夜の十二時。海辺では月明かりに照らされた波がきらめき、潮風が潮の香りを運んでは、岸辺を吹き抜けていった。身震いするほどの寒さだ。コンテナに潜んでいた警察官たちは、一糸乱れず、集中して外の状況を見張っていた。潜入捜査官からの情報により、特定の船に目を付け、動きがあれば即座に包囲する手はずだ。犯罪グループの目的は明確――公海に出て違法取引を行うつもりだ。だから警察は事前に行動を起こさなければならない。海上での行動は制約が多いため、船が動き出す前に一網打尽にしなければならない。やがて目標の船がエンジンをかけた瞬間――副署長が指令を下した。すぐに船は埠頭で封鎖され、包囲網が敷かれた。彼らが取り引きしていたものは、人々を害する違法薬物だ。逮捕されれば、銃殺刑を免れても、10年、あるいは数十年の刑務所生活が待っている。しかもこの連中には、人殺しの前科を持つ者も少なくない。命知らずの亡者たちだ。追い詰められれば、当然、死に物狂いで抵抗してくる。こうして激しい戦闘が始まった。銃声が響き渡り、誰もが不安に駆られた。眠れぬ夜となった。激戦の末、船の乗組員は全員逮捕された。しかし警察側にも犠牲者が出た。明雄は隊長として、真っ先に船に乗り込んだ。幸い、彼は軽い外傷を負っただけですみ、手当てを終えるとすぐに動ける状態に戻った。しかし、今は休んでいる場合ではない。今回逮捕した中に、組織のボスがいなかったからだ。「こいつは俺が訊く」明雄は、壁際にうずくまる黒いパーカーを着た男を指さした。男はすぐに取り調べ室へ連行された。「一旦電話する。由美に無事を伝えないと」明雄は言った。「どうぞ、隊長」外に出た明雄は、電話をかけた。すぐに通話が繋がった。「……もしもし?」「俺だ。署まで来い。俺に飯を届けるように言え」由美はすぐにその意図を悟った。「わかった」明雄が取り調べ室に戻ると、被疑者はまだ一言も口を開いていなかった。現行犯で押さえられ、違法な取引品まで押収されているのに、一切の供述を拒んでいる。厄介なやつだ。ほどなくして由美が弁当を持って到着した。大きく膨らんだお腹が目立っていた。隊員たちは皆、そんな彼女を気遣っていた。「奥さん、ご苦労様。隊長は
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