「柴尾夫人は、ここへ娘さんを迎えに来られたのですか?家に帰って食事をするために。それとも何か彼女に用があって来られたのでしょうか?もしかして、私がここにいたらお二人のお邪魔になってしまうのでは?」辰巳は咲が柴尾家でどのような扱いを受けているのか全く知らないふりをして、穏やかに加奈子がここへ来た理由を尋ねた。今日加奈子がここへ来たのは、咲に何か嫌がらせをするためではなかった。彼女は咲に明日の夜一緒にスカイロイヤルホテルで行われる小松家のおじいさんのビジネスパーティーに参加するよう知らせに来たのだった。もちろん、鈴の代わりとして考えているわけではなかった。咲を柴尾家のビジネスに助けとなるどこかの社長に紹介しようと考えているのだ。咲は目が不自由とはいえ、かなり整った美しい顔をしており、鈴よりもルックスが良い。そして彼女の話し方はいつも穏やかで落ち着いているので、相手も気分が良くなるのだ。そんな咲を社長たちに紹介すれば、相手はきっと咲の虜になることだろう。「いいえ、そんなことはございません。今日はここへ娘にちょっと伝えることがあって来ただけで、すぐに帰るつもりなんです」辰巳を目の前にすると、加奈子の態度はかなり良かった。彼女は咲に言った。「咲、明日の午後はお店を閉めてちょうだい。それかスタッフだけでお店を見てもらって、あなたは早めに帰ってくるのよ。お母さんが軽くお化粧してあげるから、ドレスを着て一緒に明日の夜行われるパーティーに来てもらいたいのよ」咲が口を開く前に辰巳のほうが笑顔で尋ねた。「柴尾夫人、それは小松家のおじい様が開催されるパーティーのことでしょうか?」「その通りです。結城さんもきっとご出席されますよね。小松家のパーティーには我々、誰でもどうにかして出席したいと思うものですわ」柴尾家の資産が二百億を超えた後、柴尾家はどんなパーティーにも参加するのが好きだった。彼女はすでに正真正銘の上流社会に溶け込めたと思ったからだ。そしてどうしても鈴を連れて出席したかった。社交界に柴尾家の下の娘がこんなに素晴らしいのだと広めたいのだ。もちろん、彼女の真の目的は鈴を結城家に嫁がせるためなのだが。しかし、それ以外にも抜かりはなかった。結城家の御曹司たちはなかなかガードが固い。鈴が結城家にお嫁に行けなくとも、星城には他にも金持ちはたく
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