愛美は視線を逸らし、首を振った。「……考えてないよ」「どう見てもそうじゃなさそうだな」越人は彼女のことをよく分かっていた。普段は明るくおおらかに見えても、時々一つのことにこだわってしまうのだ。「お兄さんもお義姉さんも本当にいい人たちだよ。二人は一度も気にしたことないんだから、君もいつまでも引きずらないでくれ」越人は慰めるように言った。「俺たちは家族なんだ。いつも余計なことばかり考えないで」「分かってるよ。運転に集中して、気を散らさないで」愛美は言った。そのやり取りを後部座席で聞いていた双は、大きな瞳をぱちぱちさせ、不思議そうに首を傾げた。「叔母さん、越人おじさん。二人で何の話してるの?僕にはさっぱり分からないよ」愛美は思わず笑って、彼を抱き寄せた。「私にこんなに可愛い甥っ子がいるって話よ。それがどんなに嬉しいかって」双は彼女の胸に顔をうずめながら言った。「僕も叔母さんがいて幸せだよ。これからは、パパとママを大事にするのと同じくらい、叔母さんのことも大事にするんだ。だって叔母さんは僕のことを一番可愛がってくれるんだから」──あぁ。愛美の心は、その一言で一気に溶かされてしまいそうだった。彼女は双の頬を包み込むように持ち、おでこに何度もキスをした。「ちょっと、ほどほどにしてやれよ」越人が言った。双はくるりと彼を振り返り、得意げに言った。「叔母さんは僕のこと大好きなんだよ。越人おじさん、文句ある?」「……」越人は一瞬言葉を失った。「……俺のことを好きなんじゃなかったのか?」「誰がそんなこと言ったの?叔母さんが好きなのは僕だよ!」双はすぐに反論した。「そうか?本当?」越人は笑った。双は自信満々に答えた。「もちろん!信じられないなら叔母さんに聞いてみればいいじゃん」越人はバックミラー越しに愛美を見て、唇に笑みを浮かべながら問いかけた。「じゃあ、君は誰を愛してるんだ?」愛美は双をぎゅっと抱きしめて、微笑んだ。「もちろん、うちの可愛い双よ」「じゃあ俺のことは愛してないのか?そんなら運転して連れてってやる必要ないな。もう戻るか」越人はわざとハンドルを切るふりをした。愛美は慌てて声を上げた。「あなたのことも愛してるわ、ちゃんと!」越人はようやく満足そうに頷いた。双は口を尖らせ
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