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5.藤宮瑠理香登場

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-11-01 08:19:13

 小者だ…。

 俺が血の上での父親に初めて会って思った感想。

 藤宮瑠理香ももう支援してないんじゃないかな?ますますもって長井商事は長く持たなそうだ。

 書類の盗難をしておいて寿命が短すぎる。

 実力もないのに、この世界(社のトップが集まる世界)に足を踏み入れるからだなぁ。

 あの書類、一部は藤宮瑠理香も利用してそうだな。あっちはうまく利用してそうだ。藤宮コーポレーションじゃあの書類の企業とうまく付き合っているみたいだな。

「あら、柊商事の息子さん?今はCEOでしたっけ?」

 心で思ってただけなのに本人登場。藤宮瑠理香。

「はいそうですよ。藤宮るり子さんでしたっけ?ちょっと物覚えが悪くって…」

 嘘。ワザとに間違えてあげました。ちょっとしたミスなのに、顔を赤くしてまあまあプライドがお高い。エベレスト級じゃないか?

「藤宮···ですよ。覚えて下さいね。えーっと柊ジョージさんでしたよね?逆に私は顔と名前を一致させるのが得意なんです」

 いや、自慢されても……。営業の仕事をしてる人は皆そうだと思う。

「何か御用で?」

「お母様は健在かしら?」

 ああ、そんなにストーカーみたいにライバル視しなくてもいいのに。

「僕にCEOを譲ってさっさと悠々自適な生活してますよ。いい気なもんですよね」

「あらあら、そんなに早くに引退なさったの?ご病気ではないかと心配したのよ?」

 そうですね。確か藤宮瑠理香の名前で嫌味にも仏花がたくさん届きましたね。

「祖母もそうですし、我が家の伝統みたいなものではないですか?」

「ところで、あなたのお父様は?」

 そこにいる男なんだけど……。

「聞いていませんよ。母が女手一つで育ててくれましたから。ああ、祖母も手伝ってくれましたけどね」

「……そうなの。まあ、いいわ。お母様によろしくね」

 そう言われても、なかなか会わないんだよな。年に数回?

 さて、こんなくだらないパーティーから帰って書類でも片付けよう。

「お帰りをお待ちしたおりました。必ずや今日のうちにお戻りになると思っていたので」

 この有能な秘書は一条朔夜さくや。名前の通りに暗い。しかし、有能。母の代からこの会社の秘書をしている。

「書類は待ってはくれません。さあ、どんどん片付けて下さい」

 容赦がない。

「ん?これ……誰だ?この支出をしたのは。こんなバカげた支出あるか?交際費30万?どんな交際したんだよ。接待?うちは接待される側だろう?どっちかというと。この数字を出した奴、明日の朝イチで直々に尋問だな」

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    「この支出はなんだ?30万も交際費で落とせると思ったのか?横領か?」「交際費です」「いつ、どこに、誰と?正式に領収書があるんだろうな?」「あ、領収書の写真をスマホで撮ってあるので、自分のスマホを取ってきます!」「朔夜、後をつけろ。尾行だ。あいつはこのまま社からも出かねない」「御意」 朔夜に尾行させて、俺は一息ついた。全く、犯罪を犯すならツメが甘すぎる。 朔夜から連絡が入った。横領疑惑の男が藤宮コーポレーションに入ったとのことだ。 どうすっかなー。30万の横領くらいじゃ藤宮はなんともないだろう。朔夜には帰ってきてもらおう。 藤宮は逆にうちに路頭に迷ってほしいんだよな。ってことは、30万を隠れ蓑にして億単位で金が動いている可能性も無きにしも非ずだ。 俺、自らが我が社の金を検査しよう。 その日は徹夜となった。横領の男が証拠をバッチリと残しているわけではないが、確かに社の金勘定が甘く少し(数万円)ずつ、何年にもわたって減っていた。塵ツモというやつか?何千万という金を抜き取っていたようだ。 俺がCEOになってからは額が増量している。俺は舐められたのか?腹立たしい。しかし数百万は俺がCEOになってからの被害だな。はぁ。 横領の男は毎月給料とは別に社の金をポケットに入れてたわけだな。うん。これはかなり大きな犯罪として警察沙汰にする。 藤宮が方法などを指南したのだろう。そっちもなんとかしたいのだが、この程度の犯罪ならば金で解決されてしまうだろう。 とにかく警察沙汰だね。 30万の横領で足がついた男はアッサリと警察に捕まった。 犯行の動機は「側に大金があったので、ちょっとくらいいいかなぁ?というのが常態化してしまった」である。 突然30万円使った理由は、「ローンを返さないといけなかったので、まとまった金が必要だった」である。 それまで毎月貯めていれば問題なかったのに、見栄を張って自分の給料と家族には言っていたようだ。しかしながら、それも終わり。警察にお世話になった人とは離婚をすると言って奥さんとは離婚をすることになったようだ。自業自得。お子さんも奥さんと生活をするようで、年に1回面会できるかな?くらいになった。 もちろん退職金なく、クビ。 男は藤宮との関係も警察に話したようだが、藤宮は警察とこの件について金で解決しているので、男の供述は特に

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     大国の大企業の副CEO……。なんか強そうだ。 俺も先祖代々の会社のCEOだけど、日本みたいなちっちゃい国のだしな。  老害たちは顔を真っ赤にして彼女のところから蜘蛛の子を散らすように去って行った。まぁ、英会話できないし…あ、必要ないのか。彼女、日本語が堪能みたいだし。「日本語はどこで習ったのですか?」「ああ、近所に日本人のハーフの友達がいて、その子かなぁ?」 国のレベルが違う。うちの近所……せいぜい方言を話す人がいるくらいだ。  あ、あれが‘長井商事’の社長か……。一応血の上での父親だけど、なんの感慨もないな。長井商事の社長も英会話ができないのか?恥ずかしいな。社の中にはいるだろうに。 着てるスーツも既製品のような気がする。ちなみに俺はフルオーダー。 英会話も出来ないのに、彼女の会社と契約を目論んでいたのか?愚かだ。このパーティーのホストも長井商事だし。全く、俺のところに挨拶に来もしない。マナーもなってないな。よくこの20年間会社が生きていたよ。 母さんの慈悲で潰されなかったんだろうな。母さんが本気を出せば、長井商事なんかぷちっと潰れるからなぁ。秒殺だ。 やっと挨拶に来たよ……。はぁ。うちの方が大きい企業だし、さっさと挨拶に来るのがマナーじゃないのか?少なくとも俺なら、大きくて影響力がある順に挨拶するね。舐められてる?「初めまして、長井商事の長井優と申します」「初めまして。柊商事の柊ジョージです」 俺は聞き逃さなかった。『あの女、俺に隠れてコソコソ浮気してたのか?慰謝料も巻き上げれば良かった』 不本意ながら、俺はあんたの子だよ。「今日のパーティーは長井商事さんがホストをしているものだとか?先ほどは騒がしくしてしまって申し訳ありません」 ま、あんたが英会話も出来ないのにVIPで彼女を招待したのが原因だけど?「いやいや、柊商事さんがうまく立ち回ってくださったおかげで上手く収まりましたよ。はははっ」 笑い事じゃねーよ。「ところで、柊商事のCEOさんはどこかのハーフでいらっしゃる?」「いえいえ、純日本人ですよ。先ほどの英会話でしたら、まあこれからの会社のトップならば当たり前のことですね。英会話程度このグローバル社会地球上の半分近くが英会話ができますから。その次がフランス語だったかな?」「あ、貴方もしかして数年前に我が社でイ

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