All Chapters of 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた: Chapter 1021 - Chapter 1023

1023 Chapters

第1021話

和夫なんて、父親と呼べるのだろうか?人間として最低だ!自分を何様だと思ってるのか。とわこが出ていったあと、和夫は眉をひそめながら、一口酒を飲んだ。もしかして、要求しすぎたか?でも一年で480億円って、そんなに多いか?奏の年間収入からすれば、ほんの端金に過ぎないだろう!レストランを出ると、とわこの胸はさらにモヤモヤと重くなっていた。すべてが白日の下に晒された今、和夫の要求に応じられなければ、次はきっと奏を狙うだろう。あのクソジジイ、好きなだけ奏にぶつかってみればいい!ただ、奏はきっと苦しむ。きっと。車を運転して帰路に着く途中、とわこはBluetoothイヤホンをつけて、奏に電話をかけようとした。彼の声が、どうしても聞きたかった。スマホを開いた瞬間、三浦からのメッセージが目に飛び込んできた。蓮くんとレラちゃんが喧嘩した。結構深刻だわ。用事が終わったらすぐ帰ってきて。読み終えると同時に、頭がクラクラした。彼女はスマホを置き、イヤホンを外して、急いで館山エリアの自宅へと車を飛ばした。館山エリアの別荘、リビング。レラは収納ボックスを抱えたまま、床にしゃがみ込んでいた。どんよりした表情で、静かに涙を拭っている。三浦は二階の子ども部屋の前で蓮をなだめていたが、まったく反応はない。幸い、蒼はおとなしく、泣いたり騒いだりすることもなく、ベビーベッドでおやつを食べながらおもちゃで遊んでいた。ほどなくしてとわこが帰ってきた。靴を履き替える暇もなく、勢いよくリビングへと駆け込む。娘のしょんぼりと落ち込んだ様子を見て、とわこはすぐにレラを抱き上げた。「どうしたの?どうしてお兄ちゃんと喧嘩したの?」そう言いながら、とわこは収納ボックスの中の書き取り帳に気づいた。「もしかしてこの練習帳のせい?」「うん、お兄ちゃん、パパがくれたプレゼントが気に入らなかったみたい。箱を足で蹴ったの。だから私が『それはよくない』って言ったら、怒鳴って出てけって」レラは伏し目がちで、長いまつげに涙が光っていた。娘の切ない声を聞きながら、とわこの頭には、息子が怒りに震える姿が浮かんでいた。「わかったわ、ママが今すぐお兄ちゃんと話してくる。あなたはここで待ってて。もう泣かないで。お腹が空いたら何か食べてて。ママ、すぐ戻るから」そ
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第1022話

これがとわこにとって、息子との初めての真正面からの衝突だった。実のところ、その言葉を言い終えた直後から、彼女は後悔していた。たしかに、息子はもう三歳の幼子ではない。けれど、まだ十歳にも満たないたった一人の子どもなのだ。しかもどんなに大きくなっても、子どもにとって母親は、いつでも「自分を無条件で受け入れてくれる存在」であってほしいものだ。思い返せば、美香が亡くなる前、彼女自身も母に甘えていた。なぜ自分は、和夫から受けたストレスを、そのまま家に持ち帰ってしまったのか。なぜその怒りを、息子にぶつけてしまったのか。とわこが蓮を追おうとしたその時、彼はすでに別荘を出ていっていた。階下へ駆け下りると、リビングは混乱していた。「レラちゃん、泣かないで。もうボディーガードに連絡したから。すぐに見つかるからね」三浦は蒼を抱きかかえながら、涙にくれるレラをあやしていた。とわこの胸は張り裂けそうだった。家に残った子どもをなだめるか、それとも外に出た息子を追うか、どちらを優先するべきか、彼女は一瞬迷った。そのとき、レラが彼女の元に来て、ぎゅっと抱きついてきた。「ママ、お兄ちゃんのこと、怒ったの?」喉が詰まって、言葉が出なかった。「たぶんね。ママ、今日はちょっと気持ちが不安定で、つい言いすぎちゃったかも」「ううん、イヤだよ、ママ。お兄ちゃん、どこか行っちゃうの、イヤだ!ママ、一緒に探しに行こう?」レラが涙を拭いながら、とわこの手を引っ張って外へ向かおうとしたそのとき、ボディーガードから電話がかかってきた。電話は三浦宛だった。三浦は電話に出て「はい、はい」と二度うなずき、電話を切った。「とわこ、大丈夫。ボディーガードの方が蓮くんの後をつけてる。危険はないそうよ。しばらく外で気持ちを落ち着けたら、すぐに連れて帰ってくれるって」とわこはうなずいた。「私、さっきあの子にひどいこと言っちゃった」「自分を責めなくていいよ」三浦は落ち着いた声で言った。「どれだけ厳しくしたって知れてる。今回は、蓮くんがちょっと感情的になりすぎたのかもね」彼女の目が少し鋭くなった。「たぶん、蓮くんには、あの練習帳が『お前は字が下手だ』っていう嫌味に聞こえたんでしょ。父と息子の関係って、母娘とはまた違うから」その言葉に、とわこはハッとした。奏があの
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第1023話

母と息子は、静かにベンチに並んで座っていた。およそ30分後、蓮がぽつりと口を開いた。「ママ、帰ろう」とわこは一瞬驚き、すぐに立ち上がって彼の小さな手をぎゅっと握った。今夜の衝突は、奏に関係していたが、彼はそのことをまだ知らない。とわこは三浦に、この出来事を彼には言わないよう頼んでいた。彼は結婚式の準備や和夫の件で既に疲れ切っている。だからこれ以上、余計な悩みを増やしたくなかったのだ。夜10時、彼女はシャワーを終えて寝室に戻った。しかし、広々としたベッドを見つめても、まったく眠気がこなかった。彼に会いたい。彼がそばにいる時は、日中あった出来事を話してくれたり、子供たちの教育について相談したり、ふたりで未来を思い描いたりもした。長い時間を共に過ごしているのに、まだまだ話したいことが尽きない。彼女はそっとため息をついた。今、彼は何をしているのだろう?少し迷った末、彼女は決心した。今、彼に会いに行こう。30分後、彼女は常盤家の別荘の門前に立っていた。「彼には知らせないで」門を開けてくれた警備員にそう頼むと、警備員はすぐに察した。これは、きっとサプライズなのだと。とわこはスムーズに別荘の中へ入った。千代は彼女の訪問に何も尋ねず、ただ静かに二階を指差した。「旦那様はまだ起きていらっしゃいます。おそらく、結婚式の準備をしているのでしょう」「うん。もう休んで。今夜はここに泊まる」とわこは少し頬を染めながらそう答えた。千代も思わず顔を赤らめ、何も言わずに立ち去った。二階、書斎。奏は眉間にわずかに皺を寄せながら、頭の中でとわことの思い出を辿っていた。長く美しい指が、キーボードの上をリズミカルに踊る。彼は、ふたりの結婚式で読む誓いの言葉を綴っていた。自分の分は既に書き終えていたが、今はとわこの誓いの言葉に取りかかっていた。彼女にも一度書いてもらったが、正直満足できるものではなかった。彼は理系出身ながら、自分の誓いはほぼ千文字に及んだ。対して、文系出身の彼女の文章は、やっとの思いで絞り出した百文字程度だった。式で読み上げるとなれば、どちらが気まずいのかも分からない。だからこそ、彼女の言葉をもう少し丁寧に書き直そうとしていた。この結婚式に、彼は全身全霊を注いでいる。なぜなら
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