All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1531 - Chapter 1540

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第1531話

唯月は辰巳が向かってきているのに気づいた。そしてすぐに、咲に向かって言った。「柴尾さん、ちょっとお手洗いに行ってくるわね」咲の返事を待たずに、唯月はサッと席を離れて、辰巳にその場を譲った。唯月は辰巳が咲のことを追いかけていると知っている。しかし、咲は辰巳を遠ざけようと半月にも渡って避け続けてきた。そのおかげで唯花も何度もブルームインスプリングに足を運ぶことになってしまったのだ。「内海さん、私もお手洗いに行きたいです。ちょっと待ってください」咲は白杖を手探りで取り、唯月と一緒に行きたかったが、返事はなかった。「内海さん?」「彼女ならもう行ってしまったよ」すると辰巳の低い声が聞こえてきた。咲は無意識に杖を持つ手に力を込めたが、それも一瞬だけですぐにいつもの様子に戻った。「結城副社長」咲は距離感を漂わせるように辰巳に一声かけて、申し訳なさそうにこう告げた。「失礼します」その時、辰巳に腕を掴まれてしまった。「柴尾咲!」彼は低くかすれた声で彼女を呼び止めた。「いつまで俺を避けるつもりなんだ?」咲は手を引っ込めて淡々とした口調で言った。「副社長、私はべつに避けているわけではなくて、最近とても忙しいだけです」二人のおばと喧嘩したり、柴尾グループの社員たちの信頼を得るために走り回ったり、確かに辰巳とのことを考えるような暇はなかった。二人のおばは柴尾グループを奪おうと必死になっている。咲は目が見えないし、ビジネスのことなど一切理解できないから、会社が彼女の手に渡ったら終わりだと言うのだ。そして咲の二人いる従兄は柴尾グループで働いているし、継父からは重要視されていた。しかし、会社での地位は浩司のほうが上だから、そんな彼からの後押しもあり、咲が今優勢に立てている。「何を言ってるんだ、俺が毎日花屋に行ってもいつだって不在で、唯花さんが探しに行っても同じだ。唯花さんに電話もしてくれないじゃないか。携帯番号を変えるまでして、明らかに避けているだろう」辰巳は穴が空いてしまいそうなほど咲を睨みつけていた。「君がとても忙しいことはわかっている。あの来栖とかいう男と一緒にいるので忙しい、そうだろ?」辰巳のその言葉には嫉妬しかなかった。咲は浩司とは本当の兄と妹と思うような仲だと説明した。しかし、彼女は浩司のことを
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第1532話

咲は気まずくなった。辰巳は深く息を吸い、語気を和らげて言った。「杖の片方の端を俺に掴ませて、連れていってあげるから。その方が早く着けるし、人にぶつかる心配もないだろう」確かに結婚式のパーティーには人が大勢来ている。咲は目が見えないから、人にうっかりぶつかりかねない。「副社長……」「名前で呼んでってば」咲はまた唇を噛みしめて、結局こう言った。「お手洗いまでの行き方を教えていただければ、一人でも行けますから」「三つ数えるうちに杖の端を渡してくれないなら、抱きかかえて連れてくからな!」咲「……」この男を黙らせるために、咲は結局は杖のもう片方を辰巳のほうへと差し出した。辰巳はその端を掴むとするりと真ん中まで手を滑らせて持ち、彼女との距離を縮めた。「ついて来て」辰巳は低い声でそう言った。そして彼は、咲をお手洗いに連れて行った。「ここで待ってるから、もし三十分経っても出てこないようなら、女子トイレに入るからな」咲「……恥ずかしくないんですか」「君だって恥も気にせずいろいろやってただろう。俺に何か怖いものでもあると思うのか。俺の面の皮はこれでもかってくらい厚いんだから」咲は何も言えず、ゆっくりとトイレに入っていった。彼女もただ顔を水で洗い、頭をスッキリさせただけだった。自分は結城辰巳には相応しくない!それが結城おばあさんに選ばれた嫁候補だとしてもだ。彼はもっと素敵な女性を探したほうがいい。彼女はもし目が不自由でさえなければ、辰巳とのことを考えてもいいのにと思っていた。それから数分ほど中で意味もなく過ごしていたら、人が入ってきた。「入り口に立ってた人って結城家の辰巳さんよね?どうしてあんなところにいるんだろ?」「きっと誰か待ってるんでしょ」「結城家の御曹司たちが揃うと、本当にカッコよくて惚れ惚れしちゃうわねぇ」「九条さんの付き添いにいる男の人たちって、アイドルや芸能人よりカッコよくない?」この時、咲は知らない女性たちのその会話を聞いていた。そして辰巳が本当に入り口から離れていないのがわかった。彼女は心の中でため息をつき、また手を洗って、黒のサングラスをかけた。そして、白杖を手に持ち、何事もなかったかのように外へと向かった。咲が外に向かって歩き出すと、さっき入っ
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第1533話

「三つ数えるから、どうするか言わないなら、すぐに抱きかかえて行くよ」辰巳は咲が首を縦に振ろうとしないのを見て、最後脅すように言った。そして彼は本当に数え始めた。咲は彼から本気で気絶させられ抱きかかえられるのではないかと不安になり、彼が「二」まで数えた瞬間、すぐに遮って言った。「だったら、家まで送ってください。だけど、お酒をかなり飲まれたでしょ、飲酒運転はダメですよ」辰巳はニヤリと口元を上げた。「君を送るために、わざと一滴も飲まなかったんだ」新郎の付き添いで無責任なことをしてしまった。他の付き添いは、悟と共に祝いの酒を飲んでいたのに、ただ彼だけが飲んでいなかった。咲は何も言えなかった。次の瞬間、熱くしっかりとした大きな手が彼女の手を握った。咲はその手を振りほどきたかった。「ホテルの中は人がたくさん行き交ってるから、杖をついていると人に当たってしまうかもしれない。こうしておけば安心だろう」辰巳は咲がその手を振りほどく機会を与えず、彼女の白杖を取り上げて手を引いて歩いていった。只今、俺様を発揮中の辰巳には咲も対抗する手段がなかった。彼女は無表情で、辰巳にされるがまま引っ張られていった。そして少し進むと彼は立ち止まった。彼の車の前まで来たのだろう。そしてすぐ、車のロックを開ける音が聞こえた。辰巳は助手席のドアを開けると、咲を支えて車に乗せた。彼女が座るとシートベルトを締めてあげた。実際、この男は確かに偉そうな態度を取るが、それ以外は非常に気遣いがあった。咲はそんな辰巳の優しさに触れて、思わず自分の欠点が際立つように感じた。彼が話し合おうと言うなら、話し合おうじゃないか。逃げてばかりいては、確かに解決には至らない。咲は突然向かい合うことに決めた。辰巳はすぐに運転席に座り、理仁に電話をかけた。電話が繋がると「兄さん、咲さんを家まで送って来るから、悟さんに一声かけておいてよ」と伝えた。辰巳はパーティー会場から離れたので、戻るつもりはなかった。理仁はただ「ああ」と返事し、余計な事は言わなかった。電話を切ると、唯花が尋ねた。「どうしたの?」「辰巳から、先にここを離れるって。柴尾さんを家まで送っていくそうだ」理仁はワインを一口飲み、唯花に向かって言った。「今後、あいつのことで
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第1534話

そして、そう時間はかからず、柴尾邸へ帰ってきた。柴尾家には明りが灯っており、入り口と庭には多くの車が止まっていた。そして一台のトラックが止まっていて、荷物を家の中へと運んでいた。辰巳は車を停車し、咲に尋ねた。「引っ越しの予定でも?それとも、どこからか荷物を運んできたの?」「え?」咲はまだ車の中にいて、窓もしっかり閉まっているので、家のほうから何か音を聞き取ることができなかった。そして辰巳にそう尋ねられて、驚いた。彼女のこの反応で、辰巳はすぐに理解した。彼は言った。「家の前に数台止まっていて、庭にはトラックが止まってるよ。そこから家の中に荷物を運び入れているけど、引っ越して来たって感じだ。誰かを家に引っ越しさせる手筈だったの?」「ありません」咲はシートベルトを外し、白杖を掴んで車のドアを押し開け、外へ出た。「私の予想通りであれば、二人のおばが引っ越してきて住むつもりなんでしょう」咲に優しくしてくれているおばだけが、遠くにお嫁に行ったが、残り二人は近くで暮らしているのだ。そして今その二人は、加奈子と正一が刑務所にいるので、柴尾グループを奪い取り、この屋敷を占領する気なのだ。「ここに引っ越してきて家を占拠するつもりなんだろう。それから君たちの会社も」辰巳は最近の咲の動向を探っていて、あの二人が実家の財産を奪おうとしているのを知ったのだ。もちろん、表面上は柴尾家の二人のおばは聞こえの良い言葉を吐いていた。弟の流星に家業を継がせるとかなんとかだ。流星はおば二人よりも咲を信頼している。今、流星自身もこのことを知らなかった。彼は一カ月に一度家へ帰ってくるが、その時、咲は家の全ての使用人たちに、彼に隠しておくように指示を出していた。流星には両親は鈴を連れて旅行に行っていると思わせておくのだ。彼がまだ小学生だった頃、両親が鈴に説得されて、全寮制の学校へ転校させたのだ。普段家にはおらず学校で過ごしている。そして休みの日に家に帰って両親の姿がないのも、すでに慣れっこだった。流星は両親が自分のことを大切に思っていることは知っていた。特に父親からだ。なんといっても彼は一人息子だからだ。しかし、流星は咲のことを可哀想だと思い、いつも彼女のほうを味方していた。それで鈴の怒りを買ってしまい、両親も咲側につく彼のこと
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第1535話

「咲、私たちの荷物を放り出せる勇気があるってんなら、やってみなさいよ」「できないと思う?私の家よ。あんた達がここに住むのは許せないわ。だから何?」「ここは私たちの実家だって言ってるだろう!」咲は笑った。「おじい様とおばあ様の家こそあんた達の本当の実家よ。ここはあの二人の家じゃないからその実家とやらじゃないって言ってるでしょ。確かに私はあなた達にとっては姪に当たるけど、姪はおばを養う義務なんてないわ。だから、ここに住まわせるわけにはいかないのよ!」この二人のおばは正一の味方だ。実の父親の死について、咲を騙しさえもした。そして今、咲を助けることもなく、ただ咲を恥知らずだの、呪ってやるだの罵っていた。二人がその気なら、優しくしてやる筋合いはない。「あんたの父親が生きていたとしても、私はここに引っ越して住んでたわ。あんたの父親だって。私を追い出すことなんてできないんだよ。このめくらめ、私に対するその態度は何様のつもりだい。父親に代わってしっかり教育してやらないとね」一番上のおばである朱美(あけみ)が怒りを爆発させ、口喧嘩するよりも直接襲いかかってきた。しかし結城辰巳がここにいることをお忘れでは?咲に手を出してみろ。彼がこのような状況で黙って見てるわけがないだろう?彼は簡単に朱美の手首を掴んだ。「あんた誰だい?これは柴尾家のことなんだから、部外者は引っ込んでな!」朱美は力いっぱいもがいていた。辰巳は彼女の手を払いのけ、低い声で言った。「確かに他所の家のことには口を挟む暇などないが、咲は俺の婚約者だ。婚約者の家のことは俺にも関係がある。だから、俺が出てきて対処するのは当然のことだろう。この俺、結城辰巳の目の前で婚約者の妻に手を出すってか?お前、この俺が見えてないのか?」婚約者だって?柴尾家の二人のおばは互いに見つめ合った。咲の婚約の話など、今まで一度も耳にしたことはない。兄もその妻である加奈子も咲を嫌っているのだから、そんな咲の結婚などに意識を向けたことすらない。それに咲はこの柴尾家では透明人間も同然、普通の人も彼女に求婚することなどない。彼女と結婚しても何も得られないからだ。おば達は咲には彼氏すらいないことを知っている。金持ち家も咲を嫁として迎え入れることもなく、一般家庭でも目が不自由な彼女を避け
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第1536話

二人のおばが言った言葉は咲の心を突きさした。彼女はもともと自分は辰巳には相応しくないと悲観的だ。それなのにおば達の話を聞いて、やはり自分は辰巳から距離を取ったほうがいいと思った。目が不自由で何も見えない女だから。この時、辰巳は不機嫌そうに顔を暗くして二人に警告するように言った。「お前ら、咲のおばだから手は出さないでおいてやる!その汚い口を閉じておけ。咲のことをお前らがどうこう言う資格などない。俺が咲のことを好きなんだ、お前らの娘など俺の荷物持ちにも相応しくねぇよ!」咲が辰巳のプロポーズに応えてくれれば、将来結城家の若奥様という立場になる。朱美と樹里の娘たちなど、咲の使用人にも相応しくない。「お前らいつまでそこに突っ立ってるんだ?さっさとそのゴミを捨てて、綺麗に片付けろよ!」辰巳は声のトーンを高くして叫んだ。柴尾家のボディーガードは状況を把握し、咲の指示に従うことにした。二人のおばがいくら怒鳴り散らし、揉み合いへし合いしていたがボディーガードと使用人たちが寄ってたかって二人の荷物を外へと出し、屋敷の門の外へ投げ捨てた。それでも二人は柴尾家から出て行こうとせず、まだ口汚い言葉で罵り続けていた。咲は冷ややかな声で執事に告げた。「諸見さん、おば達はここから離れる気がないみたいだから、ナイフで車のタイヤをパンクさせて。どうせあの車で帰るつもりないんだし、いらないでしょ」「あんたね!」咲はソファの前まで行くと、腰をかけた。おば二人からいくら罵られようとも、それを少しも気に留めなかった。それに、二人と喧嘩をするのも億劫だった。どのみち、咲はこの二人を柴尾家に住まわせる気はない。咲は今はまだ目が見えない。二人がもしここに引っ越して暫く住み、また出かけた時、咲の家にあるものを勝手に持っていったとしても、咲は分からないのだ。そんなふざけた考えを咲が察知していなかったわけない。おば二人は自分の都合の良い状況になるのを虎視眈々と、いつも狙っているのだから。そしてこのような状況が少し続いた。最終的におば二人はかなり腹を立たせた様子で帰っていった。それに、非常に速いスピードで去っていた。もし少しでも遅れたら、タイヤを本当にパンクされるかもしれないと思っているからだ。家を出ると彼女たちは声を揃えてこう言った。
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第1537話

朱美と樹里は、甥である流星はまだ大人になっていないため、全く眼中になかった。この二人は、弁護士を通して正一と加奈子には重い刑罰が下ることを知った。特に加奈子のほうだ。裏社会の人間と通じていたことで、恐らく十年以上、二十年ほどの刑になるかもしれない。正一が実の弟を殺害したことがもし警察の調査によって明らかになったら、彼にも重い刑罰が課されるはずだ。正一と加奈子の二人が残りの人生の多くの時間を刑務所で過ごすことになった。柴尾グループには価値があり、ビジネスもかなり拡大している。それをみすみす目の見えない咲に渡すわけにはいかない。彼女たちは絶対に会社を奪い、それぞれ半分ずついただくつもりだった。少なくともお互いに百億は得られるはずだ。「姉さん、お兄さんの裁判はいつになるのかしら。私たちも出廷して証言しないといけなくなるかな?」樹里は兄が起こした事件のことを思い、急に小声で姉に尋ねた。彼女たちには正一と加奈子が弟を殺害したという証拠は持っていない。しかし、弟の死は彼らに関係していることは知っている。その証拠は大昔に正一たちが隠滅してしまった。この二人は昔から正一と仲がよく、下の妹と弟の二人が仲が良かった。弟が亡くなった後、妹が正一と大喧嘩してからというもの、かなり傷つき失望の末、あまり実家には戻らなくなってしまった。そして、咲が病気で死にそうになってから、やっと何度も戻ってくるようになった。「様子を見ましょう。もし、咲に兄さんを地獄に落とせるような力があるなら、私たちはただおとなしくしていればいいわ。もし、そうじゃなくても何もしないほうがいい。今回の件で兄さんを刑務所に閉じ込めておけないなら、すぐに出所してくるんだから」兄である正一の助けがあり、彼女たちは結婚後も支えてもらっていた。自分たちにとって何かメリットがあるからこそ兄の味方でいたわけだ。もし、咲が正一と加奈子の二人を再起不能にしてしまえば、朱美と樹里はただ咲一人と財産争いをするだけでいい。しかし、咲にそのようなことができてしまうほどの力があるなら、彼女たちが財産を争うというのも困難な道じゃないのだろうか。普段、目の見えない咲は役に立たない人間かと思いきや、まさかここまでできてしまうとは二人も思っていなかった。正一が捕まってしまうと、咲はすぐに副社長である来栖を丸め
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第1538話

辰巳はお茶を持ち上げて優雅に一口飲んだ。「結城辰巳さん」咲は彼に面と向かって落ち着いた様子で口を開いた。「私はあなたの婚約者ではありません!」「今はそうじゃなくても、いつかは必ず婚約者になるんだ。それに妻にだって」辰巳は有無を言わさぬ口調で続けた。「咲、俺は君に決めたんだ。君以外とは結婚しない。君が逃げようが受け入れようが、どっちみち俺は他の女なんか妻にするつもりはないよ。この前、ひどいことをしてしまった。あれは俺が間違っていたよ。君が怒るのも無理はない。だけど、後悔はしてないんだ。俺は君のことが好きだからキスしたいと思った。周りの奴に君は俺のものなんだって見せつけたいんだ」咲は辰巳が高圧的な口調で話すものだから、何も話したくなくなった。彼女が何を言っても、彼は何も聞き入れないといった感じだ。「咲、今後は二度と俺を避けようとしないでくれ」辰巳は咲がいるほうへ座り、手を伸ばして彼女のカバンを取った。「ちょっと、何をするんですか」咲は自分のカバンを奪い返そうとしたが、辰巳が片手で彼女を掴み、カバンを持つもう片方の手を上にあげた。彼女は見えないから奪い返すことができなかった。「慌てないで、俺はただ君の携帯番号を知りたいだけだ」辰巳は立ち上がると、そのカバンを開き、中から携帯を取り出して自分の携帯番号にかけた。これで咲の携帯番号は無事手に入れることができた。「もしまた携帯番号を変えるなら、今度は花屋に引っ越して暮らすからな。もう逃げられないぞ」彼女を脅せばどうにかなるとわかり、辰巳は図々しい態度を取り始めた。話の通じない男と化し、あらゆる脅しをかけてきた。そのせいで咲は彼を叩き出してしまいたくなった。「明日、君には二人ボディーガードを手配する。婚約者なんだから、俺が守る」辰巳は続けた。「結城家のボディーガードはみんな強いんだ。君の傍に置いておけば、俺も安心できる」それにいつでも彼女の動向を把握できる。「別にあなたに守ってもらわなくても大丈夫です」「咲、意地を張らなくていい。確かに俺は君のことを完全に理解しているわけではないし、君は多くのことを隠しているだろう。だけど、君は目が見えないから、この点だけで不利になってしまう」辰巳は彼女の携帯番号を手に入れると、彼女の携帯をカバンに戻した。
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第1539話

「明日から、毎日咲には花をプレゼントしに行くよ。正式に君を追いかけていると全ての星城で暮らす人たちに知らしめてやるんだ。柴尾咲は今後俺の庇護下にあるんだってね」咲「……」「もう一度言っておくけど、もしまた俺から逃げようとしたら、花屋で暮らすことにするからね。それかここに引っ越してきてもいい。あの店もこの家も捨てる覚悟じゃないと、俺からは逃げられないぞ」咲「……」この時、咲はあまりの怒りに言葉が出なかった。それとは逆に辰巳のほうは非常に気分が良さそうだ。半月もの間ずっと無視され続けた彼はかなりつらかった。そんな気分にされた分、きっちり利子付きで返してもらわなければ。「もうこんな時間だから、早めに部屋に戻って休んだほうがいい。明日朝一でここに来て一緒に朝食を取るよ。店まで俺が送る。もし、明日の朝、君の姿が見えなかったら」彼は細長い指でまた彼女の赤い唇を突いた。本気でなりふり構わずその唇に喰らいつきたい衝動に駆られた。「どうなるかわかってるよな」咲はギリギリと奥歯を噛みしめた。「あなた、本当に理不尽な人ね!」「ああ、そうだよ。俺がまだ紳士でいる間、君はどうしても俺を無視し続けて、ひたすら避け続けただろう。だったら、話しの通じない理不尽な奴になるしかないさ。それでやっと君をうまく取り扱うことができるんだからな」咲「……」「早めに休んで、俺はこれで失礼する。おやすみ」うまく咲を丸め込むことができたと思っている辰巳は、機嫌よく鼻歌を歌いながら柴尾家を後にした。九条家では。新郎の悟はかなり酒に酔っていた。付き添いの理仁たちも招待客たちからの乾杯を悟の代わりに受けていたが、それでも人が多すぎたので、悟は酔っぱらってしまったのだ。悟は足元がおぼつかず、弦が彼を支えて家に戻ってきた。明凛はその後ろに続いた。彼女もかなり飲んでいて、頬をポッと赤くさせて更に色っぽさが増していた。弦は悟を横にさせて、明凛に言った。「牧野さん、悟は君に任せますよ」「ここまで連れてきてもらって、ありがとうございました」明凛は急いで弦にお礼を言った。多くの親戚や友人たちが結婚したばかりの二人の部屋に押しかけて騒ぎ続けたいと思っていたが、新郎の悟が立てないほど酔っぱらっているのを見て、その考えを引っ込めた。「悟もこんなに
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第1540話

以前の行いのせいで、悟はわざと酔ったふりをしていた。「明凛」誰も部屋にいなくなったので、思う存分二人きりの新婚の夜を過ごすことができる。悟は明凛に近づき、明凛を抱きしめてベッドの端に座ると、彼女に熱い視線を送った。「明凛、時間ってのは貴重なものなんだから、無駄にできないよね」彼はそう言いながら明凛にキスをしようとしたが、手で押し退けられてしまった。「まだ化粧も落としてないし、着替えだってしてないでしょ。お風呂にも入らないと。あなたもよ」明凛はそう言いながら立ち上がり、ドレッサーの前までやって来ると、まずはネックレスなど一つずつ外していった。今日の彼女はとても綺麗だ。悟が贈ったジュエリーは多く、ショップを開けるくらいあった。実家が彼女のために用意した宝石たちも大量にあり、出かける時には、首元、両手は宝飾品だらけで、あまりの輝きに目が痛くなってしまうくらいだった。明凛はその時の自分はまるで移動式のジュエリーショップのように感じた。「明凛、今日は本当に綺麗だよ」悟は彼女に近寄り、妻を褒め称えた。「私が綺麗じゃない時なんてあるっけ?」悟はケラケラと笑った。「いや、俺の奥さんはどんな時だって綺麗だよ」彼も明凛のつけているジュエリーを外すのを手伝いながら笑って尋ねた。「明凛、今日は疲れた?」「疲れはしたけど、とっても幸せよ。まさか結婚式で、自分がこんな大富豪みたいになるなんてね」「俺も幸せすぎ。こんな大富豪のお嬢さんと結婚できるとはね。五十年分もう働かなくていいだろ、もう毎日ダラダラのんびり暮らしていける。今後、理仁が残業しろと言ってきても、無視しよう。俺は奥さんに養ってもらうからさ」それを聞いて明凛は笑い出した。「ちょっと悟、からかわないでよね。あなたがいるからこそでしょ」悟は後ろから彼女を抱きしめて、幸せをかみしめた。「明凛、君にあげられるものは全てあげるよ。今後、俺が結城グループで稼いでくる給料だって全部君のものさ。だから一生俺を愛してくれよな」「お互いにね」夫婦で互いに努力すればこそ結婚生活は続けていける。だから明凛は、ひたすら自ら悟に何かをやってあげることはしない。悟から愛され、尊重されるのであれば、それと同じように彼に接するのだ。明凛は振り返り、両手を彼の首に絡め
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