朝になり、新しい一日がまた始まった。唯花が目を覚ました時には、すでに姉は起きた後だった。唯月が退院してから、唯花は姉が家でちゃんと静養しているか見ておくために、暫くは一緒に暮らそうと言って譲らなかったのだ。唯月は確かにまだ休む必要があり、三歳の子供も世話をする必要があるから唯花の言う通りにした。それで唯月と陽の親子は妹夫妻の住む瑞雲山邸で暮らしている。唯月は陽を連れて庭を散歩していた。この季節の星城は、もう少し汗ばむ気候になっている。昼間に太陽が照りつけるときには多くの人が我慢できずにクーラーをつけている。しかし、朝はまだとても涼しく過ごしやすかった。屋敷の朝は非常に静かで、唯月はこの時間帯が好きであり庭で散歩をしていた。なまった体を動かすこともできるし、咲いている花を観賞することもできる。理仁は特別花が好きなタイプではない。以前、屋敷に植えていた草花はただ景観をよくするためだったが、今では至る所に花が咲き乱れていた。もちろん、唯花が花を育てるのが好きだからだ。理仁は琴ヶ丘邸にある温室から多種多様な美しい花を持って来て、唯花に毎日楽しんでもらいたいと、ここ瑞雲山邸のほうへ移し替えた。陽はこの日の武道の稽古は休みだ。それで彼はかなり喜びはしゃいでいた。確かに暫く稽古を続けてみて、すでに慣れてはいたが、たまには休んで母親にべったりくっついていたいのだ。「ママ」陽はある花の植木鉢の前で立ち止まり、母親のほうを向いて尋ねた。「ママ、このお花とってもいい?」「どうして?」唯月は最初から駄目だという前に、まずはどうしてなのか尋ねた。陽はキラキラと大きなその目を輝かせて言った。「このお花とってもきれいだから」「それで?」すると、陽はどう返事をしていいかわからなくなってしまった。唯月はしゃがんだ。「陽はただこの花がとっても綺麗だから、とって遊びたいって思ってるの?」陽は頷いた。とても綺麗に咲いているものだから、それを摘み取りたいのだ。「陽がこの花を綺麗だって思うのよね。じゃあ。他の人だって同じように綺麗だなって思うよね。もし、綺麗だなって思った人が陽と同じように花を摘み取って遊んでたら、すぐにここには花がなくなって、観賞できなくなっちゃうんじゃない?陽は、花がなくて枝と葉っぱにな
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