INICIAR SESIÓNマチルダ視点
今日は、私が一番嫌いな日。
2017年3月1日。
人生で最も苦しく、心が壊れそうな日だった。土の下に眠る棺を見るたび、今でも悪夢みたいに感じる。
お母さんを失った。
もう、学校で“完璧な人生”を送るクラスメイトたちに馬鹿にされ、傷つけられた時、私を庇ってくれる人はいない。
この涙も、胸を押し潰すような疲れも、私はどこへ捨てればいいの?
父は完全に打ちのめされていた。
朝からずっと部屋に閉じこもったまま。
母の葬儀にも来なかった。最後に棺が開かれた時でさえ、父は母を見ようとしなかった。
「マチルダ、本当に辛かったわね……」
墓地に到着したローザ様が、そっと私を抱きしめた。
私は弱々しく頷き、十五分以上流れ続けている涙を拭う。
「ありがとうございます……ローザ様」
それだけ言うのが精一杯だった。
私は再び母のお墓を見る。
……まだ信じられない。
お母さんが、もういないなんて。
「お父さんは?」
ローザ様が静かに尋ねた。
「来ていません。まだ家にいます。叔父さんたちも説得したんですけど……妻が埋葬される姿を見るのが辛すぎるみたいで……」
ローザ様は、そっと私の肩に頭を預けた。
彼女の悲しみも伝わってくる。
きっと私と同じくらい深い。「人生って、不思議ですね……ローザ様」
私は小さな声で呟く。
「私はただ、心から愛してくれて、守ってくれる人が欲しかっただけなんです。でも、その人はもういなくなってしまった。知っていますか? 私、学校ではずっと“ブス”って笑われていたんです。もしお母さんがいなかったら、きっとここまで頑張れませんでした。神様は、本当に私がこんな残酷な世界に耐えられると思っているんでしょうか……?」
まるで答えるように、遠くで雷が鳴った。
黒い雲が空を覆い始め、ぽつぽつと降り始めた雨は、すぐに激しくなっていく。
「帰りましょう、マチルダ。雨になるわ」
ローザ様が優しく腕を取る。
でも私は、ゆっくりその手を離した。
「ローザ様は帰ってください。私はここにいます。雨の中で泣きたいんです……この孤独を感じながら」
「婆さん!」
突然、大きな声が響いた。
振り返ると、傘を持ったフレドリックがこちらへ走って来る。
ローザ様は孫の姿を見ると、すぐに一歩下がった。
「帰るぞ、婆さん! なんでまだここにいるんだ!」
フレドリックが苛立った声を上げる。
私は二人を見なかった。
視線はずっと母のお墓に向けたまま。しばらく沈黙が続いた。
二人は帰ったのかと思った。
でも違った。突然、フレドリックが私の手首を掴む。
「離して!」
私は反射的に振り払った。
……正直、腹が立っていた。
心配してくれていることに感謝していないわけじゃない。
でも、この痛みくらい、自分のやり方で耐えたかった。
雨の中で、一人で。どうしてそれを分かってくれないの?
「本当に頑固だな! 雨が降ってるんだぞ! 何を待ってる? 一日中ここにいたって、お前の母親は戻ってこない。現実を見ろ」
私は彼を睨み返した。
フレドリックも全身びしょ濡れだった。
もう傘はローザ様に渡してしまったのだろう。そしてその時、私は初めて――本気で彼に怒りを感じた。
「そんなこと、分かってるわよ。フレドリックに言われなくても。でも私はここにいたいの。何が悪いの? 帰って。あなたのお祖母様の方がずっと大事でしょう? 私を無理やり連れて帰る必要なんてないわ」
「チッ……分かったよ! 俺がお前を心配してるとでも思ったのか? 行くぞ、婆さん! だから言っただろ、この女に何言っても無駄だって!」
フレドリックは苛立ったまま背を向けた。
ローザ様が小声で彼を叱り、“もう一度説得しなさい”と言っているのが聞こえる。
でも彼は無視した。
雨の中を去っていく彼の背中。
私は母のお墓のそばに座り込み、降り続ける雨に打たれていた。
***
2017年5月4日
私は全力でローザ様の屋敷へ走っていた。
“お父さんが突然倒れた”
そう電話で聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
母が亡くなってから、父は別人みたいになってしまった。
この三か月、ほとんど口も利かず、食欲もない。
……それは私も同じだった。
人生が色を失ったみたいだった。
かつて燃えるようだったフレドリックへの想いでさえ、少しずつ薄れていった。
もう何にも興味が持てない。
ただ、父まで完全に壊れてしまわないように、私は必死に耐えていた。
父は何度も体調を崩した。
休んでと言っても、絶対に聞かなかった。
家にいるのが嫌だったのだ。
どこを見ても母を思い出してしまうから。屋敷の使用人に案内され、私は裏庭の小さな離れへ向かった。
部屋へ入ると、父がベッドに横たわっていた。
顔色は真っ白で、弱々しい。
「お父さん……」
「近づくな」
その言葉に、私はその場で立ち止まった。
でも無視して、一歩近づこうとする。
すると父は目を見開き、さっきより大きな声で叫んだ。
「来るな!!」
ローザ様がすぐに私を掴み、部屋の外へ連れ出した。
胸の中がぐちゃぐちゃだった。
……どうして?
「マチルダ、お父さんの言うことを聞いてあげて」
ローザ様が静かに言う。
「お父さんは重度の鬱状態なの。深く傷ついているのよ」
私はもう涙を堪えられなかった。
ローザ様が強く抱きしめてくれる。
「じゃあ、私はどうしたらいいんですか? お父さんには誰かが必要なのに……どうすればいいの、ローザ様……。もう分からない……!」
「焦らなくていいの。お父さんにとって、一番怖かったのはお母さんを失うこと。そして、それが現実になってしまった。少しずつ、私が話をしてみるわ。だから今は、ここにいなさい」
「婆さん、どこ?」
聞き覚えのある声が庭に響いた。
顔を上げると、フレドリックがこちらへ歩いて来る。
その隣には――息を呑むほど美しい女性。
ポーラ。
私はすぐに気づいた。
最近話題の有名モデル。
私はそっとローザ様の腕から離れた。
……見たくなかった。
俯いている方が楽だった。
「奇遇ね、フレドリック」
ローザ様が笑顔で言う。
「ちょっと頼みたいことがあるの」
「何?」
彼は明らかに面倒そうだった。
「マチルダを家まで送って、荷物をここへ運ぶのを手伝ってちょうだい」
私は慌てて首を振る。
「え!? 俺が!? ポーラとランチの約束があるんだぞ? 婆さんを誘いに来ただけなのに、なんでマチルダの世話までしなきゃならないんだ。こいつ一人で帰れないのか? 自分の家も忘れたのかよ?」
フレドリックは露骨に嫌そうな顔をした。
「ローザ様、大丈夫です。私、一人で――」
「フレドリック!」
ローザ様が鋭く遮る。
「あなた、私の言うことが聞けないの? それとも、マチルダを助けるのがそんなに嫌?」
そして彼女はポーラへ視線を向けた。
ポーラは困ったように首を横へ振る。
「……チッ、分かったよ! 行けばいいんだろ!」
フレドリックは乱暴に振り返り、そのまま歩き出した。
私はローザ様を見る。
彼女は優しく微笑んでいた。
「着替えと必要なものをまとめていらっしゃい。明日は仕事でしょう?」
私は小さくため息をつき、ゆっくり頷く。
……もう、何も言う気力が残っていなかった。
フレデリックの視点私は下の階からの音を遮断するためにインカムのボタンを押し、ガラスの壁を拳で激しく叩いた。クソッ。私は冷たいガラスに額を押し付けた。下の階では、アントニオが再びヘレナの肩に触れ、その体を回転させている。そしてヘレナは……ヘレナはそれに応じた。彼が触れるのを許したのだ。マチルダ……。その名が、呪われた呪文のように頭の中でグルグルと回り続けていた。俺はお前に何をした? そしてなぜ、そこでドレスに身を包んで立っているお前を見るたびに、俺のしたい唯一のことが、お前にあえて触れようとするすべての男を殺すことなのだ?こんなの理解できない。理解したくもない。私はガラスに映る自分の反射を見つめながら、独り言をつぶやいた。「自分を抑えろ、フレデリック。お前は妻ですらないモデルに嫉妬しているんだ。ただ自分の仕事をこなしている男に嫉妬している。頭がおかしくなったのか」だが、その言葉は誰も納得させられなかった。とりわけ、この私を納得させることはできなかった。コントロールルームの引き出しに隠してあったボトルから、ウィスキーをグラスに注いだ。琥珀色の液体が喉を灼いたが、胸の奥で燻る熱を消し去るには足りなかった。ガラス越しにヘレナを観察した。彼女は白い背景の中央へと戻っていた。年老いたカメラマンのデヴィッドがカメラを構える。そしてアントニオはスクリーンの後ろへと下がり、いつもの冷徹で中立的なトーンで指示を出していた。彼女は、昨日の夜、庭で私に向けたような目でアントニオを見てはいない。ふとその考えが頭をよぎり、私はその瞬間にそれを打ち消した。いや、彼女は私に対しても何の温もりも向けていなかった。彼女は私を、誰もに向けるのと同じ凍りついた目で凝視していただけだ。私をただの虫けらのように感じさせる、あの目を。私はウィスキーをもう一口あおった。2杯目だ。下の階では、撮影が続いていた。ヘレナはアントニオのすべての指示に従い、滑らかに動いていた。アントニオが彼女に触れるたび――首元のダイヤモンドの位置を直し、肩を少し動かし、ポーズの合図のために腰を軽く叩くたび――私の胸は、目に見えない巨大な手に握りつぶされているかのように痛んだ。触るな。頭の中でその言葉が大きすぎて、思わず声に出してしまいそうになるほどだった。俺の妻に触るな。私は両手を強く握りしめ、手
マチルダの視点(MATHILDA'S POV)スタジオの照明は息が詰まるほど熱かった。ただ汗をかかせるような熱さではなく、2メートル離れた場所から肌が焼かれているように感じられる種類の熱さだ。私は薄暗い白い背景の真ん中に立っていた。アントニオに3時間前から履くよう強制された12センチのハイヒールのせいで、両脚はすでに震え始めていた。「顎を引いて。いいね。今度は冷たい表情を見せてくれ。この部屋にいる誰も気にしていないと言いたげな顔だ!」モニターの後ろからアントニオが指示を出した。私はかたずをのんだ。気にしないこと。言うのは簡単だ。けれど私の頭の中では、フレデリックが壊れたテープのように回り続けていた。彼の目。ガラ(Gala)で私を凝視したあの視線。あの壊れ切った声で「マチルダ」と呟いたあの響き。集中するのよ、ヘレナ。あなたはもうマチルダじゃないんだから。カメラマン――この業界で20年働いているデヴィッドという年配の男性――が満足そうに頷いた。「完璧だ! そのエネルギーを保ってくれ、ヘレナ」私は微笑むのをぐっと堪えた。ヘレナの微笑みは冷酷でなければならない。危険で、息をするのも忘れさせるようなものでなければならないのだ。それがアントニオの教えだった。そして私は彼を信頼している。退院して以来、私を人形扱いしなかった唯一の人だからだ。アントニオが告げた。「5分間休憩しよう。ヘレナ、水を飲みなさい。顔色が悪い」私は頷き、スタジオの隅にある小さなテーブルへと歩いた。マリアがすでにボトルの水と小さなタオルを用意してくれていた。彼女は私を読めない目で見つめていた――いつもの嘲笑うような視線ではなく、もっと……警戒するような何かだ。「大丈夫?」と彼女は尋ねた。私は彼女を見返した。「どうしてそんなことを聞くの?」マリアは肩をすくめた。「一週間も眠っていないみたいな顔をしているからよ。ここで倒れられたら、アンディに私のお給料を減らされちゃうわ」私は小さく笑った――自分の耳にもひどく乾いた響きに聞こえる笑い声だった。「大丈夫よ」マリアは鼻で笑った。「そう言うってことは、全然大丈夫じゃないってことね。まあ、どっちにしろ私はあなたの母親じゃないけれど」彼女は踵を返して去っていった。私は手の中の水ボトルを見つめた。マリアの言う通りだった。私は眠れていなかった。目を閉
フレデリックの視点ここにいるべきではない。この忌々しい場所に足を踏み入れるべきではなかったのだ。論理的に考えて、北米最大のジュエリー帝国を率いるCEOが、たかがセカンドクラスの撮影の立ち会うためだけに、こんな薄汚い場所にやってくるなどあり得ない。それは部下の仕事だ! 法外な給料を払っているクリエイティブチームの仕事だろう!それなのに、¡Dios mío……! 私の足はまるで、過去の悪魔に操られているかのように勝手に動いていた。ミートパッキング・ディストリクトにあるこのスタジオに足を踏み入れ、車の中に置き去りにしてきた部下たちの唖然とした恐怖の視線を無視する。言い訳などいくらでもある。そうだ、たった800万ドルのキャンペーンだ。「スミス・ジョーンズ」という高名な名を背負う顔が、道端に捨てられたゴミのように見えないよう確認する必要がある。少なくとも、それは今朝、鏡の前でネクタイを締めながら自分に言い聞かせた甘い嘘だった。「ミスター・スミス!」制作コーディネーターのアントニアの声が、入り口で私の緊張を切り裂いた。「¡Madre mía! まさかセニョールがいらっしゃるとは思っていませんでした。セッションはたった今始まったばかりです」胸の奥で荒れ狂う嵐を押し殺し、私は凍てつくような冷たい声で答えた。「ただ進捗を確認しに来ただけだ。仕事を続けろ。私はそこにいない、ただの影だと思え」嘘だ! すべては嘘だ! 私がここにいる理由はただ一つ。彼女を見るためだ。ヘレナを見るためだ。私はケーブルのジャングル、目を眩ませるストロボの光、そして不安げなミミズのように動き回るアシスタントの群れをかき分けて進んだ。そして、その瞬間……。世界が突然、回転を止めた。喉の奥で息が詰まる。重いハンマーで心臓を殴られたかのような衝撃が走った。ヘレナがそこに立っていた。漆黒の背景の真ん中で、まるで地獄から蘇った闇の女神のように。彼女がまとっていたのは、あまりにも大胆なミッドナイトブルーのドレスだった! シルクが彼女の体の曲線にぴったりと貼り付き、まるで第二の皮膚のようになめらかに、無防備な背中をむき出しにして裸の腰まで露わにしている。そして、その深いスリットは……¡maldición! 魅惑的な腰のわずか数インチ上まで切り上がっているではないか!「エターナル・フロスト」のダイヤ
マチルダの視点私は、自分のアパートの一年分の家賃に相当するかもしれない贅沢な椅子に腰掛けていた。目の前にはフレデリック・リアム・スミス――かつて結婚指輪を私に投げつけ、崖の底へと突き落とした男が、プロフェッショナルに見せようと必死になっていた。だが、彼は完全に失敗していた。彼の視線は絶えず私を盗み見していた。私が振り返るたびに、彼は慌てて画面上のムードボードに目をやり、手にしたペンにいかにも忙しそうに集中しているふりをする。滑稽だった。昔の彼は私を見る事すらなかったのに、今では見つめるのをやめられないのだ。マーケティングディレクターのサラの声が、その静寂を切り裂いた。「それではヘレナさん、撮影の候補地としてスイス、アイスランド、カナダの3つを用意しました。どれが一番お好みですか?」私は答えようと口を開けたが、フレデリックがそれを遮った。「スイスだ」全員が彼の方を向いた。サラは眉をひそめた。「スミスさん、普段こうした決定は――」「私はCEOだ。どんな決定でも下せる」フレデリックは私を一瞥すると、すぐに目をそらした。「そして、『永遠の霜(エターナル・フロスト)』というコンセプトにはスイスが最もふさわしいと思う」私は笑みを押し殺した。昔のフレデリックなら、こんな些細なことにわざわざ口出しなどしなかった。それが今になって、突然撮影地にこだわり始めたというのか?私の隣に座っていたアントニオが、小さく冷笑を漏らした。彼はフレデリックを、「こいつは本当にどうしようもない」と言いたげな目で見た。サラは躊躇いがちに言った。「承知いたしました、スイスですね。照明のコンセプトにつきましては、当社としては――」フレデリックが再び彼女の言葉を遮った。「皆さんに任せる。結果に一切の妥協がない限りはな」私はフレデリックを凝視した。彼は手元でペンをいじっていたが、その手がかすかに震えていた。この男が一晩中一睡もしていないのは明白だった。目は充血し、その下には濃いクマができている。まるで、途方もない秘密を必死に隠そうとしている人間のようだった。いいぞ、と私は心の中でつぶやいた。もっと苦しめばいい。ついにアントニオが口を開いた。冷徹で、プロフェッショナルな声だった。「スミスさん、差し支えなければ、ヘレナさんにこのコンセプトについて意見を述べていただきたい。これはあなたの
FREDRIC'S POV視点:フレデリック・リアム・スミス「ミスター・スミス、本当に今朝のクリエイティブ会議をご自分で指揮なさるのですか?」マルコスの声が、私の袖のボタンを直そうとしていた指をピタリと止めさせた。40代の男は、スミス・ジョーンズ・タワーの主要会議室の入り口の敷居に立っていた。その瞳にはショックの色ではなく、骨の髄まで染み込んだ深い疲労が宿っていた――ゆっくりと灰の山へと崩れ落ちていく若き主人を見つめる、老いた使用人の目だった。私は冷ややかに答えた。「私はこの会社の最高経営責任者だ、マルコス。そして私には、どの部屋に出席しようと選ぶ権利がある」 私の声はしわがれ、頭蓋骨を打ち割るような激しい頭痛と闘っていた。離脱症状と、3日連続の不眠がもたらした直接の結果だった。マルコスはファイルを手にしたまま一歩踏み込み、圧をかけて続けた。「もちろんです。ですが、これはあくまでムードボードの決定と撮影場所についての協議にすぎません。マーケティングチームとアンディ・リヴァスのクリエイティブチームがすでに処理しています。私ほどの役職の人間が出席する必要すらありません、あなたならなおさらです」私は途切れがちな呼吸のまま彼の言葉を遮り、怒鳴りつけた。「この800万ドルの投資が空中に消えていかないことを確認したいんだ! すべてを完全に掌握しておきたいんだ!」マルコスは黙り込んだ。私の青白い顔、目の下にいや増す黒いクマ、そしてハッキリと震える両手をじっと見つめた。彼は強い確信を込めてささやいた。「あなたは、このダイヤモンドのキャンペーンを掌握しようとしているのではないのです、フレデリック……。あなた自身の恐怖を掌握しようとしているのです」「もういい、マルコス! チームを入れろ!」一人、また一人と、マーケティングチームのメンバーたちが困惑した面持ちで部屋に入ってきた。全部で6人。マーケティングディレクターのサラは、明らかな震えの残る指でタブレット端末を握りしめていた。マホガニー製の長机の最上座に私が座っていることで、彼らのワークフローは完全に粉々に打ち砕かれていた。CEOが、撮影背景のトーンや照明の角度といった技術的な細部にまで介入することなど絶対にない――そうでもなければ、そのCEOが正気を失いつつある場合を除いては。サラはおずおずと切り出した。「お、
MATHILDA'S POVショック!重いファイルが鉄のテーブルの上に投げ出され、まるで銃声のように倉庫の静寂を切り裂いた。その空虚な反響は、あごを砕きかねないほど鋭く響き渡った。私はまばたき一つしなかった。私の目は、ファイルの右上隅にあるギロチンのようなロゴに釘付けになっていた。薄暗く、ホコリの舞うハロゲンランプの光の下で、「S」と「J」のイニシャルが毒蛇のように絡み合っていた――冷笑を浮かべて冷たく輝く人工ダイヤモンドで作られていた。スミス・ジョーンズ。かつては、そのロゴが書類のレターヘッドに現れたり、奴が私の顔に投げつけた結婚指輪の上で光ったりするたび、私の胸はガラスのように砕け散ったものだった。だが今はどうだ? 高級ディスプレイの向こう側でほくそ笑む、我が処刑人の顔を見つめているような気分だった。部屋の反対側で、アンソニーは面倒くさそうに私を一瞥すらしなかった。彼の荒々しい指先は、古いミシン針の下で布地を操り、私の高鳴る息を飲み込むような容赦ないリズムを刻んでいた。「開けろ」彼は乾いた声で言った。冷酷で、慈悲のかけらもなかった。私の手が伸び、表紙を開いた。1ページ目に印刷された文字が、物理的な衝撃となって私の意識を殴りつけた。国際ダイヤモンドキャンペーン:永遠の氷 ブランドアンバサダー:ヘレナ CEO兼承認者:フレデリック・リアム・スミス心臓が鼓動を止めた。一瞬の、耐えがたいほどの空白ののち、閉じ込められた野獣が我が物顔で肋骨を叩き始めた。たちまち、空気はグリースと埃、そして息が詰まるような怒りの匂いで重くなった。「アンソニー……」私の声はかすれ、半ば壊れていた。「これって……冗談よね?」ミシンがピタリと止まった。アンソニーは木の椅子ごと向きを変え、私をじっと見据えた。彼の顔は石のように冷たく、温かみのかけらもなかった。彼は目を細め、棺桶を用意する検死官のように正確に私を値踏みした。「誰が冗談だと言った?」彼は冷たく問い返した。「スミス・ジョーンズよ! フレデリックよ!」私はファイルに手を伸ばし、激しく震える手を両脇で固く握りしめた。「あいつがどんな怪物か、よく知ってるくせに! あいつが私に何をしたか知ってるくせに! それなのに今度は……あいつのダイヤモンドの顔になれって言うの?! あのクソみたいな一族のダイヤモンドに?!」「