南はその言葉を気に入った様子で微笑んだ。「国民オーダーメイドって、いいじゃない?服ってさ、有名人だけが着るもんじゃないでしょ」来依は彼女に腕を回して抱きついた。「あんたって、いつも自分に厳しすぎ。でも気持ちは分かるよ。でもさ、今のデザイン、ほんとに完璧に近いと思う。それに国民オーダーメイドをやるにしても、まずは有名人モデルを出して、反応を見てから量産に移るってのが自然でしょ?だってさ、あんたも言ったじゃない。どんなに色が斬新でも、誰にでも似合うわけじゃないって。なら、まずは試してみるしかないよね」南は確かに、少し行き詰まっていた。だからこそ、無形文化財×和風というテーマを取り入れて、新しいシリーズに挑戦しようとしていた。だが、ファッション業界にはブランドが溢れている。新しさを出さなければ、いず負けてしまう。けれど、「新しさ」というものは、時に市場を壊す危険もある。「私はビビッドカラーの組み合わせで全然問題ないと思う。最近はああいう明るくて元気な色合い、着てるだけで気分が上がるでしょ」来依は図面を指差しながら言った。「この黄色×緑とか、オレンジ×青の配色もすごくいい。それに、この刺繍の柄も生き生きしてる。絶対売れるって」南は笑った。「はい、ちゃんとサポートは受け取ったわ」「よし、じゃあタピオカミルクティーでも頼もうよ。ちょっとリラックスして、外を散歩したら、またインスピレーション湧くかもしれないし」来依はスマホを取り出して注文しながら言った。「この辺って博物館も多いんだよ。古代のものもいっぱい見れるし」南は来依の襟元を指で引っ張りながら、意味ありげに言った。「……まだ街歩きできる体力、残ってるの?」「……」……その頃、海人は会議を終え、清孝の休憩室にいた。彼がずっとスマホの画面を見つめているのを見て、清孝は呆れたように言った。「いくら自信あってもさ、恋愛ばっかに夢中になってる場合か?道木青城、相当気合入れて来てるんだぞ。もっと気合い入れろよ」「それより、鷹は?」海人はまぶたを微かに動かし、淡々と答えた。「ちょっと用事を処理しに行った。夜には戻る」「……ちゃんと対策してるってわけか」ふん、と清孝は鼻で笑った。自分でもなぜ、こんなやつと長年の友人を続けてきたのか
Baca selengkapnya