補給は近日中に行われるはずだ。二人きりではあるが、夜なら何とかして紛れ込める。むしろ大勢では厄介になるばかりだ。出口を見つけたら、一、二人を捕らえて尋問する。頑なな者なら拷問も辞さない。そうすれば、何かしら吐き出すだろう。「もう少しの辛抱だ。三日もすれば片が付く」「まんじゅうが食べたいです……」尾張は満腹のげっぷを漏らし、しょんぼりと呟いた。「粉物なしじゃ生きていけません。毎日焼き肉ばかりじゃ、胸焼けしそうで」「では、これでも食べろ」玄武は手近の若草を摘んで差し出した。この時期の若草なら食べられる。「さあ、口直しだ」「苦いのは嫌です」尾張は首を振って、親王様の好意を断った。食べないなら自分が、と玄武は若草を口に運んだ。根まで食べられる草なのだ。若葉の僅かな苦みが口の中の脂っこさを洗い流していく。これはこれで美味い。「親王様、深水先生は上原様に私たちの失踪を知らせるでしょうか?」「それはないだろう」玄武は短刀で穴を掘り、食べ終わった骨を埋めながら答えた。「印を残してある。大師兄なら分かるはずだ」だが、妻の名が出た途端、押し込めていた想いが波のように押し寄せてきた。「事が済んだら、馬を休ませる暇もなく京に戻るぞ」「もちろんです!」山壁に寄り掛かり、玄武は思いを馳せた。今頃、さくらは何をしているだろうか。自分のことを想ってくれているだろうか。だが、さくらもまた飛騨の山中にいることなど、玄武は知る由もない。同じ山とはいえ、相当な距離がある。山には道らしい道がなく、二人は軽身功を使って移動することが多かったため、地上に痕跡は殆ど残っていない。発見は困難を極めるだろう。さくらたちは更に一日山を探したものの、新たな手掛かりは得られず、下山を余儀なくされた。下りは楽だった。軽功を使い、高所から進路を確認しながら飛び降りていく。しかし、内力を消耗する軽身功の影響で、宿に戻った時には一行全員が疲労困憊していた。他の二隊も戻っていたが、やはり何も見つけられなかったという。その夜、皆無幹心が梅月山の弟子たちを連れて到着した。千里の道のりを駆けつけてくれた師兄姉たちへの感謝の言葉が口に出る前に、幹心は先回りするように言った。「厳命だからな。来ないわけにはいかなかったのだ」皆の笑顔が一瞬固まった。師叔のぶっきらぼうな物
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