臨はようやく折れた。「はいはいはい、分かったよ。それで、いつ始めればいい?」「急がなくていい。前日に連絡するから、それまでに準備しておいて」「分かった」返信を済ませると、ゆみは携帯をポケットに入れ、部屋を出た。彼女は帰宅してから、まだ一度も紗子の様子を見に行っていなかった。廊下に出ると、ちょうど佑樹と顔を合わせた。「帰ってきたのか」ゆみは頷いた。「佑樹兄さん、今日の件、もう知ってる?」「今日の件?」ゆみは仕方なく、紗子の件を一通り説明した。佑樹は眉をひそめた。「つまり、今日僕の部屋に来たのは紗子じゃなくて―朔也おじさんの魂が彼女に憑依して、無意識に入ってきたってことか?」「そう。あなただけじゃない、私たちみんな騙されてたの」佑樹は壁にもたれかかりながら、じっと彼女を見つめた。「それで、お前は……」「次はどうするつもりかって聞きたいんでしょ?でも、今はまだ言えない。時が来れば分かるから」「いや、別に聞きたいわけじゃない」佑樹は淡々と言った。「僕たちはお前みたいな業界のことは分からないし、どう対処するかはお前に任せるさ。ただ――この件に朔也おじさんが絡んでるんだろ。だから、母さんには一言言っておいたほうがいい」「もう話したよ。母さんは、手を下す前に教えてほしいって。おじさんに会いたいって」「……そうか、それならいい」佑樹は言った。「で、これからどこ行くつもりなんだ? 三日も家で寝てないんだし、少しは気にしろよ」「どこにも行かないよ!」ゆみはにこっと笑いながら佑樹の腕にしがみついた。「ちょっと紗子の様子を見に行くだけ。だから心配しないで」佑樹は満足そうに頷き、自分の部屋へ戻ろうとしたが、ふと立ち止まった。「あ、そうだ。ゆみ、お前たち用にマンションを手配しておいた。僕と念江、臨にもそれぞれ一戸ずつだ」「えっ!?」ゆみは振り向きざまに驚きの声を上げた。「MKグループの新築分譲マンションから数戸確保しておいた。もうすぐ内装に入るから、スタイルは自分で選べ」「じゃあ、ここの家は?」「両親の家にいつまで住むつもりなんだ?」佑樹は言った。「僕たちはもうみんな大人だ、同じ屋根の下で暮らしてると何かと不便だろ」その言葉を聞いた瞬間、ゆみの心の
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