All Chapters of 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた: Chapter 1031 - Chapter 1040

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第1031話

奏は困ったような顔を浮かべながら、周囲に向けて言った。「彼女はお酒に弱くてね。一口でも飲めば、すぐに酔っちゃう。で、酔うと暴れ出すんだ。口も悪くなるし、テーブルだってひっくり返す。それでも構わないなら、一杯、飲ませようか?」彼の話に合わせて、とわこはすぐさまワイングラスを手に取った。「ちょっ、ちょっと待て!それはやめよう」誰かが慌てて声を張り上げた。「せっかく久しぶりに集まったんだ。酒の席が台無しになったら意味がない、とわこさん、グラスを置いてくれ」しぶしぶながらも、とわこはグラスを置いた。そのとき、ウェイターが料理の乗ったトレイを運び入れてきて、間もなくテーブルいっぱいのご馳走が並べられた。とわこは空腹でたまらなかったので、すぐに笑顔で声をかけた。「みなさん、料理がそろいました!遠慮せずに食べてね」そう言うと、すぐさま箸を取り、肉料理を頬張った。普段から贅沢三昧の彼らは、肉料理など食べ飽きていた。だからこそ、肉ばかりを選ぶとわこの様子が目について不快感を抱いたのだった。とくに彼らの女性の同伴者たちは普段あまり肉を食べないのだ。「とわこ、そんなに肉を食べて、太るの、怖くないのか?」と、ある男性がイラ立ちを込めて声をかけてきた。とわこは笑顔のまま、こう返した。「奏がね、私のこと痩せすぎって言うの。だからお肉を食べると、彼が喜ぶのよ」「でも、俺から見たら別に痩せてないけどな。君の体型なんて、ごく普通......」「あなたは私の旦那じゃないから、どう思われようが関係ない」彼をまっすぐに見つめて、とわこはさらに続けた。「それに、私は人にあれこれ言うオヤジ臭い男が一番嫌い。私は礼儀ってものを重んじてるから、嫌いなことでも黙って我慢してたの。でもそっちが先に口出ししてきたから、私も言わせてもらっただけ」この言葉で、奏以外のテーブルの男たちは全員、完全に敵に回った。場の空気は一気に重くなった。奏はそれを察し、グラスを手に立ち上がる。このまま険悪ムードで料理を無駄にするのは本意じゃない。「とわこはまだ若いし、世間のことをよく知らない。皆さん、広い心で受け止めてやってくれ。この一杯、彼女に代わって俺から。どうか水に流してくれ」彼はそう言って、グラスの酒を一気に飲み干した。ようやく男たちは少し笑顔を見せ、食事が始まった
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第1032話

帰り道、運転手が尋ねた。「とわこさん、どちらへ向かいますか?」「家に帰るわ」とわこはお腹もいっぱいで、少し眠気を感じていた。彼女はスマホを開き、メッセージが来ていないか確認した。マイクからドローンで撮影した映像のスクリーンショットが数枚届いていた。マイク「今朝は最初の目標エリアを重点的に見回ったよ。全部で七軒、窓の外に赤い物を置いてる家があったけど、一軒一軒確認した結果、君の患者は見つからなかった。午後も続けて探す」とわこは、マイクの手際の良さに少し驚いた。とわこ「ありがとう。お疲れさま」マイク「やっと起きたの?昨夜、奏の家に泊まったって聞いたけど?今どこ?まだ奏の家にいるなら、俺もご飯ご馳走になりに行っていい?」とわこ「もうあの家にはいないわ。今朝、変な連中が来たのよ。だから私が追い出してやった」マイク「マジかよ!?そんなに怒ったの?相手、客だったんだろ?」とわこ「私の性格、まだ知らないの?あの人たちがまともじゃないって分かってたからよ。それに、結婚したら彼のことは家族のことでもある。彼がすごく嫌がることなら、私も変わる努力をする」マイク「まあ確かに、夫婦は家族だもんな。もし奏に何かあれば、間違いなく君にも影響あるしな。昨夜、蓮を叱ったって本当?」とわこの頬が少し赤くなった。「誰に聞いたの?」マイク「今朝、子どもたちが君がいないのを見て、ママは怒って出て行ったんだって思ったらしくてさ。それで昨夜の修羅場がバレた。でも子どもたちのことは心配いらないよ。三浦さんが朝、千代さんに電話してたから、みんな君が奏と二人っきりの時間を過ごしてるって知ってる」とわこ「言葉のチョイス、ちょっと用があって行っただけよ」マイク「あんな夜中に、どんな用があったんだよ?」とわこ「.......」マイク「あはははは」とわこはスマホをテーブルに置き、彼のことを無視することにした。しばらくして、マイクから電話がかかってきた。画面に表示された名前を見て、とわこは少しだけ躊躇ったが、結局出た。「とわこ、ゴールデンウィークはどう過ごすつもり?奏は付き合ってくれそう?」「それはまだ考えてないわ」毎日そこまで忙しくはないけれど、暇というわけでもない。子どもが三人もいれば、やろうと思えばいくらでもやることはある。「子
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第1033話

一時間後、運転手は空港で奏を迎えた。奏が車に乗り込むと、運転手が尋ねた。「社長、どちらへ向かいましょうか?」奏はこめかみを揉みながら少し考え、「会社へ行こう」と答えた。「かしこまりました」車が走り出してからしばらくすると、運転手はバックミラー越しに奏の表情を伺った。ちょうどその瞬間、奏の視線がミラー越しにぶつかった。「どうかしたか?」「いえ、実はとわこさんを家にお送りした時、彼女が電話で誰かと口論しておりまして」運転手は一瞬ためらったが、正直に話すことにした。「電話の相手が『社長がプロポーズしてない』とおっしゃり、それを聞いたとわこさんの顔が真っ赤になって、電話を切ってしまったんです」とわことマイクが口げんかをするのはいつものことだったが、運転手にとっては初めての光景だったため、深刻に受け止めていた。しかも彼の言葉が少々大げさだったせいで、奏はとわこが深く傷ついていると思い込んでしまった。誰かに『プロポーズされてない』なんて言われてとわこが怒るなら、ちょうどゴールデンウィークにプロポーズをすればいい。そう思いついた奏は、即座にプロポーズ計画を立て始めた。しかし彼には経験がなかったため、まずはみんなの意見を聞くことにした。彼はグループチャットを開いて、メッセージを送信した。奏「ゴールデンウィークにとわこにプロポーズしようと思ってる。何かいいアイデアはないか?」一郎「もう結婚日程決めてただろ?なんで今さらプロポーズなんてする必要があるんだ?」子遠「社長、ロマンチックな雰囲気を作りたいんじゃない?ゴールデンウィークにプロポーズして、6月1日に結婚、素敵ですね」裕之「瞳と旅行中に家族の協力でプロポーズしたよ。宿泊先の部屋を飾り付けて、可愛い照明とバラの花を並べて、ムードのある音楽を流して、最後に指輪を取り出して片膝ついて、感動で泣かせたぜ」奏「それ、ベタじゃないか?」一郎「ベタだな」子遠「ベタすぎる」裕之「でも瞳は本当に感動して泣いたんだぞ!?超感動したって言ってくれたし」奏「だからお前らは夫婦になったんだろう」一郎「ぷっ!」子遠「社長は外でプロポーズするつもりですか?それとも家の中で?」裕之「ふん、奏さんは特別なプロポーズを望んでるんだから、外に決まってるっしょ。家の中じゃ僕み
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第1034話

夕方。館山エリアの別荘。夕食の時間。マイクは、自分のゴールデンウィーク旅行計画を細かくとわこに話した。「それを私に言ってどうするの?私、一緒に行くわけじゃないし」とわこは淡々とした口調で言った。「一緒に行かないのは知ってるよ。でも話したのは、蓮を連れて行きたいから」マイクは説明した。「蓮が一緒でもいいかなって」とわこは蓮の方を見た。「あなた、一緒に行きたいの?ゴールデンウィーク、休みあるの?」蓮「もうマイクに行くって言ったよ」とわこ「......」マイクは得意げな顔で言った。「じゃあ異議なしってことで、蓮は俺と旅行だね。レラは涼太と出かけるって言ってたし。蒼も連れて行きたかったけど、三浦さんがダメって」とわこは箸と茶碗を置いて、皆をじろりと見渡した。「つまりどういうこと?私ひとり家に置いてけぼりってわけ?」「だって奏と二人きりの時間を過ごすんでしょ?」マイクがからかうように言った。「喜ぶべきじゃないの?」「言ってみただけよ。あの人と二人きりだなんて、そもそも、奏がゴールデンウィークに時間あるかも分からないし」とわこは、ひとり取り残される想像をして、少し寂しくなった。「じゃあ、彼にどこか連れてってって頼めばいいじゃん。結婚式まであと一ヶ月なんだし、ちょっと遊びに行くくらいいいでしょ」マイクは慰めるようにそう言った。「とにかく蓮のチケットはもう取ったよ。旅行中は毎日ビデオ通話するからさ」とわこはふんっと鼻を鳴らし、また茶碗と箸を手に取った。レラが甘えるように言った。「ママ、じゃあ一緒に涼太おじさんと旅行に行こうよ!涼太おじさん、私をダイビングに連れてってくれるって」「やめておくわ、ママは家でゆっくりしてる」とわこはそう言いながらも、後で奏にゴールデンウィークの予定を聞いてみようと考えた。その時、三浦がスープの入ったお椀を運んできた。「とわこ、マイクさんが蒼を海外に連れて行きたいって言ってたけど、私は反対したわ。蒼はまだ小さいし、免疫も弱いから。とわこが一緒に行かないなら、もし旅行先で病気になったら大変だからね」とわこはうなずいた。「うん。三浦さんはゴールデンウィーク、休み取る予定?私は特に予定もないし、子どもたちの面倒見られるよ」その言葉を聞いた瞬間、マイクが三浦さんに必死で目配せをした。
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第1035話

とわこは一瞬言葉を失った。「本当に行くの?」三浦はにこやかにうなずいた。「ええ。安心して。蒼のことはしっかり私が見てるわ。絶対に風邪ひかせたりしないから」「でもどうして急に気が変わったの?」とわこは違和感を覚えた。「あなたが蒼を連れて出かけたら、本当に家に私一人だけになっちゃうじゃない」「奏さんを呼べばいいじゃない。もうマイクさんとは話つけてあるのよ」そう言うと、三浦はそのまま立ち去った。とわこは自分の部屋に戻り、奏に電話をかけた。「奏、ゴールデンウィーク、何か予定あるの?」電話の向こうで、奏はまだその件を考えていなかったようで、少し気だるげに答えた。「ゴールデンウィークなんて、まだ先だろ?」「あと二日後よ。マイクは蓮と蒼を連れて旅行に行くって言ってるし、涼太もレラをダイビングに連れてくって。私だけ、まだ何も予定ないのよ」とわこは少し寂しげな声になった。「あなたもまだ何も考えてなかったなんてね。まさか、ゴールデンウィークも結婚式の準備で忙しくするつもり?」奏は答えず、逆に訊いた。「みんな出かけるのか?じゃあ、君ひとりだけ家に残るってことか?」「そうよ!その言い方、なんか哀れんでない?あなたも同じくひとりじゃない?」「どう過ごしたい?俺が付き合うよ」彼はくすっと低く笑った。「うーん。じゃあ、そのときになったら決めましょ。シャワー浴びたら、もうちょっとちゃんと考える」とわこは少し肩の力を抜いて、ぽつりと呟いた。「急に子どもたちが全員いなくなるなんて、なんか変な感じ」奏は何か慰めの言葉を探していた。「でも、めちゃくちゃ嬉しいかも!」とわこは続けて、「やっと子どもたちのこと気にせず、完全に自分だけの時間が過ごせるなんて最高」と言った。奏「......」その時、彼は急に尋ねた。「そうだ、とわこ。あの患者、黒介って男、彼の父親の名前って何だった?」その瞬間、とわこの笑みは消えた。「どうして急にそんなこと聞くの?」「君、彼の家族にあまり良くされていないって言ってただろ?それで会いたいって。なら、彼の家族の情報を俺に教えてくれれば、代わりに探してみるよ」奏は確かめたかったのだ。黒介が、かつて常盤家から連れ去られたあの子なのかどうか。もし違うのなら、それでいい。だが、もし本当に黒介だとしたら彼は何としても
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第1036話

「和夫の身辺に、黒介という男がいるかどうか、調べろ」その声は冷たく、感情の一片もなかった。「もし、いたら」その先の言葉が、喉で止まった。黒介は結菜の双子の兄だ。本来なら常盤家の若様として、たとえ父に愛されなくても、何不自由ない暮らしが約束されていたはずだった。奏は考えてしまう。自分は黒介の名前を奪い、家族を奪い、人生そのものを奪っておいて、今度は彼の存在さえも抹消しようとしている。それはあまりにも、非道ではないか?「社長、もしその男がいた場合、どうしましょう?」電話越しに護衛が問いかける。「ご指示を」奏はしばらく沈黙し、喉仏をごくりと鳴らした。そして冷ややかに言った。「この世界から、消せ」彼は知っている。自分はいずれ、必ず地獄に堕ちるだろう。ならば、この人生くらい、徹底的に自分本位でいい。神は不公平だった。配られた手札は最悪だった。情に流されていては、その劣勢の手札で勝てるはずがない。館山エリアの別荘。とわこはお風呂から出た後、どうにも胸がつかえて落ち着かなかった。確かに、彼女と奏はもうすぐ結婚する。周囲から見れば、何もかも順調で幸せそうに見えるだろう。けれど彼女にはわかる。彼は今でも誰にも屈しない、あの頑なな男のままだ。黒介という存在が、まるで二人の間に刺さった棘のように感じられる。血が出るほど痛むわけではない。けれど確実に、今の甘い関係に微細な変化を生むだろう。彼女は髪をドライヤーで乾かしたあと、鏡の前で大きく息を吐いた。まだ何も起きてないうちから、最悪の結果を想像して、自分を怖がらせても仕方ない。奏が結婚を決めたのなら、話せばきっと、もっと良い解決策が見つかるはず。そう考えると、彼女の中の重苦しさは少し和らいだ。ベッドに入り、スマホを開いて、ゴールデンウィークにどこへ行こうかと検索を始める。国内の人気観光地をいくつか見たが、どうにも興味が湧かない。どこへ行こうとも、間違いなく人混みでごった返すだろう。奏は人の多い場所を嫌う。もし彼をそういう場所に連れて行ったら、たとえ表面上は平気そうでも、内心は不機嫌になるに違いない。とわこは検索欄にこう打ち込んだ。「国内の穴場観光地」人の少ない場所の方が、きっと彼もリラックスできるし、景色なんて二の次、ただ二人で過ごせる時間が欲しいのだ。
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第1037話

常盤家。夜の0時15分。奏はシャワーを浴び終えて、バスルームから出てきた。今日は仕事が忙しく、とわこのところには行けなかった。夕方に少し酒を飲んだせいで、頭が少しぼんやりしているが、眠気はなかった。彼は、ゴールデンウィークにとわこにプロポーズしようと決めていた。だが、いまだに会場すら決まっていない。彼はロマンチックなことが得意ではなく、とわこもその点には特にこだわりがなかったため、つい準備を後回しにしてしまったのだった。彼はスマホを手に取り、アルバムを開く。「俺」という名前のフォルダをタップすると、そこには彼が設計した建築物の写真が並んでいた。プロポーズの場所を、自分が設計した建物の中にしたい。その方が、きっとロマンチックになるはずだと考えていた。翌日。ある不動産屋。和夫と長男の哲也が物件を見に来た。彼らは昨晩、それまで借りていた家から引っ越してきて、今はホテル暮らしをしている。だが、ホテル生活は長く続けられるものではない。しかも奏が渡したのはたったの2億だけ、その金額で満足できるような彼らではなかった。これは長期戦になると踏んだ父子は話し合い、一旦家を買って落ち着こうと決めたのだ。営業スタッフの若い女性が彼らを一目見るなり、にこやかに声をかけてきた。「広めのお部屋をお探しですか?ちょうど154平米の広いお部屋が一つだけ残っていますよ。南北に窓があって日当たりも良く、階数もちょうどいい12階なんです」「この広さのお部屋はもうこれが最後です。昨日も別のお客様が見に来られていましたが、いかがですか?一度ご覧になります?」「じゃあ、見せてもらおうか」和夫は早く住まいを決めてしまいたかった。女性が案内を終えて不動産屋に戻ると、もう一人の営業スタッフの男性が慌てた様子で駆け寄ってきた。「木村さん、さっきの154平米の部屋にご案内したんですか?あの部屋、昨日のお客様が契約するって言ってたんですけど」木村と呼ばれた女性スタッフは残念そうな顔をした。「でも、私のお客様もすごく気に入ってくださったんです」「先に案内したのは僕だから、当然僕のお客様に優先権があるでしょ」男性スタッフは強気に言い放った。木村は和夫たちの元に戻り、申し訳なさそうに言った。「和夫様、申し訳ありません。実はあのお部屋
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第1038話

和夫の顔は怒りで真っ赤に染まり、「お前の叔父こそ、俺の息子だ!」という言葉が喉元まで上がってきた。もう少しで叫んでしまうところだった。そのとき、哲也が肘で父親の脇腹を突いた。「常盤さん、父は短気なんで、これ以上言い合いしない方がいいよ。これ以上やると、手が出るかも。ケンカなら、父は相当強いから」哲也はあくまで善意で弥に忠告した。「信じられないなら、父親に聞いてみてください」弥の心はざわついた。今の彼には奏の後ろ盾がない。だから、外で誰かと揉め事を起こしても、守ってくれる人はいない。もし殴られても、自分で耐えるしかないのだ。弥は悔しそうに不動産屋を出ると、スマホを取り出して父親に電話をかけた。悟は息子がかつて常盤家で働いていた運転手に侮辱されたと知り、怒りで血が沸き立った。「そいつにそこにいろって伝えろ!今すぐ行ってやる」そう言い放つと、悟は電話を切った。弥は再び不動産屋に戻り、唇を噛みしめながら、和夫が目の前で自分の気に入った物件をカードで購入する姿を見ていた。契約が完了した直後、悟が現場に到着した。「父さん、あいつだ」弥は怒りを抑えきれず、和夫を指差して言った。「昨日、俺たちが気に入ってた部屋を、横取りして買いやがったんだ」悟の鋭い目が、和夫に向けられた。和夫は契約書を手に、得意げに言い放った。「悟、お前、まさか俺がこんな日を迎えるとは思ってなかったろ?」悟は彼を一目見て、すぐに思い出した。顔色が一気に変わる。「和夫か?一体どこからそんな金を手に入れた?銀行でも襲ったのか?」「はっはっはっはっ」和夫は笑い出した。「銀行強盗?それより今の俺の方が稼げるっての!もう別次元だ」悟は、彼のこの傲慢な態度に、胸が締め付けられるような苦しさを感じた。和夫なんて、かつては常盤家のただの運転手に過ぎなかった。月に数万円しか稼げないような男だったのに、今では堂々と自分の前で吠えている。これが時の運か?どんな強運を引き当てたら、こんな逆転劇が起こるんだ。悟が肩を落とし、黙り込んだ姿を見て、和夫の心は満たされていく。「悟、俺の記憶が正しければ、昔お前、俺を殴ったことがあったよな?」和夫は契約書を息子に渡すと、胸を張って悟の目の前に立った。「そうだ!蹴飛ばしてやったさ」悟は鋭く言い放つ。「お前がうちで
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第1039話

とわこはすぐさま和夫の番号を探し出し、発信した。「おかけになった電話は電源が入っていないか、電波の届かない場所にあるため、かかりません」スマホの画面を見つめたまま、とわこは茫然と立ち尽くした。画面には、驚きと困惑の表情を浮かべた彼女自身の顔が映っていた。和夫は黒介を連れて姿を消したの?まさか、日本を離れたんじゃ?もし、ただ身を潜めているだけなら厄介なことになる!あの狡猾で陰湿な性格の和夫のことだ。どこかで密かに、また何か悪巧みを仕掛けているかもしれない。レストラン。悟は和夫に何杯も酒を勧め、顔が赤くなってきた頃を見計らって、切り出した。「和夫、お前どうやってそんなに金持ちになったんだ?さっきうちの息子が電話で言ってたんだ。お前の息子は日本の有名人だって、だけど、俺は今まで一度も、お前や息子の話なんて聞いたことがないぞ」和夫は鼻で笑い、尊大な態度で言った。「それもそのはず。俺が帰国したの、まだほんの数日前だからな!息子が大物でなかったら、気軽に2億円も小遣いにくれるわけないだろうが」「お前の息子って、本当にそんなにスゴいのか?」悟はわざと羨ましげな表情で尋ねた。「ちゃんとした仕事してんのか?」挑発にまんまと乗せられた和夫は、胸を張って答えた。「当たり前だろうが!うちの息子は正真正銘、まっとうなビジネスマンだ」「そうか。それなら、俺も名前ぐらい聞いたことあるかもな」悟はお世辞を言いながら、さらに話を引き出そうとした。「もちろんだ!息子の名前なんて、日本じゃ誰もが知ってる」「名前は?」「そいつはな」和夫は口を開きかけたが、次の瞬間に我に返った。「これはうちのプライベートなことだ。教えるわけないだろ!でも覚えておけよ、今の俺はお前よりはるかに上だ。これからは和夫さんと呼べ」悟は鼻で笑った。「息子の名前も言えねえのに、そんな話信じるわけねぇだろ」「じゃあ聞くが、俺の2億円はどこから来たんだ?」和夫が胸を張って言う。「2億なんて大したことねぇよ。俺は20億持ってるぞ」悟が言い返す。「お前の息子、それぐらいあるのか」「はははは!バカ言ってんじゃねぇよ」和夫は笑いすぎて涙を流し、テーブルを叩いて言った。「20億?うちの息子にとっちゃ、そんなもん屁みたいなもんだ!はははっ!」悟のプライドは、地面に叩きつけられ
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第1040話

とわこが「誰にそんなことを言われたの?」とレラに問いただそうとしたその時、ちょうど涼太がやって来た。「ママ!涼太おじさん来たよ」レラはそう言うや否や、門の方へ駆け出していった。「レラ、ゆっくり!」とわこもすぐに大股で追いかけた。門の外に車がぴたりと止まる。涼太が車から降りてきて、とわこの前に立った。「とわこ、レラを連れていくよ。彼女が満足するまで遊ばせて、ちゃんと送り届けるから」涼太の視線は柔らかく、温もりに満ちていた。「いつも休みになると、あなたが子どもたちの面倒を見てくれて」とわこは少し心配そうに言った。「本当に、負担じゃないの?」「もしレラが付き合ってくれなかったら、俺の方が退屈で困るよ」そう言いながら、涼太はレラの小さな手を取った。「それじゃあ行くね。目的地に着いたら、また連絡するよ」「うん、気をつけてね」レラを見送ったあと、別荘はすっかり静まり返った。三人の子どもたちがいないため、使用人たちにも休暇を与えていた。今、屋敷に残っているのは一人のボディーガードだけ。とわこの安全を守るためだ。彼女は室内に戻ると、まずはキッチンで朝食後の食器を片付けた。その後、清掃用具室からお掃除ロボットを取り出し、スイッチを入れる。次に布巾と洗面器を持ち、洗面所で水を汲んで床拭きの準備をした。奏からはまだ連絡がない。彼はいつ来るのだろうか?そんなことを思っていると、突然スマホが鳴った。とわこは布巾と洗面器を置き、リビングへと駆け戻り、電話を取った。「とわこ、子どもたち出かけたんでしょ?じゃあ、買い物に行かない?」電話の向こうから、瞳の元気な声が聞こえた。「今日は裕之と遊びに行くんじゃなかったの?」「遊ぶのは夜よ!昼間はショッピングしたいの」瞳は楽しそうに言った。「今日は外で色んなイベントやってるのよ。今ヒマでしょ?」「ヒマだよ。奏、来てくれないし。今、掃除中だったの」とわこがため息まじりに答える。「マジか。よし、じゃあ今から迎えに行く!家で待ってて」瞳はそう言い放つと、電話を切った。とわこはスマホを置き、自分の姿を見下ろした。まだパジャマのままだ。眉間にシワを寄せながら思う。奏が来ないなら、瞳と出かけるのもアリよね。大股で部屋に戻り、クローゼットからロングスカートを取り出して着替
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