紗枝は辰夫と一緒に、彼が今暮らしている場所へ戻った。広々とした邸宅の別荘には色とりどりの花が咲き乱れ、どこか辰夫の雰囲気とはちぐはぐだった。睦月は一緒に来なかった。別荘の使用人たちは、紗枝と辰夫の姿を見ると一人ずつ丁寧に頭を下げた。「旦那様」辰夫は軽く頷いて、彼女たちに下がるよう指示した。リビングに入ると、紗枝が口を開いた。「今、体の調子はどう?」昨日の電話では、目が覚めたばかりで体調もまだ良くないと言っていた。紗枝は、彼がまだ寝込んでいると思っていた。まさか空港まで迎えに来てくれて、さらに一緒に食事までできるなんて、思いもしなかった。その問いに、辰夫は背中を向けたまま無言で、長い指でシャツのボタンを外し始めた。紗枝が気づいた時には、もう彼はジャケットを脱いでいた。「ちょっと、なにしてるの?」紗枝は思わず身をこわばらせる。辰夫はシャツも脱いでソファの上に放り投げると、ゆっくり振り返った。紗枝は反射的に視線を逸らし、直視できなかった。「服脱いで......どうするつもりなの?」「どうするって......あなたが今、僕の体調を訊いたからだろ?」辰夫の声は低く、少しかすれていて妙に色気があった。その声に促されるように、紗枝はやっと彼の方を見直し、そして息を呑んだ。引き締まった上半身には、数えきれないほどの傷跡が刻まれていた。深いものも浅いものもあり、中にはまだ抜糸もされていないものまであった。その姿は、見ていて痛々しいほどだった。衝撃が、紗枝の瞳に広がっていく。「これ......啓司がやったの?」辰夫は否定しなかった。「昔の傷は違う。でも新しいのはあいつだ」気づけば、紗枝の手はぎゅっと強く握られていた。「ごめん。私のせいで、こんなひどい怪我させて......」辰夫の表情は変わらなかった。「馬鹿だな。僕たちの関係で、なんでそんなこと謝る必要があるんだ?この数日、ここに残って僕の世話をしてくれればそれでいい」そう言いながら、辰夫の視線はずっと紗枝を見つめていた。喉仏がかすかに動く。紗枝はそんな彼の異変には気づかず、「じゃあ、今すぐ病院行こうか?」と尋ねた。「いや、大丈夫。専属の医者がいるから。あとで来て処置してくれる」辰夫は服を手に取り、一瞬ためらってか
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