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第3話

مؤلف: こばん猫
声はかすれ、ほとんど音にならなかった。それでも、手のひらが赤く腫れ、血がにじむまで扉を叩き続けた。

まだ死ぬわけにはいかない。最後の絵を、まだ展覧会に出していなかった。

俺の人生は灰色だった。それでも、せめてあの絵だけは、きれいな額に入れてもらいたかった。

どれほど扉を叩いたのか分からない。やがて外から鍵を開ける音がして、ようやく扉が開いた。

扉の前に立っていた真奈美は、床にうずくまる俺を見るなり、はっと目を見開いた。

慌てて駆け寄り、その場にしゃがみ込むと、俺の額に手を当てた。だが、あまりの熱さに、すぐ手を引っ込めた。

「すごい熱!」

「薬……枕の下……」

それだけ口にするのがやっとだった。

真奈美はすぐに俺の部屋へ走り、薬の箱と水の入ったコップを持って戻ってきた。俺の肩をそっと支え、ゆっくりと体を起こした。

「早く飲んで。少しは楽になるから」

薬を飲んだ直後、蓮が青ざめた顔で入ってきた。

蓮は俺を見ながら、声を落として言った。

「兄さん……どうしてみんなに嘘ついたんだ?

さっき兄さんの部屋を見たんだけど、枕の下にあったの、薬じゃなくてビタミン剤だったよ……

本当は何ともないのに、わざと病気のふりまでして……みんなを心配させるなんて、どうしてそんなことするんだよ」

蓮の言葉を聞いた瞬間、真奈美の表情が変わった。俺を支えていた手を乱暴に離し、声を荒らげた。

「祐一、もういい加減にして。仮病まで使うなんて……あなた、本当にどうかしてる」

いつの間にか、両親も戸口に立っていた。母は険しい顔で言った。

「少し反省してもらおうと思っただけなのに……こんなことなら、あの時おろしておけばよかったわ!」

父も呆れたように首を振った。

「まったく、救いようがないな」

俺は必死に首を横に振った。目に涙がにじみ、掠れた声を絞り出した。

「違う……そんなこと、してない……」

「もういい!」

真奈美は疲れ切った声で、俺の言葉を遮った。

「言い訳なんて聞きたくない。祐一、本当に見損なったわ」

それ以来、四人は俺と一切口を利かなくなった。

数日後、展覧会に出す最後の絵を発送した直後、霊園の終活サポート窓口からメッセージが届いた。

【木村様、ここ数日、スマートブレスレットが心拍の乱れを検知しています。体調に異変を感じた場合は、お早めに医療機関を受診してください】

俺は「分かりました」とだけ返信した。

この世で俺を気にかけてくれたのは、終活支援の人たちだけだった。

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