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第60話

Author: るるね
last update publish date: 2026-09-29 01:46:21

 千鶴はしばらく待たされた末、ようやく扉を開けに来た優和へ、少し不満そうに唇を尖らせた。

「遅いよ。何してたの?」

 優和は気まずさを誤魔化すように咳払いをし、千鶴の手を取った。神経を張り詰めさせたまま、平静を装って問い返す。

「どうして急に来たんだ?」

「忘れたの? 今日は一緒に夕食を食べる約束だったのに、私のほうに急な用事が入ったでしょう。優和も最近ずっと忙しくて、二人でゆっくり過ごせていなかったから、少しでも会いたくなったの」

 優和に手を引かれ、千鶴は別荘の中へ足を踏み入れた。

 優和がこの別荘で本格的に暮らし始めたのは、千鶴が留学してからのことだ。そのため、千鶴もここを訪れたことはほとんどない。

 興味深そうに室内を見回し、記憶の中にある光景と見比べる。

「ずいぶん変わったね。昔はあまり使っていなかったのに、今はここで暮らしてるんだ。ねえ、中を案内してくれないの?」

「もちろん。寝室も見ていくか?」

 千鶴はくすくすと楽しげに笑い、綺麗にネイルを施した人差し指で優和の胸を軽く突いた。

「寝室へ行ってどうするの? もしかして、私に悪いことするつもり?」

「するわけないだろう。
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