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第616話

Author: 小春日和
浅井が冬城おばあさんに親しげに寄り添う様子を見て、岡田夫人はその場に立ったまま、いたたまれないような表情を浮かべていた。

ひとしきりの挨拶と世間話が交わされた後、冬城おばあさんはふと岡田夫人に目を向けて、問いかけた。「……どうしてまだそこに立っているの?」

「私……」

岡田夫人の顔が少し引きつる。だが冬城おばあさんは、それに構うことなく手をひらひらと振り、ややうんざりした口調で言った。「今日はもう帰りなさい。夕夏と話したいことがあるの」

「でも……」

まだ何か言いたげな様子の岡田夫人だったが、冬城おばあさんの態度は明らかだった。

その様子を見ていた浅井は、柔らかく微笑んで言った。「岡田夫人、どうやらおばあ様にまだお話になりたいことがあるようですね。私、先に失礼しましょうか」

だが、その申し出に冬城おばあさんは何も答えなかった。その沈黙を見てとった岡田夫人は、場の空気を敏感に察した。「いえ、私の方こそ家に用事があって。今日はこれで失礼するわ」

岡田夫人は気まずそうにその場を退いた。だが去り際、ちらりと浅井の指元を見て、視線を止めた。

あの指輪……記憶が確かなら、あれは冬
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