「母さん、またお漏らし!?」昭子の顔には嫌悪感が露骨に表れていた。美希は顔を真っ赤にしながら、恥ずかしさに布団を引き上げ、臭いを隠そうとした。昭子は母のその姿を見て、さらに耐えられないという表情を浮かべた。「母さん、もうこんな状態なのに、何を怖がってるの?離婚くらい……」どうせ長くは生きられない、最期まで私たちの足を引っ張らないでほしい――その言葉は胸の内に留めたままだった。「もう帰って……少し考えさせて」美希は耐えられないほどの屈辱を感じながら声を絞り出した。「早く決めてよ。遅くなれば紗枝に全部持っていかれるわよ」昭子はもうここにいたくないという素振りで、父親を促して部屋を出た。二人が去るとすぐに、介護士が駆け込んできた。「奥様、大丈夫ですか?先生をお呼びしましょうか?」美希は目を赤くしたまま首を振った。「いいえ、結構です。シーツを……シーツを替えてください」人前で弱みを見せることなど、めったになかった彼女だった。介護士が美希を支え起こし、シーツを替えようとした時、尿の染みた部分が鮮やかな赤色に染まっているのが見えた。数多くの患者を看てきた介護士でさえ、その光景に息を呑んだ。「血が……こんなに」美希も目を向けた瞬間、瞳孔が縮んだ。「先生を!早く先生を呼んで!」やはり死が怖かった。すぐに医師と看護師が駆けつけたが、彼らは冷静な様子だった。看護師が美希に告げた。「落ち着いてください。末期の方では血尿は珍しくありません」「調べたんです。私……これって、残された時間が更に短いってことですよね?」美希は看護師の白衣の裾を掴んだ。今でも死を受け入れる準備などできていなかった。まだ人生を楽しみたかった。こんな風に死にたくなかった。医師も看護師も真実を告げる勇気が出ず、ただ休息を取るようにと声をかけるだけだった。傍らで見守っていた介護士は、思わず美希に同情の念を抱いた。「お嬢様とご主人に電話をおかけしましょうか?戻ってきていただけるかも」美希は携帯に手を伸ばしかけたが、先ほどの父娘が離婚を迫ってきた場面が蘇り、途中で手を引っ込めた。痛みをこらえながら、介護士の方を向いて尋ねた。「さっきの話、聞こえてたでしょう?私の娘と夫……本当に私のことを思ってくれてるんですよね?」介護士は言
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