……病院。海人の母は、林也の報告を聞いていた。海人が診察に来たと知ると、瞬時に声を荒げた。「だからあの女は厄病神だって言ったじゃない!海人があの女と付き合ってから、ろくなことがない!病気や不幸ばっかり!」海人の父は言い淀みながら言った。「海人……今回は、つわりのことで受診したらしい」「は?」海人の母は、自分の耳を疑った。「今の話、自分で聞いてておかしいと思わないの!?」林也が続けた。「本当です」「……」海人の母は言葉を失った。林也は補足した。「専門家に確認しました。この症状は確かに珍しいですが、実際にあります。夫が妻を深く愛していて、妊娠中の苦しみを見て精神的に共鳴すると、つわりのような反応が出るんです」その言葉が落ちた瞬間、海人の母の耳の奥で蜂の巣でも割れたかのように、「ブーン」という音が鳴り続けた。しばらくして、やっと我に返り、鼻で笑った。「ほんと、理想的な旦那様だこと。私なんて、この子を産む時に命をかけたのに、感謝の一つもされたことない。なのに今は、私と対立するばかり」すると、菊池家の祖母が静かに口を開いた。「感謝されてない?跪いて、頭を下げて、あれだけ説得してきたのは感謝じゃないの?外の人間相手だったら、来依をいじめた時点で黙って潰してたわよ。何も言わずにね。そもそも子どもを産むっていうのは、彼に頼まれたわけじゃない。私たちが望んだことなの。子を盾にして、道徳的に縛るのは違うと思うけど?」海人の母は布団の端をぎゅっと握りしめた。「母さんは好き勝手言えるからいいわよね。結局、自分だけがいい人になったってわけね」海人の父が海人の母の肩に手を置き、なだめるように言った。「今は気持ちが不安定なんだ。少し落ち着いて、無理しないようにしよう」海人の母は冷笑を浮かべた。「あなたが気にしてるのは、私とお義母さんが喧嘩しないことだけでしょ?この何年、あなたは事なかれ主義ばっかりで、何を頼っていいかも分からない」「なんで俺に攻撃するんだ?」「昔、さっさと片付けろって言ったのに、もう少し様子を見ようって……その結果がこれよ。今じゃ、悪者は私一人。あなたたちはみんな達観して、受け入れモードなわけね」海人の母は海人の父を強く突き飛ばした。「もしあの女を家
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