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第8話

作者: 書舟
数分後、華衣から挑発するようなメッセージが立て続けに送られてきた。

【志乃さん、そういえば言い忘れてたけど、今日は私の誕生日なんだよね。だから健人がオークションに連れて行ってくれた。

私が気に入ったジュエリーは全部彼が競り落としてくれたし、これからの数日はお祝いに南の島のリゾートへバカンスに連れて行ってくれるの。私の24歳の誕生日は最高にハッピー。志乃さんも楽しく過ごしてね】

添えられた画像には、助手席に座り、手に入れたばかりのジュエリーを掲げて自撮りする彼女の姿が写っていた。

志乃は静かにそのメッセージを読み終えると、スーツケースを取り出して荷物をまとめ始めた。

必要なもの以外――日用品、着なくなった服やバッグ、使わない細々とした雑物は、すべて容赦なく捨てた。

それだけでなく、この数年間で健人から贈られたプレゼントも、何一つ残さずゴミ箱へと放り込んだ。

彼女は3、4日かけて、家の中から自分という存在の痕跡をすべて消し去った。

その間も、華衣からは旅行中の親密な写真や動画がひっきりなしに送られてきた。

だが、志乃は一切気にかけることなく、ただの1通も返信しなかった。

そして健人が帰宅した日。半分以上もガランと空っぽになった邸宅の中を見て、彼はその場で呆然と立ち尽くした。

「志乃、家の中のものがどうしてこんなに減っているんだ?」

志乃はひどく平然とした顔で答えた。「2、3日前にゴキブリが出たの。だから、かじられないように業者に頼んで全部片付けてもらっただけよ」

健人は訝しげに辺りを見回したが、片付けられているのはどうやら彼女の荷物だけのようで、不審そうに眉をひそめた。

彼が詳しく問いただそうとしたその時、突然ドアを開けて華衣が入ってきて、彼の思考を遮った。

「社長、本日中に決裁していただきたい書類です。ご確認をお願いします」

ここ最近、健人には確かに山のような仕事が溜まっていた。

彼は頷くと、その書類の束を受け取り、書斎へと戻っていった。

彼らがこの後、本当に仕事の話をするのか、それとも別のことをするのか――志乃にはもう、どうでもよかった。

彼女は一人バルコニーへ向かうと、数年来飼っている愛猫を見つめ、最後のご飯を与えた。

世話をしていると、不意に背後から足音が近づいてくるのが聞こえた。

振り返ると、そこにはこちらへ歩いてくる華衣の姿があった。志乃は顔色一つ変えず、こっそりとスマホの録音アプリを起動した。

「時々、本当にあなたのこと感心しちゃうわ。愛する男の心がとっくに別の女に移っているのに、何も知らないフリを続けられるなんて。あなたって、そんなに我慢強いの?

健人が今愛しているのは私だっていう決定的な証拠をあれだけ送ってあげたのに、まだ諦めて席を譲ろうとしないのね。彼は8年経ってもあなたにプロポーズしなかったのに、私はたった3ヶ月で彼を骨抜きにしてみせたわ。まだ私に勝てるって本気で思ってるの?」

志乃には、彼女がわざと挑発しに来たのだと分かっていた。

だから、華衣が何を言おうと一言も言い返さなかった。

だが、その沈黙は華衣にとって、音のない強烈な侮蔑に他ならなかった。

だからこそ、華衣はまくし立てるうちにどんどん苛立ちを募らせ、最後には逆ギレするように顔を真っ赤にして怒りを露わにした。

「そうやって都合よく耳が聞こえないフリをするのがそんなに好きなの?じゃあ教えてあげる。記念日のあの日、健人が絶対に私を助けてくれるって分かっていたから、わざと人を雇ってシャンデリアに細工をさせたのよ!

あなたは運良く死なずに済んだみたいだけど、覚えておきなさい。1回運が良かったからって、次も同じように助かると思わないことね。あなたが手を引かない限り、私は絶対にあなたを許さないから!」

それを聞いた志乃はようやく顔を上げて華衣をちらりと一瞥した。その瞳には、何とも言えない複雑な色が浮かんでいた。

「……それで?今日はまた、どんな手を使って私を陥れるつもり?」

華衣は勝ち誇ったように首を横に振ると、バルコニーの端へ歩み寄り、お昼寝中だった猫を抱き上げ、その首を力任せにきつく絞め上げた。

そのおぞましい行動を目の当たりにして、志乃は心臓が止まりそうになり、悲痛な鳴き声を上げる猫を救い出そうと、思わず駆け寄って彼女の手を引き剥がそうとした。

だが華衣は口角を吊り上げて笑うと、志乃の体を冷酷に突き飛ばし、そのまま3階のバルコニーから猫を投げ落とした。

その光景を見た瞬間、志乃はもう冷静でなどいられなかった。

カッと頭に血が上り、志乃は手を振り上げ、華衣の頬を渾身の力で張り飛ばしていた。

叩かれた華衣の頬はみるみる赤く腫れ上がったが、彼女は怒るどころか狂ったように笑い出した。その目には、計画が思い通りに運んだことへの痛快さが満ち溢れていた。

「さっき、今日は何をしに来たのかって聞いたわよね?今すぐ教えてあげる。私、これからこのバルコニーから飛び降りるつもりなの……ねえ、健人は『あなたが私を殺そうとした』って信じ込んでくれるかしらね?」

そう言い残すと、彼女は志乃に向けて軽蔑しきった笑みを向け、一切の躊躇なく、自らバルコニーから身を投げた。

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