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206.父の事故の真相②

last update Last Updated: 2025-09-27 19:57:23

華side

「……まさか、トラックは命を狙ってわざと事故をおこしたというの?」

三上は、冷酷な笑みを浮かべた。その瞳は、神宮寺家に対する根深い憎悪を宿していた。

「そうだ。そして命を狙われていたのは僕の父じゃない。華、君のお母さんだ。」

「私のお母さん……?でも、父は、母は私が幼い頃に病気で亡くなったって」

「その方が都合が良かったからそう説明したのだろう。君のお母さんも、君と同じように過去に命を狙われたんだ。そして犠牲になった。」

これまで信じて疑わなかったことが、音を立てて崩れていく。母は、私が幼い頃に闘病の末亡くなったと聞いている。小さかった私は、それ以上聞いておらず、詳しい病名も知らなかった。

「事故があった日、君のお母さんの隣に父は座っていた。そして、トラックが後部座席にぶつかって二人は命を落としたんだ。その時の運転手は、花村さんだよ。花村さんは運転席にいたから奇跡的に助かったんだ。」

「花村が―――――?」

花村は、物心ついた時から私専属の運転手をしてくれている。いつも、実の娘に向けるような温かい眼差しで見守ってくれ、玲に居場所が見つかり長野の別荘に移る時も、七年ぶりに父と再会した時の運転手も花村だった。

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