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167.久しぶりの幼なじみ

last update publish date: 2026-10-21 05:10:46

 新年最初の営業は、穏やかな空気のまま終わりの時間を迎えた。

 すっかり日の落ちた外の通りでは、身を切るような冷たい冬の風が吹き荒れている。

 閉店後のフルリールでは、通りに面したブラインドが半分下ろされ、オレンジ色の温かな照明だけが店内を静かに照らし出していた。

「梓さん、雄之助くん。今日はお疲れ様でした。あとは僕たちでやっておきますから、お二人はもう上がってください」

「えっ、でもまだ片付けが……」

「病み上がりなんですから、無理は禁物ですよ。ぶり返したら大変です」

 理聖が優しく、しかし有無を言わさぬ笑顔で促すと、まだ少し顔色の悪い梓と雄之助は、申し訳なさそうにしながらも大人しく二階の部屋へと向かっていった。

 店に残ったのは、和花と理聖の二人だけ。

 表の看板を『CLOSE』にひっくり返し、二人は手分けして最後の片付けに取り掛かった。

 散らばった葉を掃き、鉢植えの配置を整え、花瓶の水を替える。

 理聖はバックヤードと二階のストックルームを行き来しながら、少し重い資材や空いた段ボール箱をテキパキと運んでいる。

「和花さん。こちらの重い荷物は僕が二階へ運んでおきますから、レジの
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     深夜のオフィス街は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。 等間隔に並ぶ街灯の冷たい光だけが、人気のない無機質なアスファルトを照らし出している。 君代の運転するセダンは、綺麗に整備された中規模のオフィスビルの少し手前で、音もなく滑らかに停車した。「……ここよ」 ハンドルから手を離し、君代が窓の外へ視線を向けながら静かに告げた。 理聖は助手席に座ったまま、窓ガラス越しにその建物をじっと観察した。 ガラス張りのエントランス。整然と並んだ窓。どこからどう見ても、ごく普通のクリーンな一般企業にしか見えない。 本当に、こんな場所に暴力団が潜んでいて、若い女性を攫い込んでいるのだろうか。 外観だけなら、到底そんな恐ろしい噂の出所になるとは思えなかった。 ここに和花がいるという確証はどこにもない。 君代が近所で耳にしたという、単なる根も葉もない噂話に過ぎない可能性も十分にある。 それでも今の理聖にとっては、暗闇の中に垂らされた唯一の蜘蛛の糸だった。 どんなに僅かな可能性でも、今はそれに縋るしかない。「ありがとうございます。ここで結構です」 理聖がシートベルトを外し、ドアノブに手をかけた時だった。「待って」 君代が、ひどく不安そうな顔で理聖の腕に軽く触れた。「私も、一緒に行った方がいいんじゃないかしら。もし本当に怖い人たちがいたら、あなた一人じゃ……」 純粋に理聖を案じる、心優しい常連客としての申し出。 しかし理聖は、即座にそれを制止した。「いいえ。五十嵐さんは、このまま真っ直ぐご自宅へ帰ってください」「でも……」「ここまで連れてきていただいただけで、十分すぎるほどです。ただでさえ物騒な噂がある場所に、これ以上五十嵐さんを危険に巻き込むわけにはいきません」 理聖は、助手席から君代へ向けて深く頭を下げた。「本当に、ありがとうございました」 その真摯な言葉と眼差しを受け、君代はしばらく躊躇うような素振りを見せた。 やがて、小さくため息をつき、祈るように両手を握り合わせる。「……わかったわ。でも、絶対に無茶だけはしないでね。危ないと思ったら、すぐに警察を呼ぶのよ」「はい」 理聖は短く答え、車を降りた。 バタン、とドアが閉まる。 君代は運転席の窓から、冷たい夜風の中を歩き出す理聖の背中を静かに見送った。 真っ直ぐにビルへ

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