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第3話

作者: 書舟
用事をすべて終えた頃には、すでに午後になっていた。タクシーを拾って帰ろうとしたその時、健人から電話がかかってきた。

「志乃、どうして家にいないんだ?今どこにいる?迎えに行くよ」

志乃は自分が国を離れることを彼に悟られたくなかったため、一番近いショッピングモールの場所を伝え、ただ買い物をしていると誤魔化した。

健人は大急ぎで駆けつけてくると、志乃を車に乗せて真っ直ぐホテルへと向かい、記念日の埋め合わせをしようと言い出した。

車を降りると、入り口に立てられたウェルカムボードに二人の名前が書かれているのが目に入った。

その下には「交際9周年記念日」という一文が添えられており、それはひときわ目を引いた。

健人も志乃の視線を追ってその致命的なミスに気づくと、一瞬にして顔色を変えた。

「きっとホテル側が手違いで年数を間違えたんだろう。志乃、怒らないでくれよ」

志乃は目を伏せ、何も言わずにそのまま中へと歩を進めた。

ホール内は豪華に飾り付けられており、大勢の招待客が集まって非常に賑わっていた。

今夜の主役である二人が登場したのを見ると、人々はこぞってグラスを掲げながら祝福に押し寄せ、その口調には羨望の色が滲んでいた。

「須藤社長、篠原さんとの交際9周年おめでとうございます!お二人の幸せな日々がこの先もずっと続き、末長く寄り添い合っていかれますように!」

「交際記念日のためにわざわざパーティーを開いて、これほど多くの人をお二人の幸せの証人になさるなんて、須藤社長と篠原さんは本当に相思相愛ですね!」

彼らのお世辞に対し、志乃は適当に愛想笑いを浮かべながら、会場内をぐるりと見回した。

9周年という年数のミスだけではない。テーブルに用意されたケーキは彼女がアレルギーを持つマンゴー味で、飾られた花束の花はどれもしおれかけていた。さらに会場のスタッフは動きが素人同然で、しきりに招待客にぶつかって粗相を繰り返している。

志乃はこのひどく乱雑で手抜きの会場を見つめながら、かつて健人が自分のために開いてくれた数々のパーティーを思い返した。

かつては、花の飾り付けや食事、お酒はもちろんのこと、スタッフのマナーから当日の進行に至るまで、すべて彼が自ら目を光らせてチェックし、一切の非の打ち所がないよう完璧に手配してくれていたのだ。

ほんの小規模な記念日ディナーにすぎないというのに、どうしてここまでひどい有様になるのだろうか?

また一人の招待客がスタッフに酒をこぼされるのを目にして、志乃はついに堪えきれず口を開いた。

「今回のパーティー、一体誰が手配したの?」

健人の秘書が少し身をかがめ、正直に答えた。

「社長のアシスタントである古賀華衣が企画いたしました」

その名前を聞いた瞬間、志乃の眼差しがスッと冷たくなった。

志乃の顔色が変わったのを見て、事態を察した健人が慌てて言い訳を挟んできた。

「華衣は俺が新しく雇ったアシスタントなんだ。こういうパーティーの企画は初めてだから、どうしても行き届かない部分があってね。志乃、どうか気にしないでやってくれ」

健人のように要求が厳しく、仕事に一切の妥協を許さない男であれば、部下がこれほどお粗末なミスを犯した場合、絶対に容赦なく厳罰に処するはずだ。

なのに今、彼はたった二言三言でこの失態をなきものにし、穏便に片付けようとしている。一体誰のためだと言うのだろうか?

志乃には、考えるまでもなく答えは分かっていた。彼女はそれ以上追及することをやめ、ドレスに着替えるため控室へと向かった。

だが、テーブルに置かれたギフトボックスを開けた瞬間、志乃はその場で凍りついた。中に入っていたのは、古びてボロボロになった安物のドレスだったのだ。

ここへ向かう車中、健人は確かにこう言っていた。今夜のパーティーのためのドレスとジュエリーはすべて用意してある、お前が一番好きなデザインだ、と。

だとしたら、目の前にある、まるで中古市場で安く買ってきたような、お粗末な古着は何なのだろうか。

志乃は着替えることなくホールへと戻り、そこで真っ先に華衣の姿を見つけた。

華衣は無数のパールがあしらわれたオートクチュールのドレスに身を包み、身につけたフルセットのダイヤモンドのジュエリーがシャンデリアの光を浴びてまばゆい輝きを放ち、会場中の視線を一身に集めていた。

華衣はドレスの裾をつまんで健人の目の前でくるくると回りながら、甘ったるい猫撫で声を出した。

「社長、私、綺麗ですか?」

「ああ」

健人は口角を緩め、無意識に彼女へ口づけを落とそうと顔を近づけた。だが、ふと顔を上げた拍子に、少し離れた場所に佇む志乃の姿が目に入る。彼はハッとして、突き動かされるように慌てて体をのけぞらせた。その声には明らかな動揺が滲んでいた。

「志乃、どうしてドレスに着替えてないんだ?……ああ、紹介するよ。彼女は俺のアシスタントの古賀華衣だ」

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