けてはくれなかった。

沈薬が絶望しかけたその時、背後から弱々しくも優しい男の声がした。「馬車の手配をしたから、こっちへおいで」

沈薬は信じられない思いで振り返った。

すると、ゆったりとした黒光りしている衣を纏った謝淵が、車輪のついた木椅子に座っていた。まだ完全に回復していないようで、その美しい顔立ちは青白かったが、それでも沈薬に優しい笑みを向けてくれている。「それとも、靖王府で夕餉でも食べていくかい?」

「結構です……」

断ろうとした沈薬だったが、口を開いた途端、自分でも止められないほど涙が溢れてきた。

どうしても分からなかったのだ。なぜ皆が、自分を虐げるのか。一体、自分が何をしたというのだろう。ただ、家族を失っただけなのに。しかも、その家族だって、この国と民のために命を捧げたのだ。

心の奥底にずっと溜め込んでいたやりきれない思いが、謝淵の前で一気に決壊した。

すると、小さくため息をついた謝淵が、袖から絹の手巾を出して沈薬に手渡す。

沈薬が泣き続ける間、謝淵はただ黙ってそばに寄り添ってくれていた。

だがそれ以降、沈薬が謝淵と会うことは二度となかった。

しかしこの時のことを、沈薬はずっと忘れてはいなかったのだ。

上座の皇帝は、そんな沈薬を見て眉をひそめて黙り込んだが、皇帝のそばに座っていた皇后が柔らかな笑みを浮かべて言う。「沈家の娘がこれほどまで謝淵への輿入れを望んでいるのですもの。その想い、どうか叶えてあげてはいかがですか?」

皇帝は皇后をちらりと見てから、床に額をつけたままの沈薬に視線を移し、ついに了承した。「まあ、よかろう」

皇帝が眉間を揉む。「そなたは身寄りがおらず、靖王も意識不明のままだ。だから、そなたたちの婚姻の儀は、すべて宮中が取り仕切ることにするぞ」

沈薬は再び深く頭を下げた。「陛下のご恩情、ありがたく存じます」

謝景初なんかに嫁いで同じ過ちを繰り返したくはない。だから自分は謝淵を選ぶ。

彼を選ぶ理由は、主に二つだ。まず一つ目は、この二年ほど謝淵は目を覚ましていないため、自分はその間に生きる道を探すことができるということ。

二つ目は、謝淵に恩返しがしたかったから。前世で、謝淵は昏睡状態から目覚めたものの、目を覚ますまでの世話が不十分だったため、最終的には両足が完全に使い物にならなくなり、残りの人生を車輪のついた木の椅子で過ごすことになってしまった。

前世で唯一自分に優しくしてくれた謝淵。だからこそ、彼が苦境にある今、自分が世話をして、せめて彼がもう一度、彼自身の足で立てるようにしてあげたいのだ。

謝淵が目覚めたら、離縁を申し出ればいい。

彼だって、自分などとは婚姻関係を結びたくないだろうから。

謝淵がまだ昏睡状態になっておらず、そして父や兄が生きていた頃、彼らが話しているのを聞いたことがある。謝淵には想い人がいるらしいと。ただ、それが誰なのかは誰も知らなかった。

一方。

謝景初は席に座ったまま、沈薬が頭を下げ、靖王に嫁ぎたいと懇願する姿をじっと見つめていた。

なぜか、胸の内に言葉にできない苛立ちが湧き上がる。

「九皇叔(キュウコウシュク)に嫁ぐだなんて、沈薬って本当に馬鹿ね……」

安宜がぽつりと呟いた。

謝景初は眉をひそめる。

しかし、安宜はどこか期待するような口調で続けた。「兄上。沈薬は絶対すぐに後悔するはずよ」

「私には関係のないことだ」と、謝景初は冷たく口角を上げた。

……

宴の後、沈薬は将軍府へと戻った。

久々に見る将軍府の中庭と寝室。彼女は倒れ込むように眠りについた。

もう謝景初に嫁がなくていい。ついに家に帰ってこられた沈薬の心は穏やかで、その後数日もぐっすりと眠れ、すっかり気力を取り戻した。

数日後、皇后に仕える女官の項(コウ)女官が将軍府を訪れ、穏やかな口調で沈薬に告げた。「陛下より沈薬様のご婚姻の手配を任された皇后様は、この数日心を込めて準備を進めておられます。本日は日取りを決めるため、皇后様が沈薬様を宮中へお招きでございます」

しかし、沈薬はあまり宮中へ行きたくなかった。「日取りのことはよく分かりませんので、皇后様に縁起の良い日を選んでいただければ、それで結構です」

項女官は笑みを浮かべて言った。「たとえ民間での縁談でも、男性が日取りを決めたら、女性の同意は必要です。沈薬様、どうか一度お越しくださいませ。皇后様も、しばらくお会いしていないからゆっくりお話がしたいと仰っておりましたよ」

皇后が自分とゆっくり話したい?

前世でも今世でも、皇后は自分のことを全くよく思っていないのに。

しかし項女官の熱心な説得に、沈薬は結局宮中へ行くこととなった。

宮中へ入る頃には、もう日が暮れかけていた。沈薬は案内されながら、皇后が住まう長秋殿(チョウシュウデン)へと向かう。

夕日がとても美しく、沈薬は目を伏せ、足元に広がる黄金色の残照を見つめていた。

すると、突然「皇太子殿下にご挨拶申し上げます」と、項女官が恭しく挨拶をする声が聞こえた。

沈薬もはっとして顔を上げると、謝景初の整った、しかし冷酷な顔が視界に入った。

長身の謝景初は無言のまま沈薬を見下ろしていて、眉間にはしわが寄り、その瞳には何かを探るような冷たい光がある。

その視線に沈薬は息が詰まりそうになったので、すぐに頭を下げ、畏まった態度で挨拶をした。「皇太子殿下」

すると、謝景初が不機嫌そうに眉をひそめた。

謝景初は、沈薬が自分に想いを寄せていることを知っていた。

なぜなら沈薬が、偶然を装って謝景初に手作りの菓子を渡すために、謝景初が毎日、母親である皇后へ挨拶に来る時刻をわざわざ調べ、その時間に合わせて現れていたから。

しかし実際のところ、謝景初はそのお菓子をろくに食べることもせず、捨てるか、部下への褒美として分け与えていた。

だが、今日の沈薬の手には何も握られていない。

どうやら、自分に会いに来ただけらしい。

あの日の宴で自分を好いてはいないと断言したことを、今頃になって後悔したのだろう。

だからわざと、こんな畏まった態度をとっているに違いない……

謝景初は舌打ちをして、言った。「沈薬。こんなことをして面白いか?」

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