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第 217 話

Author: スイカのキノコ
「お兄さんにありがとうと伝えてください」真依はにこやかに微笑んだ。

「これは雅兄からの贈り物です。いつも身につけていてください。無事を祈るものですから」浅里は四角い木箱を真依に手渡した。

真依は再び礼を言った。

なるほど、いつの間にか、彼女にも自分だけの交友関係ができていたのだ。

過去三年、彼女は尚吾の周りを回るしかなかったが、今や尚吾は彼女にとって唯一の存在ではなくなっていた。

怜は浅里の襟首を掴んで後ろに引き寄せ、一歩前に出て、心配そうに尋ねた。「何があったんですか?大丈夫ですか?」

「はい。まあ、事態がややこしくて説明しづらいですね」真依は言った。

「こういう話はよく聞きますよ。雲中市に
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