All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1581 - Chapter 1590

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第1581話

善は少し黙ってから言った。「親は確かに僕たちのためを思ってやってくれているんです。ただ、そのやり方を僕たちが受け入れられるかを考えてくれないから、どうしても逆に苦しめられてるように感じるんですよね」「その通りね。あなたのご両親もこのようにするの?」姫華は尋ねた。「僕が大人になってからは、両親は何も口を挟まなくなりました。あ、いえ、それは昔からです。兄さんが僕のことにいろいろ口を出してきたんですよ。うちはあまり下の世代にいはろいろ構わない家族なんです。僕みたいに結婚適齢期になってもまだ結婚してない場合は、催促をしてきますけどね」姫華は笑った。「そういえば、桐生家の方々は結城家と同じで、ご年配の方でもみんな開放的な考え方を持っているのよね。それで両家はどちらもトップクラスの財閥家に成長したのよ。家風が同じで、みんなお互いに穏やかに仲が良いからうまくいくんだわ」「姫華さん、お母様から僕とはあまり遊ぶなと言われたんじゃないですか?」姫華は正直に答えた。「そうなの、お母さんはあなたの出身地がここからは遠いから、遠くに私をやりたくないって思ってるのよ。なにがなんでもあなたから距離を取れって言うの。それに、星城にはたくさん好青年がいるんだから、たとえ一般家庭の男性と結婚することになっても、結婚して遠くに行かせるよりはマシだって言うのよ」姫華と善の二人はまだ結婚するという段階にも来ていないというのに、詩乃は焦って二人の仲を引き離そうとしているのだった。善はまた少し黙ってから、口を開いた。「僕が遠い出身であることを除いて、他に何か問題があるでしょうか?」「ないわよ。ただA市出身だっていうのにこだわってるだけ。この問題だけでも解決するのは難しいっていうのに、まさかまた他の問題でもほしいわけ?」善は笑って言った。「この問題も解決できないことじゃありません。お母様には時間をかけて、ゆっくり僕を受け入れてもらえればいいかなって思います」彼は姫華を見つめた。「僕が今焦っているのは、姫華さんがいつ告白を受け入れてくれるかという問題です」「私?」姫華は少し気分が良くなり、車を運転しながら言った。「私、男性から追いかけられるのは人生で初めてなの。だから、誰かに好かれて、追い求められるその醍醐味を、今はまだ味わっていたいのよ」善はその言葉をしかと
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第1582話

夕食の後、唯花はすぐに部屋に戻って風呂に入り、姉が泊っている部屋に行った。唯月は陽を抱きかかえて浴室から出たばかりだった。「陽ちゃん、お風呂終わったのね」「昼間はしゃぎ回ったから、眠そうにしてたの。すぐにお風呂に入れたわ。洗い終わる前に寝そうになってたのよ」唯月が陽をベッドに寝かせた時、彼はすでに眠ってしまっていた。唯花は微笑んで陽の小さな顔を軽くつねった。ぐっすり寝てしまっていて、叔母にそうされても全く起きる気配はなかった。「今日は陽ちゃんも、蓮君も大はしゃぎだったわね。でも、蓮君は普段の勉強のストレスが溜まっているだろうから、しっかり遊べて良かったね。高校生だけど、上の兄弟たちはかなり優秀だったらしいから、彼も努力しないと引けを取ってしまうのね。そうなると、お兄さんたちも黙っていないだろうし。思いっきり遊ぶことで、そのストレスを発散できるから」唯花は結城家の最年少の蓮のことをとても可愛がっていた。蓮は甘え上手で、毎回唯花に会うと甘えるように彼女を呼ぶのだ。「それで、何か用だった?」唯月は妹は何か用があって来たのだと思っていた。「何でもないよ。ただ陽ちゃんの様子を見に来ただけ。陽ちゃんは寝ちゃったから、私は書斎に行ってくるわ。お姉ちゃんも早めに休んでね」唯月は笑って言った。「寝るにはまだ早いから寝られないわよ。せめて十時じゃないと」今はまだ夜七時を少し過ぎたくらいだ。「書斎に行ってらっしゃい、あまり自分にプレッシャーをかけないようにね。お義母さんたちは慣れているし経験が元々あるんだから、自分と比べる必要はないのよ。あなたは今始めたばかりなんだし、比べること自体できないよ。誰だってゼロから何事も始めて経験を積んでいくんだもの、頑張ってね!」唯花が言った。「初めて聞いた時はかなりのプレッシャーを感じたけど、お義母さんから数年かけてやりなさいって言われたから、だいぶ気が楽になったの。お姉ちゃん、私頑張るね。もし、この家でも私の役割がきちんと果たせなかったら、自分は役立たずで恥ずかしいって思うもの」唯月は息子が寝てしまうと、薄めのブランケットをかけてあげた。「ええ、ゆっくりやっていけばいいわ。さあ、行っておいで」唯花は甥の傍に来て顔にキスをすると、姉のいる部屋を離れて書斎へ向かった。そして書斎
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第1583話

「おばあ様、わかりました」隼翔はとても落ち込んでいた。しかしそれも数分程度で、すぐにまた闘志を燃やした。始める前からやる気をなくすくらいなら、さっさと唯月のことを諦めてしまったほうがマシだ。「もうこんな時間だし、早めに帰りなさい」おばあさんは彼を帰らせようとそう言った。隼翔は笑って言った。「そんな追い出すようなことを言わないでくださいよ。俺はまだ理仁とちょっと一杯やりたいんです」「俺は今夜は酒を飲まない」理仁はバッサリと切ってしまった。隼翔はケラケラと笑った。「そういえば、最近結城社長は奥さんが嫌がるから、接待でもあまり酒を飲まなくなったと聞く。タバコも酒も夜遊びも賭け事も全部だ。我ら結城社長は人々の模範的夫だな」おばあさんと理仁はこの時口を揃えて言った。「お前も学べ」隼翔「……」そして結局、隼翔は帰ることにした。隼翔が帰ると、理事はおばあさんに付き添っておしゃべりをしていた。二人の仲は良く、話題も多い。おばあさんが眠気に襲われてあくびをするまで話していて、理仁が言った。「ばあちゃんも疲れただろう。部屋に戻って休んで」おばあさんはあくびをしながら言った。「やっぱり年を取るとダメね。遅くなると、眠気がきちゃって。寝ても、お日様が昇るとすぐに目が覚めちゃうし」すると彼女は立ち上がり、自分の部屋に戻っていった。理仁はおばあさんが部屋に戻ってから、二階に上がっていった。彼は唯花がベッドで待っていると思ってドアを開けると、中は真っ暗だった。彼が電気をつけて、部屋の中を見渡してみても、妻の姿はそこにはなかった。唯花は姉の部屋に行っているのだと思い、理仁は慌てて探しに行くことはなかった。風呂を済ませ、ベッドで雑誌を一冊見終わるとすでに夜十一時を回っていたが、唯花はまだ帰ってこない。彼女がいないのに慣れないし、一人きりで部屋で待つのは嫌なので、妻を探しに行くしかない。唯花は姉のところにいると思い、ゲストルームの前まで来て、静かに中の様子をうかがってみても、中から声は聞こえてこなかった。それでも、ドアをノックしてみた。唯月はすでに寝ていて、意識が朦朧とする中誰かがドアをノックする音を聞いた。そしてベッドに起き上がり尋ねた。「どなたですか?」「義姉さん、俺です。理仁です。唯花さんは中にいます
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第1584話

数分も経たず、理仁のほうが主導権を握り、唯花を抱きかかえてベッドに連れていき、そのまま甘い夜を過ごした。そうして一夜が明けた。翌日は明凛と一緒に食事する日だ。唯花姉妹は二人揃って牧野家へ赴いた。もちろん理仁は妻に付き添った。明凛は彼らとの食事を終えて、そのまた翌日から悟とハネムーンへ行った。短かったゴールデンウィークの休みもこうして終わった。それぞれ、仕事、学校、店へといつもの日常に戻っていった。唯花は毎日本屋で店番をする以外に、時間を作り姫華と一緒に田舎へ農場の様子を見に出かけた。すでに唯花の計画通りに進み、この時期旬の野菜が植えられている。緑一面となった畑を眺め、姫華は唯花に言った。「管理人が、あと一週間したら、ここにある野菜を出荷できるって言ってたわよ」唯花は畑を眺めて言った。「もう話をつけてある、ホテルと学校の食堂へ今回納品するの?」「それは全部は無理ね。私たちの畑は広くていろんな野菜を植えたでしょ。話がついていいる何軒かのホテルと学校では、これだけ多くの野菜を処理してしまうことはできないわ。帰ったら、またいくつかのホテルやレストランとか食堂に交渉に行かなくちゃ」「あとは八百屋さんや、道の駅みたいな家庭野菜販売所なんかにも掛け合ってみていいと思うわ」唯花が言った。「始めたばかりだから、私たちと提携したいっていう人がいるなら、大小問わず、どこにも行ってみましょ」彼女たちについているサポートに頼らず、できるだけ彼女たち自身の力で、野菜の販売経路を拡大したいと思っている。唯花は、将来自分が結城家を取りまとめる女主人となることを考え、多くの事業も管理しなければならない。彼女はただ帳簿だけを見て、頭の中で把握するだけでは駄目なのだ。実際に様々な業界や事業について学ぶ必要があった。経験を積むために、自分自身の力でまずはスタートしなければならない。姫華も唯花の意見には賛同していた。二人は農場の視察を終えると、村にある家庭料理屋で昼食を済ませて市内に戻った。今植えている野菜は、あと一週間で出荷できる。姫華と唯花は市内に戻った後、すぐに他の提携できる相手を探す必要があった。唯花のほうは市場にある八百屋やスーパーに話をしに行くことにした。姫華のほうはお嬢様なのでそちらへの販促はあまり相応しくない
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第1585話

吉田は心の中でこっそりと笑っていた。若旦那様は現在、完全に妻の尻に敷かれている。唯花は電話越しに笑った。「もうすぐ家に着くわ。あなたはもう帰ってきたの?」「うん、さっき帰ってきたばかりだよ。今どこにいるの?迎えに行く」「いいわ、もう着くから、迎えに来なくていいわよ。車で帰ってるから、あなたがまだ家に帰ってなくて途中で迎えに来るのとはわけが違うから。理仁、家で待っててね。あと十分ちょっとで着くから」「わかった、気をつけてね。スピードを出し過ぎるんじゃないよ」唯花は笑って言った。「わかってるわよ」彼女はたまに、夜遅くに帰宅する際、交通量が少ないのでスピードを出すことがある。するとすぐに彼女に付き添っているボディーガード二人が注意するのだ。しかし、理仁がそれを知った後、きつめに彼女に注意していた。そして唯月の所へ行って、彼女からも唯花にガツンと言ってもらう。唯花は理仁が姉に逐一報告するのが好きだと思った。理仁が唯花に言って全く聞いてくれないことなら、彼は必ず唯月のほうへ訴えに行くのだった。今、唯花は何をするのも、理仁の気持ちを考慮しなければならない。そうしないと、毎日のように姉に報告されてしまうからだ。今までここまで誰かに訴えるのが好きな男は見たことがない。唯花が姉にそれについて文句を言えば、逆に姉から注意されてしまう。理仁が彼女のことをとても大事に思っているし、それにそんな小さな事で揉めるのが嫌だから、お姉さんのほうから話してもらおうと思っているだけだと言うのだ。これは関心があるからであって、訴えではないと。これでは唯花も何も言えない。姉にとって、理仁は唯花よりも上に位置づけられている。「夜食でも食べる?俺が何か作ってあげるよ」唯花は答えた。「毎回私一人で食べて、あなたは付き合ってくれないから味気ないわ。太るし夜食は食べないわよ」理仁は自分のスタイルを完璧に維持している。彼は夜食を食べないのだ。夜接待があっても、彼はほとんど口につけない。酒に関しては、たまに数口飲む程度だ。それ以外の場合でもきちんと制限している。今、星城のビジネス界では結城社長と商談する際、酒を勧めてはならないという暗黙のルールがあった。社長夫人が酒を飲むと胃に悪いと言って嫌がるからだ。それは以前理仁が胃腸炎にな
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第1586話

「理仁、ただいま」唯花は買って来た物を提げて帰ってくると、理仁を呼んだ。理仁は立ち上がると、彼女の出迎えに行った。唯花が中に食べ物が入った袋を提げているのに気づいた。「夜食は食べないって言っておきながら、外で買ってきたのか。夫の料理の腕は大したことないから、俺が作ったのは嫌だってこと?」まだ恨みがましく思っている理仁は小さな事でも気になり、自分の料理が嫌われているから、自分まで嫌われているのだとまで思い始めた。「そんなことないわよ。うちの旦那さんの料理の腕は私よりも上だもの。ちょうど商店街を通りかかって、よく食べてたコロッケとか唐揚げとかちょっと食べたいなって思ったの。それで車を止めて買ってきちゃった」理仁はこのようなものは作れない。彼が以前、一般家庭で食べるような朝食を食べていたのは、金持ちでないことを隠すためなのだった。唯花はそんなことは知らず、いつも唐揚げなど買って来ていた。彼は彼女にバレないようにするために、それを食べていたのだ。それに唯花が以前スーパーで売っているような安い肉も避けて食べないということもあった。「一緒に食べる?」唯花はソファに座り、袋の中のものを取り出してローテーブルの上に置いた。理仁は彼女がその袋から、たこ焼き、コロッケ、唐揚げを取り出すのを見ていた。理仁は箸を取りに行って彼女に渡した。「食べたいなら、吉田にひとこと言えば、シェフに作らせるよ。外のより美味しいはずだ」「たまには外で買って食べたいの。明日はワンタンが食べたいわ。お姉ちゃんの店にもあるから食べに行こかな、あとギョーザも」彼女はこのように一般家庭で食べているような庶民派な感じが好きなのだ。理仁は彼女の言いたいことがわかった。そして何も言わずに、彼女が美味しそうに食べる様子を見つめていた。御曹司である理仁はこのようなものには慣れていない。そこまで多くなかったので、唯花一人で平らげてしまった。食べ終わると、まだ少しだけ物足りない気がした。「明日も忙しくなければ、ちょっとお酒でも飲んだのにな」それを聞くと、理仁は顔を暗くさせて言った。「忙しい、忙しい、毎日ずっと忙しいなぁ。夫である俺の名字をお忘れかな?俺に愛してるって最近あまり言ってくれないし、俺のために新しい服も花束も長いこと買ってくれてないと思う
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第1587話

「理仁、愛してるわ」唯花はまた理仁が喜ぶ甘い言葉を囁いた。「明日から、毎日花を贈ってあげるから」花束なら簡単なことだ。唯花が咲に頼めば、毎日花束を用意してくれるから、それを理仁にプレゼントすればいい。「オフィスには花瓶が一つしかないから、一日おきでもいいぞ」と、理仁の顔はようやく和らいだ。唯花は言った。「だったら、オフィスにあといくつか花瓶を買って置くとかは?」「周りから男なのに飾りつけてどうするとか言われたくないな」唯花は笑って言った。「そんなこと言われるわけないでしょ。だったら、花瓶を増やすのはやめて、一日おきに花束をプレゼントすることにする。明日は金曜日でしょ、土曜日の休みに一緒にショッピングに行かない?服を選んであげるわ」彼のクローゼットには新しい服が満たされている。一定間隔でデザイナーが彼のサイズに合う服をオーダーメイドしてくれるのだ。それでも、理仁は妻からプレゼントされるほうが嬉しかった。今、唯花の貯金は増えていっている。理仁の正体を知ってから、彼に買う服も高級ブランドで、御曹司である彼に相応しいものだった。それで、理仁は毎日身に着けているものは全て唯花にもらったものばかりだ。すると理仁はまた恨みがましい様子で彼女を見つめた。彼が鬱々としているのは、本当に欲しいものはそのような物質的なものではないからだ。「理仁、あなたも私が農場経営をしていることは知ってるでしょ、もうすぐ収穫できて、かなりの量になるの。それでもっと顧客を増やさないといけないんだ。私も姫華も商談のために走り回っているし、それに結城家の小さな事業も女性が管理するから、私ももっといろいろ見て、勉強していかなくちゃ。それでちょっと最近忙しいんだけど、いつだってあなたのことを考えているのよ。お姉ちゃんの次にあなたがいるの。私の中であなたは陽ちゃんを越えてるんだからね」唯花もまだ十日ほど忙しくしているだけなのに、理仁はもう耐えられないらしい。結婚当初、理仁は毎日夜中過ぎまで帰ってこないことがほとんどだったが、唯花もそれに対して何も文句は言わなかった。だがそれは、結婚したばかりの頃は互いに好きという気持ちがなかったのだから、別にどうでもよかったからだ。「仕事に忙しいのはいいんだけど、俺よりも早く帰ってきてほしいな。これから
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第1588話

「ちゃんと休みなさいよ。健康が一番大事なんだからね」唯月は妹のことを心配して言った。「お姉ちゃん、私は大丈夫だから」彼女が昨晩よく眠れなかったのは、あの男のせいだ。夫婦の営みに関しては、唯花も姉に話せるわけがない。「お姉ちゃん、成瀬莉奈は釈放されたの?」この時、唯花が突然その話題を出した。唯月は少し黙ってから、言った。「彼女、妊娠したらしいわ」「彼女が捕まった時に妊娠していたのがわかったみたい。刑務所に入ってずっと気分も優れなかったから、そのことに気づいてなかったのね。もう妊娠三か月なんですって、佐々木俊介が出所のためにいろいろと走り回ったみたいよ」しかし、莉奈は出産を終えてから、受けるべき刑罰は受けなければならない。唯花は言った。「タイミングよく子供に救われたわね」俊介は莉奈のことをやはり好きなようだ。両親と親から莉奈と離婚するように圧力をかけられても、彼はそれを拒否するくらいだ。それに唯月に頼んで、莉奈の罪を軽くできるように和解まで求めてきた。特に俊介が、莉奈のためにそこまでしたのは、離婚したとしても唯月が自分の元に戻ってくることはないとわかっているからだ。彼の両親と姉は物事を軽く考えすぎだ。彼らは、息子の陽の存在があれば、唯月は息子のためにならなんでもすると思い込んでいた。彼が再婚を提案してきたら、唯月がすんなりそれに同意すると勘違いしていたのだ。俊介は両親はあまりに能天気だと思った。隼翔が今や正面から堂々と唯月を追いかけているのは置いておいて、たとえ彼女を追いかけている男がいなかったとしても、俊介の所に戻って来ることなど有り得ない。彼女も後悔して元サヤに戻ることなど有り得ないと言っていたじゃないか。俊介のほうは後悔していた。元のサヤに収まりたくても、その機会が与えられないだけだ。俊介など隼翔のライバルにもなれはしない。隼翔は陽の心を掴み、今二人は仲が良くなっている。唯月の気持ちを取り戻すこともできないし、莉奈は彼のせいで陽を傷つけようとするまで追い込まれてしまったので、彼は彼女に対して申し訳ない気持ちだった。そして莉奈の妊娠が発覚すると、俊介は急いで出所を求める手続きを行い、莉奈を連れて帰ったのだった。俊介と唯月が以前暮らしていた家も、すでに新しく内装が終わり
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第1589話

隼翔は店に入ると、まだひとこともしゃべっていないのに、また振り向いて店を出ていった。それを見ていた唯花は不思議に思っていた。あれはどういう意味だろう。尻込みしたのだろうか?それとも、妹の唯花がここにいたので、気まずく思ったのか?唯花が隼翔がすぐに踵を返して去って行った意味を考えている時、彼がまたすぐに店に入ってきた。彼はその手に花束を抱えていた。花束を持って来るのを忘れたから取りに戻っただけか。唯花は呆れてしまった。彼女は姉のほうを見てみると、姉は顔色一つ変えずに淡々としていた。この時間、まだ早かったので、店には唯花を除いて他に客の姿はなかった。二人の店員は奥のほうに座っていた。そして人が入ってきたのを見て、二人は奥から出てきて挨拶をした。それが何度も通ってくる隼翔だったので、二人は奥に戻った。隼翔が唯月を追いかけているのはあからさまだったので、店員が気づかないほうがおかしい。「内海さん」隼翔は花束を抱えて近づいてきた。「妹さんも、早いんだね」そして彼は唯花のほうへ挨拶をした。唯花が言った。「お姉ちゃんの店の朝食を暫く食べてなかったので、すごく食べたくなちゃって、朝早くに来たんです。社長もお早いですね」この時、まだ朝の七時だった。唯花のあの狼男は、彼女が出かける時にはまだ夢の中だった。彼女は家を出る前に、わざわざメモ書きを残してきた。彼が起きた時に彼女の姿が見えず、またなんで起こしてくれなかったのか、夫のことをないがしろにしているなどど、また腹を立てられたら、たまったものじゃない。今後は、できるだけ時間を作って夫に気を配ってやらないといけない。でないと、彼女の腰はもう立てないほど疲れ果ててしまうことだろう。「俺は普段からこれくらいの時間に来ているからな」隼翔はそう答えると、また尋ねた。「陽君は?」「陽はうちにいます。暫くしたら七瀬さんがお稽古に連れて行ってくれるんです」唯月はまんぷく亭の経営があって、毎日早く起きなければならない。陽を連れているのは不便なので、今は夜叔母の家で過ごしているのだ。そして朝になると七瀬が武術の稽古に連れて行ってくれる。隼翔はひとこと「そうか」と返事し、それから花束を唯月の前に差し出した。そして黒い瞳に情熱を燃やして唯月の姿をじっ
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第1590話

隼翔は笑って、ひとこと「そういうことか」と言った。唯花は姉の後ろ姿を見ながら、声のトーンを落として隼翔に尋ねた。「こんなに早い時間に、花屋さんは開いていないですよね。この花は家から持ってこられたんですか?」隼翔は頷いた。「そうだよ。うちの庭に咲いている花を全部切って、自分で包んできたんだ」「どうりで」唯花はその花束をちらりと見た。その花束は、薔薇だけでなく、いろんな種類の花でできていた。普段、隼翔はとても大雑把な性格をしている。彼の屋敷には草花はあるものの、今までそれらを観賞するような気持ちなどなかった。全て執事が人に指示を出し手配しているのだ。それで、全てが薔薇の花ではない。彼は家にある花という花を切ってこの花束にまとめたのだ。執事は隼翔が屋敷にある今ちょうど咲いている花を全部切ってしまったものだから、少し名残惜しそうにしていた。しかし、主人が好きな人を追いかけるためであれば、彼は琴ヶ丘の温室に行って車一台分の薔薇の花を買ってくることに決めた。それを敷地内にあるスペースに植えておけば、隼翔が好きな人に贈るのに便利になるはずだ。隼翔は少し黙ってから、小声で唯花に尋ねた。「もしかして、花の種類にまとまりがなさすぎて、お姉さんに嫌がられてしまったかな?」「いいえ、姉は社長から花束を受け取りたくないだけです」隼翔「……以前、お姉さんと佐々木俊介が一緒にいた頃、あの男は彼女に花を贈ったりしなかったのかい?」「もちろんありますよ。あの男が姉を追いかけている時は、いろんなプレゼントをたくさん贈ってきたし、それ以上に多くのラブレターを書いてきました。まだその頃は、二人とも学生でしたしね。それから、姉を誘って映画を見に行ったり、何か食べに行ったり」姉妹二人は互いに助け合って生きてきたから、俊介が唯月を追いかけている様子を唯花はずっと一部始終見てきたのだ。唯花は俊介と唯月が相思相愛になり、恋人から夫婦へ、また離婚して赤の他人になるのを見てきた。隼翔はそれを聞いて、自分はあまりに何もしていないと感じた。あのクズ男、佐々木俊介にも及ばないではないか。「妹さん、いろいろとアドバイス、ありがたい」唯花「……いえ、アドバイスするつもりはないんです。私は姉の味方です。姉がどんな決定をしても全て受け入れます。社長は
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