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第 313 話

Author: スイカのキノコ
真依は卒業後すぐに結婚し、今また離婚しているため、恩師の言葉にどう答えるべきか悩んだ。

「どこにも行っていません。紗月とスタジオを開いて、裏方でデザイン画を描いたり、技術を学んだりしていました」真依は静かに答えた。

恩師は満足そうな顔で頷いた。

続々と同級生たちが集まり、遠方にいた紗月も駆けつけて参加した。

紗月は真依の隣に座るなり、隣のテーブルを見るように真依に合図した。

真依は恩師に話しかけられていて、隣のテーブルにすでに人が座っていることに気づいていなかった。

真依が振り返ると、尚吾が見えた。テーブルには他にも彼女の知らない人々が大勢座っており、皆スーツを着こなし、いかにもエリートといっ
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