「お、お前、彼女のデタラメを聞くなよ」誠は必死にごまかそうとした。しかし取り繕えば取り繕うほど、その隙はかえって目立ってしまった。「へぇ、意外だな」悦奈は笑みを浮かべた。「もしかして、まだ童貞だったりして?」その一言に、愛美はつい堪えきれず吹き出した。越人はただ驚いた顔で悦奈を見ていた。──この子……性格が豪快すぎる。誠はハンドルを握る手に力を込めた。「俺とお前はそんなに親しくない。勝手なこと言うなら、今すぐ車から降りろ」悦奈は唇を尖らせた。「そんなにケチなの?」誠は鼻を鳴らし、低く答えた。「お前に笑われて、黙って感謝でもしろと言いたいのか?」「冗談だってば。本気にしないでよ」悦奈は椅子に身を預け、気怠げに笑った。誠は彼女を一瞥した。悦奈は彼に向かって、愛らしい笑顔を見せた。その瞬間、誠の視線は一瞬揺れた。唇を引き上げるわずかな動作が、思わず見惚れるほど美しかったからだ。彼は慌てて目を逸らし、それ以上は見ないようにした。遊び疲れたのか、酒が回ったのか――気づけば彼女はすやすやと眠り込んでいた。誠は心の中で呆れ返った。──こんな女、今まで見たことがない。「さっきからお酒の匂いがすごいわね。だいぶ飲んでるんじゃない?」愛美がぽつりと言った。誠は彼女のヨットから降りてきた連中を思い出した。──女だけじゃなく、男も混じっていた。どれほど騒いでいたのか想像に難くない。……まあ、それ以上のことがあったとしても、別に不思議じゃない。大人の世界なんて、そんなものだ。車が市街地に入ったところで、誠は彼女を起こして降ろそうとしたが、愛美が止めた。「誠、女の子に対して少しも思いやりってものがないの?」誠は無言で眉をひそめた。「家族の連絡先も分からないし、しかもこんなに酔ってる。ひとりで放り出すなんて危なすぎるわ。ホテルに送ってあげましょうよ。あなたの部屋、今は空いてるでしょ?私たちが食事を終えて戻ってきた頃には酒も抜けてるだろうし、それから帰してあげればいい。女の子ひとりをこんな状態で置き去りにして、もし変な奴に絡まれたらどうするの?」愛美は必死に取り持とうとした。「……」誠は息をついた。──愛美の言いたいことは分かっている。けれど――彼は横目で悦奈
続きを読む