「私が知りたいことを教えるのは、当然の義務でしょ?報酬なんて求めるもんじゃない、分かる?」「分かった」海人は素直に頷き、まるで理解したような顔でコーヒーを口にした。だが、何も言う気配はなかった。来依はしばらく待っていたが、すぐに違和感を覚えた。「……報酬がないなら話さないってこと?」海人の唇に薄い笑みが浮かんだ。「どう話せばいいか、ちょっと分からなくてね」――またそれ。来依は歯を食いしばり、じっと睨みつけた。「そんな頭あるなら、もっと人類のために使いなさいよ!私相手に使ってどうすんの!」海人は「うん」と返事をしながら問うた。「お前は『人類』なの?」「当然よ」「私の対応、問題ございませんでしたでしょうか?」「……」「ご満足いただけましたら、ぜひ満点の10点をお願いします。今後も精進いたしますので」「……」来依はもう相手にするのがバカバカしくなって、立ち上がった。「もういい。つまんない」だがその手を、海人がすっとつかんだ。「気にならないの?」「な・ら・な・い」歯がきしむほど、強く答えた。海人はその様子を面白がっていた。どうして彼女がここまでゴシップに熱心なのか分からないが、それもまた彼女らしい。「話してもいいよ。ちょっとしたご褒美があれば」来依は心の中で嬉しくなりながらも、顔ではそっけなく答えた。「あんたの態度次第」「俺、そんなに悪くないと思うけど?」「……」海人は自分で反省するフリをして、低く囁いた。「じゃあ、今夜はもっと頑張るよ」「海人!」来依は思わず怒鳴った。店内の人たちの視線が一斉にこちらを向き、彼女は慌てて笑顔を作った。「すみません、すみません」海人は彼女が本気で怒りそうになってきたのを察して、ようやく真面目な顔に戻った。「紀香は昨日、清孝に連れられて藤屋家の本宅で食事した。そのまま一晩、泊まらされた」「まさか、ありがちな展開じゃないよね?」海人は頷いた。「まあ、そう言ってもいいかな」「藤屋家としては二人の離婚に反対だった。でも紀香は強く主張してたし、清孝がここ数年無関心だったこともあって、藤屋家も後ろめたさがあった。だから、どうにか繋ぎ止めようとしたんだ」来依は溜息をついた。「権力で押し潰すな
Read more