「私たちがあの子を結城家に嫁がせたいと思ったところで、それが本当にできると思う?」正一は言った。「私だってあの子を結城家に嫁がせたくはないさ。彼女は確かに私の弟の忘れ形見だから、普段からあいつの分まで可愛がってあげているつもりだよ。だけど、もっと可愛いと思っているのは私たちの娘と息子だ。だから、どうしてあの子をこの星城の一番の財閥家に嫁がせたいと思う?鈴だって、結城家に嫁がせたいなど思わないほうがいい。そんなチャンスは絶対にないんだから。他でもなく、私たちは結城家の若奥様とはわだかまりがあるんだ。結城家の他の坊ちゃんたちだって、鈴のことを好きになるはずがない。鈴はまだ二十歳だから、そんなに今から焦って結婚相手を探す必要もないだろう。私たちがまずすべきことは、鈴を助け出すことなんだから」夫婦二人はソファの前までやって来て腰をかけた。そして加奈子が夫に尋ねた。「じゃあ、どうやって助けるの?贈り物に謝罪も全部したじゃないの。だけど意味がなかった。本当はあの人に出てきてもらって、どうにかしてもらう予定だったのに、それも結城副社長に台無しにされちゃったわ。あなた、副社長はまさかあの小松って男のこと、知らないわよね?小松っていう名字だけど、あの小松家とは遠い親戚よ。もし、彼のことがばれたら、小松家が自らあの男を片付けてくれるわよね」「彼は小松家と泰蔵おじい様からはかなり遠い親戚に当たるけど、金だけはある。小松家の中ではなんとか話が通せるような身分だろう。副社長はきっと彼が誰なのかわかりっこないさ。結城家の人たちは、ただ小松家本家の人たちと深い付き合いがあるだけで、それ以外の親戚とはきっと知り合いじゃない。お前はとりあえずおとなしくしておくんだ。結城家があの男を調べて突き止めたとしても、私たちはその責任を全てあのボディーガードに押し付ければいいんだ。明日、お前はすぐにあのボディーガードを星城から離れさせるんだぞ」加奈子はそれに応えた。「わかったわ。ねえ、結城副社長に縋りつくって、どうするつもり?」「彼は咲を助けただろう。咲にその恩返しとして、強引にでも彼の嫁にしてもらうんだよ。彼ら結城家は絶対に咲のような娘を嫁として認めないはずだ。頃合いを見計らって話してみるんだよ。鈴を助け出せればそれでいい。あの子が刑務所から無事出てくれば、もう副社長に付き
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