ゆみは心から澈のことが好きだった。誰かを好きになれば、自然とその人の立場から物事を考えるようになる。紗子は気持ちを落ち着かせ、携帯を取り出して澈に電話をかけた。「もしもし?」澈はすぐに電話に出た。「吉田紗子です」「何かご用?」紗子は奈々子がゆみに言ったことを澈に伝えたが、話せば話すほど、ゆみが不憫でならなかった。「澈くん、もしこれがあなたの本音なら、直接ゆみに伝えてください」「それは僕の考えではない。奈々子は僕を代弁したわけではない」電話の向こうで澈はしばらく沈黙してから言った。「でも今、ゆみはそれを真に受けているわ!あなたの友人に、もう二度と余計なことを言わないでと伝えてください!」「分かった、きちんと話す」澈の声は低く重かった。「ゆみは今どうしてる?」「あの子は今、感情を押し殺して、何も話そうとしない。澈くん、一つだけ質問があるんだけど、正直に答えてくれる?」「うん」「あなたは本当にゆみのことが好きで、彼女と付き合いたいと思ってるの?」「うん。けど今ではない」「理由は?」「今の僕ではまだゆみを十分に守れない。自分さえまともに養えない状態だ」「それがそんなに重要なの?」紗子は問い詰めた。「ゆみ本人に、養ってほしいか聞いたことあるの?」「僕にとって、ゆみのために尽くすのは当然のことだ」「尽くし方にもいろいろあるじゃない。経済的なものと、感情的なもの。彼女に必要なのは後者よ」紗子は熱を込めて説明した。「彼女は人生で、あなた以外こんなに気にかける存在はないわ。あなたの考えをゆみに押し付けないでほしい。だって彼女はそんなことを望んでいないから。責任感を持つことは男として立派なことだけど、責任はどんな形でも表現できるはずよ。安定した仕事について、お金を稼いでからじゃないとダメだとか、そんな決まりはないんだから。お互いを知ることだって、二人が付き合っているうちに少しずつ知っていけばいいじゃない!」紗子の言葉は、澈にとってまさに目から鱗だった。彼はその場に立ち尽くし、紗子の言葉を頭の中で反復した。もしかしたら、自分の考えはあまりに自己中心的なものだったのかもしれない。いつも自分の視点だけで物事を捉え、ゆみの気持ちを聞こうとしなかった。「ゆみと話してみる
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