「信じないで、あれは全部ウソよ!」取り巻きの女が必死に取り繕うように言い募る。けれどその瞬間、悠生が駆けつけてきた。真っ直ぐ鈴のもとへと歩み寄ると、周囲の空気が一変する。「鈴さん、大丈夫だった?」鈴は肩をすくめ、平然とした表情で「うん、平気」と答えた。だが悠生は、先ほどの録音を聞いていた。視線を鋭く巡らせながら、場にいた人々に向けて声を上げた。「三井鈴さんは、俺が正式にお招きしたゲストだ。そんな人に、勝手な言いがかりをつけるつもりか?」そのひと言で、先ほどまで騒いでいた人々はみな口を閉ざし、ばつが悪そうにその場を離れていった。美和は呆然とその光景を見つめていた。――どうして鈴木悠生が、三井鈴に対してこんなに親しげなの?その意味が頭に追いつかないまま、彼女はパチパチと瞬きをして、すぐに笑顔を作る。「鈴木さん、私は清水電器の清水美和と申します。お目にかかれて光栄です」媚びるような声と態度で距離を縮めようとしたが、悠生はまったく相手にしなかった。目線を鋭く向けたのは、美和の隣にいた取り巻きだった。「さっき、鈴さんのことを侮辱したのは――お前か?」取り巻きは目を丸くしたまま動けずにいる。悠生はそれ以上何も言わず、スマートにスタッフへと指示を出す。「こいつを外に出して」警備員がすぐに現れ、言われるままに取り巻きをその場から連れ出していった。そして、悠生は鈴のほうへと向き直り、自然な流れで彼女をエスコートしながら会場内へ入っていく。その後ろ姿を、残された美和はただ呆然と見つめるしかなかった。心の中には、得体の知れない焦燥とざわつきが残ったままだ。――この女、いったい何者なの……?鈴が会場に足を踏み入れた瞬間、まるで空気が変わったかのようだった。多くの視線が彼女に集まり、各界の来賓たちが次々と挨拶に訪れる。鈴はその一人ひとりに、丁寧に、礼儀正しく応えていく。一方の美和は、その様子を遠巻きに見ながら、胸の内に渦巻く感情を抑えきれずにいた。――あんなの、想定外よ……そんな中、会場の扉が静かに開き、陽翔が姿を見せた。その瞬間、美和の目が彼に吸い寄せられる。慌てて服のシワを整え、ポーチの鏡でメイクを確認する。万全を期して、笑顔を浮かべたまま彼に近づいた。
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