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第4話

Autor: べつに
翔吾がいいねを押していた。

和子もコメントを残している。

【直也、上手にできたわね。珠希ちゃんもお疲れさま】

しばらく画面を見つめてから、私はスマホを伏せた。

午後になると和子がやって来て、その後ろには、珠希と直也もいた。

家に入るなり、直也が興奮した様子で声を上げる。

「おばあちゃん、珠希姉ちゃんが作ったおうち、先生に褒められたんだよ!」

「あら、すごいじゃない。珠希ちゃんは本当に器用ねえ」

満面の笑みを浮かべていた和子だったが、ソファに座っている私に気づくと、少しだけその笑顔が薄れた。

「清佳、あまり言いたくないけど、親子行事なんて大事なものに、どうして珠希ちゃんを行かせたの?珠希ちゃんだって迷惑でしょうに」

「直也から聞いてないんですか?橘さんと行きたいって言ったのは直也ですよ」

和子は言葉に詰まったようだったが、すぐに眉をひそめる。

「子どもなんて、自分によくしてくれる人になつくものよ。あなたも少しは自分のことを振り返ったほうがいいんじゃない?」

ちょうどそのとき、翔吾が帰ってきた。

玄関に入ってきた翔吾から、珠希がごく自然に上着を受け取る。

「社長、今日の直也くん、幼稚園ですごく頑張ってましたよ」

「そうか。今日はありがとう」珠希を見る翔吾の表情は穏やかだった。

すると、ソファに座っていた和子がふと思いついたように口を開いた。

「翔吾、珠希ちゃんは最近あちこち行ったり来たりで大変でしょ?それに、今借りてる部屋も、もうすぐ契約が切れるんじゃなかった?だったら何日か、うちに泊まってもらったらどう?」

私は顔を上げた。

しかし、翔吾は靴を脱ぐ手を止めたものの、すぐには断らない。

その一方で、直也は嬉しそうにカーペットの上で飛び跳ねた。

「本当?珠希姉ちゃん、うちに泊まるの?」

珠希のそばまで駆け寄り、その腕に抱きつく。

「やった!毎日、珠希姉ちゃんに絵本読んでもらえる!」

はしゃぐ直也を見て、翔吾の表情も和らいだ。

「清佳。珠希には、とりあえず何日かうちに泊まってもらわないか?」

「それ、私に相談してるの?」

「相談じゃなきゃ何なんだよ」

翔吾は眉をひそめ、苛立ちを隠そうともせずに続ける。

「清佳、最近どうしたんだよ?みんなにいじめられてるみたいな顔するの、やめてくれないか?」

和子もすぐに口を挟んだ。

「そうよ。あなたは毎日家にいるんだし、一人増えたら家のことだって手伝ってもらえるでしょ?なのに、何がそんなに不満なの?」

すると珠希の目がみるみる赤くなった。

「清佳さんが本当に嫌なら、私、泊まりません。私のせいで清佳さんと社長が喧嘩するなんて……本当にすみません」

翔吾はすぐに珠希を見た。「君のせいじゃない」

そして私に向き直り、責めるように言う。「ほら。君がそんな言い方するから、珠希が気にしてるだろ」

そんな言い方って、どんな言い方?

ふと、直也の誕生日を思い出した。

10品も料理を作って、その中で唯一、自分のために作ったネギ入りの一皿。

けれど、それを見た直也は、「珠希姉ちゃんはネギが嫌い」と言い、翔吾は私に作り直せと言った。

私が黙っているのを了承したと思ったのか、翔吾の口調が少しだけ穏やかになる。

「じゃあ、そういうことでいいな。明日、運転手に珠希の荷物を運ばせるから」

直也が嬉しそうに手を叩いた。

「珠希姉ちゃん、僕の部屋の隣に泊まって!僕のナイトライトも貸してあげる!」

和子も微笑ましそうに笑みを浮かべる。「それがいいわ。家族みんなで賑やかなほうが楽しいものね」

家族みんなで。

その言葉を聞いて、私は小さく笑って立ち上がった。

翔吾がこちらを見る。「どこ行くんだ?」

私は答えず、そのまま寝室へ向かった。

引き出しの一番下には、今日の午後に印刷しておいた離婚協議書と私の部分はすでに記入してある離婚届が入っている。

それを手に取っている間も、リビングからは直也の弾んだ声が聞こえていた。

直也が珠希に好きなカーテンの色を尋ねれば、和子もゲストルームのシーツが地味だからピンクに替えたほうがいいと言っている。

そして翔吾は、低い声で答えた。「珠希が過ごしやすければ、何でもいいよ」

私がリビングに戻ると、翔吾がうんざりしたように顔を上げる。

「清佳、今度は何だよ」

私は彼を見つめ、静かに言った。「別に何もしないよ。橘さんがこれからどこに住もうと好きにすればいい。ゲストルームでも、寝室でも。どうせ今日から、私には関係ないから」

そう言って、私は書類を翔吾の前へ差し出す。

翔吾は何気なくテーブルへ目を落とした。そして、そこに印刷された「離婚協議書」と「離婚届」の文字を目にした瞬間、その表情が固まったのだった。

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