All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1561 - Chapter 1570

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第1561話

「辰巳、今年中に咲さんと結婚できるように頑張りなさいよ」辰巳は自信たっぷりに言った。「もちろん、今年中には母さんも嫁に会えるさ」「はいはい、じゃ、邪魔したわね。私はこれから栄達さんのところへ行ってくるわ」辰巳はひとこと「わかった」と返事し、母親が電話を切るのを待った。薫子は息子との電話を終わらせると、立ち上がって出かけていった。薫子は麗華、麻実の二人とはまるで本物の姉妹のように仲が良い。理仁夫妻が帰ってきたと知り、彼女も麻実も本家へと向かった。本家のほうはとても賑やかになっていた。その中で最も人気だったのが、お利口で可愛らしい陽だ。この日は風の強い日で、芝生で凧あげをするにはうってつけの天気だから、蓮は陽を連れて遊びに行きたがった。そこへ理仁が蓮に尋ねた。「休みの宿題はもう終わったのか?」蓮は得意げに言った。「昨日の夜にもう終わらせたよ。そうじゃなかったら理仁兄さんに会う勇気なんてないよ」「どうやら宿題は少なすぎるようだな。たった一晩で終わってしまうのだから」蓮は高校二年になったばかりで、三年になるまでもまだ時間があるから、気持ち的に楽な時期だ。「そんなことないよ。教科ごとにめっちゃ宿題出されたんだからね。昨日は深夜までずっと宿題やってようやく終わらせられたんだぞ。休みに兄さんたちと一緒に遊ぶために頑張ったんだからな」これまで、こういった連休には宿題をせねばならず、それを終わらせない限り、兄たちに遊びに連れて行ってもらえないのだった。そして蓮は非常に頭が良く、毎回休みに入ると、夜中を過ぎたとしても初日に必ず宿題を終わらせていた。そうすれば堂々と兄たちと休みを満喫できるからだ。「お前には何冊も問題集を送ってもらおう。多めに問題を解いて、たくさん勉強するんだぞ。良い大学を受験して、兄さんたちに恥をかかせるんじゃないぞ」それを聞くと蓮は少し表情を暗くさせて、陽を抱いたまま唯花のほうへ向き言った。「唯花姉さん、理仁兄さんのことしっかり見張っててくださいよ。こんな連休なかなかないんですから、宿題だってもう全部終わらせたんです。それなのに、休まず問題集を解けだなんて、兄さんたちと一緒に遊びたいのに」蓮は初めて唯花に会った時に、しっかり彼女と仲良くなって関係を築いておいた。彼はその時、あのいつも偉そうで他
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第1562話

机の上に山積みとなった問題集を想像しただけで、蓮は身震いした。「じゃ、一日は思いっきり遊ぶことにするよ」蓮はおとなしくそう従った。それ以上連休に高望みはできない。末っ子が従兄たちから問題集を解くよう迫らせているのを見ても、麻実はそれが聞こえていないかのように、全く口を挟まなかった。蓮は従兄弟たちの中で最年少であり、一番下というのはとても可愛がられるものである。息子が八人もの優秀な従兄たちに構ってもらって、母親である麻実は何もする必要がなくて楽だった。「陽君、行こ行こ、一緒に凧あげに行くぞ」貴重な一日の休みを無事手に入れた蓮は、陽を連れて飛ぶように駆けて行った。隼翔は蓮だけでは安心できないので、彼らについていくことにした。隼翔は引き続き陽の攻略を考えていた。陽にかなり気に入られ、あの佐々木俊介の地位を奪い取り、陽の新しい父親となるのもそう遠くはない。「薫子さん、咲ちゃんのおばさん達二人が来たらしいじゃないの。何の用だったの?」おばあさんはこの時、薫子に尋ねた。薫子はそれに答えた。「あの二人は礼儀をわきまえない者たちでしたわ。ここまで押しかけて来て、咲さんは目が不自由だから辰巳には相応しくないと言ってました。それで私の咲さんに対する印象を悪くして二人の仲を引き裂かせようって作戦だったのでしょうね。あんなのが咲さんの実のおばだなんて信じられません」おばあさんは尋ねた。「それに何て言ってやったの?」「咲さんの目が見えなくても、我ら結城家は彼女を嫌うことはないと言っておきました。咲さんが辰巳と結婚しても別に結城家でやらねばならないことなんてありませんもの。ただお金を使っていてくれれば十分です、と申してやりましたら、あの二人ったら怒って頭から湯気を出していましたのよ」おばあさんはそれを聞いて非常に満足していた。そして彼女は言った。「咲ちゃんは弱い子ではないもの。彼女が不利なのは、まだ目が見えないままで回復していないことね。だけど、彼女の目は治療することができるわ。辰巳は名医のお弟子さんがA市に戻ってくるのを待って。酒見さんに診てもらえばいいの」薫子は心配して尋ねた。「その酒見医師は咲さんの目を治すことができるのでしょうか?彼女のおばからあの子は十年ずっと目が見えない状態だと聞きました。数多くの眼科医に診てもらっても、全く効
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第1563話

麗華が言った。「咲さんって子も可哀想な子ね。神様はきっと見捨てたりしないはずよ」嫁である唯花は一般家庭出身者だが、いたって健康な子だ。そんな唯花もかなり努力している。麗華は以前、唯花のことを不満に思っていた。目の不自由な咲と比べてみると、彼女は唯花を嫌うようなことはなかった。それに、長い時間付き合ってみて、嫁と姑の仲も深まっている。おばあさんは言った。「あの子は見た目より弱い子ではないわよ。さあ、若者は遊んでいらっしゃいな。私たち年寄りに付き合う必要はないから」おばあさんは孫たちに遊びに出かけるよう勧めた。理仁は唯花と一緒に陽を探しに行った。唯月は隼翔に会いたくなかったので、部屋に残り年配者たちと一緒にいることにした。彼女たちのおしゃべりを聞いていて、特に夫人同士の会話には唯月はついていけなかった。しかし、唯月は卑屈になるようなことはなかった。彼女は自分が上流社会に混ざったことがないので話についていけないのは当然だと思っているのだ。彼女自身が事業に成功したその暁には、自然とその貴婦人たちの世界に溶け込んでいけることだろう。「唯月さん、おばあちゃんと一緒にちょっと気晴らしに散歩しに行きましょ」おばあさんは唯月と話がしたいと思っていた。「はい」唯月は微笑み立ち上がって、おばあさんのもとへ行き体を支えようとした。おばあさんは自分で立ち上がり、支えてもらう必要はなかった。麗華は二人が去ると、薫子と麻実に言った。「唯花さんのお姉さん、かなりスリムになられたわね」彼女は以前、唯月が裕福そうな感じがあると思っていた。そして、今また前よりも痩せていた。「かなり痩せてしまったみたい。彼女に会ったのは数える程度しかないけど、彼女といったらあのふくよかな感じが印象的だったもの。でも、あんな事件に巻き込まれて、痩せてしまうのも当たり前よね」つまり唯月が怪我をして入院したからだ。今の唯月は、ほぼ結婚前の体重に戻っている。彼女はおばあさんと一緒に家を出ると、おばあさんに案内されて蓮の花が咲く池のほうへと歩いていった。琴ヶ丘にある蓮の池は非常に大きい。六月に花が咲き乱れる頃、観賞するとかなり風流さを感じられる。今はまだ蓮の蕾がつき始めたばかりだ。「唯月さん、隼翔君があなたのことを好いているのは知っているん
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第1564話

おばあさんは笑って言った。「かなり前からお見通しだったわよ。隼翔君は最初あなたのことが好きだと認めなかったけどね。彼は陽ちゃんのことが好きだから、母親であるあなたに優しくしているんだって思い込んでいたのよ。それか、最初は陽ちゃんのことが気に入って、その後だんだんあなたのことを好きになったのかもしれないけど」すると唯月は顔を赤くして言った。「おばあ様、私は彼のことは何とも思っていません。東社長は私に告白してきましたが、私はそれをやんわりとお断りしました」「それは東夫人のせいかしら?あの人は別に悪い人ではないのよ。ただ、家柄にこだわりすぎているだけ。実を言うと、結婚というものはやっぱり家柄が釣り合うほうがいいもの。だから彼女があそこまでこだわるのは責められるものじゃないのよね」「私も結婚は家柄が合う同士が良いと思っています。私と東社長では釣り合いません。それに、私は本当に今まで一度も彼と恋人になるとか考えたことがないのです。ただ、彼は店舗を貸してくれて、私はただの借主であるだけなんです」唯月には玉の輿に乗ろうという考えなどなかった。唯花が名家に嫁いだのは、それは妹の運命であっただけで、別に玉の輿に乗りたいと思っていたわけではない。それに妹は本当に幸運の持ち主だったのだ。夫側の家族たちは揃って妹を毛嫌いすることはなかった。しかし、妹のプレッシャーもかなり大きいらしい。もし、夫婦仲が良くなければ、唯花はのしかかる大きなプレッシャーを受け止めることはなかっただろう。さっさと理仁と離婚する道を選んでいたはずだと唯月ははっきりと言える。彼女たちは一般家庭出身で、普通の人生を送りたいと思っているだけだからだ。「私から心に思っていることを言うわね。他の男性ならあなたに相応しくないでしょうけど、隼翔君は違うわ。彼はあなたにぴったりだと思うの。彼は名家出身ではあるけれど、若い頃はトゲトゲして反抗的だったし、家を出て長い間外の世界で苦労して生きてきた子なの。彼なら、あなたが望む普通の生活を一緒に過ごすことができるわ。彼は高級車は趣味として好きだけど、それ以外はとても控えめな生活を送ってる。豪勢な暮らしを求めてはいないわ。彼があなたの望む世界に溶け込むのは簡単よ」唯月は少し黙っていてから口を開いた。「おばあ様、私は一度結婚に失敗した人間です。私と佐々木
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第1565話

おばあさんはため息をついた。これ以上隼翔に代わって唯月の説得をするのは諦めた。おばあさん自身も、隼翔が一生唯月のことを愛し、大切にすると言い切ることはできない。「あの佐々木一家はまだあなたに付き纏っているの?」おばあさんは話題を変え、心配して唯月に尋ねた。「唯花がうちの祖父母に頼んで、佐々木一家と同じマンションの階に住んでもらっているんです。あの一家が出かけようものなら、うちの祖父母が借りている部屋の前で彼らをせき止めてるんですって。それで今、元夫側の家族はあまり私の前には現れなくなりました」おばあさんは笑って言った。「それはいい方法じゃないの。あなた達とおじいさん達は関係はあまり良くないでしょうけど、実の孫には変わらないのだものね。内海家と佐々木家は元々わだかまりがあったから、あなた達の手助けをしたというわけね」「唯花は伯父達が入れている家賃をそのまま祖父母にあげて、あの家に住まわせています。生活費をもらう形だから。もちろん私のためにやってくれてるわけです」唯月は、もし祖父母にとって利益となることがなければ、絶対に助けてくれることはないと思っていた。おばあさんは少し黙ってから言った。「少しくらいの恩恵を与えてあなたが困っている事を解決してくれるなら、それはそれで良いことだわ。それに、あの人たちはあなた達姉妹の祖父母なんだから」唯月も少し黙ってから、また少し考えて口を開いた。「たまに、姉である私は役に立たないって感じることがあります。いつだって唯花がいろいろ手配して、私のためにやってくれていますから」「そんな言い方をしてはダメよ。あなた達の両親が亡くなってから、唯花ちゃんに姉であるあなたがいなかったら、施設に入れられてどんな生活を送っていたことか。それはあなただってわかるはずよ。あなたは唯花ちゃんにとって姉であり母親でもあるのよ。姉妹は互いに助け合って生きていくものだわ。あまり変なほうに考えてはいけないわよ。あなたは十分に唯花ちゃんにたくさんやってあげたでしょう」おばあさんは唯月の手をとり、手の甲を軽くポンポンと叩いてあげた。「唯月さん、あなたは大丈夫。自分を見失った時期もあったけど、今は苦しみから抜け出ることができた。自分を信じてあげて、あなたはこれからもっと幸せになれるのだから」「おばあ様、ありがとうございます
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第1566話

「あずまおじたん」陽は凧の糸を手に持ち隼翔の前に駆けて来た。隼翔は微笑んで陽を抱きしめ、凧の糸に手を伸ばして持ってあげた。「楽しいかい?」「楽しいよ。れんおじたんが後でゆうえんちに連れてってくれるんだ」陽は琴ヶ丘に来たのは二回目だ。彼は叔母の夫である理仁の家には大きな子供用の遊園地があって、とても楽しかったのを覚えていた。隼翔は愛しそうに陽を見つめて言った。「おじさんも陽君と一緒に子供用の遊園地に行けるぞ」「おじたんは、おとなでしょ?れんおじたんはまだこどもなんだって。だかられんおじたんと遊んだほうがもっと楽しいよ」大人は子供のように心からはしゃげないだろう。陽はそのことをよくわかっているらしい。隼翔は陽の頭を撫でて笑って言った。「陽君は、蓮おじさんがいると、東おじさんは要らなくなったかな?」陽はボソッと呟いた。「あずまおじたんは、レゴしかできないもん」隼翔「……」隼翔は陽のことが大好きだが、どうやって彼を喜ばせればいいのか、この点自分はまだまだわからず未熟だと自ら認めていた。陽に出会うまで他の子供を気に入ったことがなかったからだ。「陽君、おいでよ。どっちのほうが高く飛ばせるか競争だ」蓮は自分の凧を飛ばしてから、陽に向かってそう叫んだ。すると陽はすぐに自分の凧を引っ張って蓮のほうへ駆けて行った。隼翔は愛おしそうな笑みを浮かべて見ていた。この時彼が考えていたのは、自分が普段暮らしている家を拡大工事し、その中に陽専用の大きな子供用の遊園地を建てようということだった。理仁と唯花はそのシーンを見ていた。彼らが凧あげをして遊ぶ邪魔はせずに、二人手を繋いで木陰になった小道をゆっくりと歩いていた。この良い雰囲気の二人を邪魔するような空気を読まない輩は誰もいない。「理仁」理仁は名前を呼ばれて唯花のほうへ顔を傾けた。唯花は言った。「おばあちゃんが言っていた私がやるべきことについてだけどね、何店舗かを管理するのかなと思ってたら、あの帳簿を見て驚いちゃったわよ。いくつもある本棚は全部帳簿が詰まってた。結城家の女性はこれらすべて管理しないといけないのね?」理仁は笑って言った。「そうでもないよ。長男の奥さんがあれらの管理をするんだ。結城家の一族が関わる事業全てなんだよ。それから、本家であるうち独自でや
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第1567話

「あまり自分にプレッシャーをかけるんじゃないぞ。ばあちゃんがさっきああ言っていたのは、少なくとも数年かけて君に完全に任せるってことだから。いくら頭が良くてすごい奥様だったとしても数年かかってやっと引き継ぎができるんだから。君は時間がある時に帳簿を見に行ってみて。まずはどの事業がどこで展開されているのか、どんな商売をしているのかを覚えて、他はまたゆっくり知識を増やしていけばいいから」唯花は頷いた。「お義母さんもそう言ってたの。彼女でも二、三年かけて引き継ぎができたんですって」「店舗や不動産の数がここまで多く増えたのも、それぞれの家の夫人たちのおかげなんだ。稼いだ金は使い切れないほどあるから、また新しく店舗や家を買ったり、他に投資をしてもいい。つまり、金が金を生むってやつだな」唯花は言った。「それを聞いてもやっぱりプレッシャーが大きいわよ。私は投資の入門段階なんだからね」「難しいことはないよ。ただいくつか店舗を購入すればいいだけだから。場所が良くて将来性があるようなら買えばいいんだ。俺らも自分たちの稼ぎから何か事業を起こしてもいいんだよ。家によっては女性が投資して商売をするのを嫌うところもあるけど、うちは違うから」名家の中には、女性が嫁いでくるのを嫌がる家もある。ただその家の夫人としているだけで、表に立って商売をすることなど許さない場合もあるのだ。そんな家の男は、もし自分の妻が外で商売をするようなら、まるで彼らが金の稼げない無能な男だと思われると考えているのだった。結城家にはそのような考えなどない。麗華、薫子、麻実の三人があまり表に出てこないのは、実際、彼女たちが人に知られないところで投資をし商売をしているからだ。稼げると判断すれば、各業界の様々な事業に足を踏み入れているのだ。とにかく、結城家では未成年の蓮だけがビジネスをやっていない。彼は今いくつかの家を持っているだけだ。それは彼が結城家から毎年受け取るお金を貯金しておいて、その利子を加えて買った物件だ。一般家庭の子供と比べれば、彼は親のおかげでそのようなことができる。なにせ、一般人は一生かけてようやく一軒家が買えるぐらいなのだから。結城家のそれぞれの資産はかなりのものなのになる。理仁に関しては言うまでもない。理仁が所有する大小の会社だけでも、一体いくつ存在しているこ
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第1568話

唯花は理仁に寄りかかっていた頭を起こし、噂話が気になる様子で彼を見ていた。「占い師の先生は何て言ってた?九条さんは治るの?それとも、ただ言い訳として嘘をついていただけ?」「弦さんの父親が調べてみたところ、弦さんは嘘は言っていないことがわかったみたいだよ。それに彼だってあんな嘘までついて言い訳にすることはしないだろうし。いくら弦さんがすごい人物だとしても、今九条家を管理しているのは父親だ。父親がまだその目を光らせている間は、弦さんだって逃れることはできないさ」「じゃあ、彼は本当に女性には興味が持てないってこと?」理仁は頷いた。弦があれからどうなったかは、理仁が結城おばあさんに纏わりついてやっと聞き出したことだった。「じゃあ……弦さんを診てくれた人は何て言ってたの?」九条弦は非常に優秀な男だから、女性に興味を持てないのであればとても残念だ。性的感情を抱かないような人は、他者に性的に魅力を感じにくく、周りの人たちのように恋愛を楽しみ、結婚するかは自然の成り行きに任せるしかない。弦はただ女性に対して性的な欲求や恋愛感情を抱けないだけで、他は生活に支障が出ることはない。「先生が言うには、彼はいつかきっとその運命の相手に出会えるんだけど、いつになったら会えるのかまだ予想できない。今は待つしかないんだって」「彼は東社長と年齢的に同じくらいなんだよね?運命の相手を待っていたら、結婚して子供を生むのは四十を過ぎるんじゃない?」「そこまで時間はかからないんじゃないかな。きっとあと一、二年くらいだろう。隼翔は弦さんよりも少し年上だ。俺は逆に弦さんのほうが隼翔より早く結婚しそうな予感がするよ」唯月は隼翔に対して、今全く興味を持っていないからだ。それに唯月は一度、この愛情というものに傷つけられているのだから、簡単に彼女の気持ちを溶かすことはできないはずだ。さらにはあの東夫人こと美乃里が中間で障害となってしまう。唯花は姉と隼翔のことを思い出し、黙った。「理仁、その先生って本当にすごい方なの?」「そうじゃなかったら、うちのばあちゃんの前でデタラメは言えないだろう」唯花は笑って言った。「デタラメは言えないだなんて、前回会った時には、あなた彼に対してすごく謙虚でいたじゃないの」理仁は唯花の顔にキスをして、微笑んだ。「それはた
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第1569話

唯花は今自分がまずやらなければならないことは、結城家のすべてのビジネスを把握することだと思った。彼女が将来、結城家の女主人となる準備を始めなければならない。余計なことに気を取られている場合ではない。これ以上妊娠するしないに悩んでいても仕方ないのだ。理仁は再び彼女を抱きしめ、耳元で低くかすれた声で何か呟いた。すると唯花の顔が一気に赤くなり、理仁の太ももをつねった。理仁はそれに合わせて叫んだ。「唯花、夫を殺す気か」「何言ってんのよ、私力入れてないわよ。出荷前の豚じゃあるまいし、叫ばないでよね」理仁は大きく笑った。そして同時刻の神崎家では。この時、詩乃が執事と見知らぬ男性に体を支えられて入ってきた。そして出かけようと思っていた姫華がその状況を見て、手に持っていたカバンをソファに放り投げ、急ぎ足で母親のもとへ駆けつけると声をこわばらせて尋ねた。「お母さん、一体どうしたの?」姫華は母親がちょっと気晴らしに出かけてくると言っていたのを覚えていた。詩乃は支えてもらって、ソファに腰掛けると話し始めた。「うっかり転んでしまって、足首を捻ってしまったのよ。ちょうど白鳥さんが通りかかって、ここまで送ってくださったのよ」姫華は母親の前にしゃがむと、詩乃の服が汚れていて本当に転んだのがわかった。それから足を確認すると、赤く腫れていて確かに捻挫しているようだった。姫華は執事に塗り薬を持って来るよう言いつけた。彼女は立ち上がると、見知らぬ男性にお礼を言った。「白鳥さん、どうもありがとうございます」白鳥という男は三十過ぎで、非常にイケメンだった。姫華はなんだか彼を知っているような気がしたが、彼とは確実に知り合いではない。この高級住宅地で転んで負傷した母親に出くわしたということは、白鳥もこの近くの住民なのだろう。姫華は白鳥に会ったことはないが、やはりどうも見たことがあるような気がした。白鳥は言った。「大したことではありません。お怪我をされた人を見れば、誰だって送り届けるでしょう」「姫華、白鳥さんは理仁さんの従弟よ。彼とは同い年なの」この時、詩乃がそう教えた。つまり、麗華の実家白鳥家の人間で、麗華の甥なのだ。白鳥家も名家であるが、あまり目立つようには暮らしていない。もし、麗華が結城家に嫁いで、結城家の女主人となって
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第1570話

そして姫華は外に出るまでずっと白鳥にお礼を言い続けた。白鳥は笑って言った。「本当に大したことはしていませんから。それに、私たちは親戚でもあります。神崎さん、そんなにかしこまらないでください」邸宅の門の前で白鳥は立ち止まり、姫華を見つめた。そして、スーツの内ポケットから常に持ち歩いている名刺入れを取り出すと、姫華に名刺を差し出した。「神崎さん、これは私の名刺です」姫華は彼から渡された名刺を、ちらっと見た。彼の名前は白鳥一颯(しらとり いぶき)。現在、白鳥グループの副社長をしている。社長は彼の実の兄だ。姫華は一颯から名刺を受け取った後、こう言った。「母を送ってくださって、ありがとうございました。白鳥さんのご都合が良い日に、是非一緒にお食事しましょう」一颯は笑った。「ええ、神崎さん。それでは、私はこれで」姫華は彼が車に乗るのを待って、手を振っていた。そしてその場に立ったまま、彼が車で去っていくまで見送った。そしてこのシーンを、ちょうど隣の屋敷から出てきた善が目撃していた。ゴールデンウィークの休みに、善は音濱岳には帰っていなかった。彼は家族に新しく購入した家の内装工事があるから、何か問題が起きないように確認するため、休みには家に帰らないと伝えていたのだ。実は、この休みを利用して姫華をデートに誘おうと思っていたのだ。彼が姫華に告白してから、彼女は受け入れることも、拒否することもなかった。それで善はまだチャンスはあると思っていた。それに幸いにも、暫く交流する中で、彼は姫華が自分と一緒にいる時は、心から楽しそうにしてくれていると感じられた。鉄は熱いうちに打てと言うだろう。もちろん、善はその絶好のチャンスを逃すつもりはない。音濱岳の邸宅は彼の実家だ。帰ろうと思えばいつでも帰れる。それにもし彼が姫華を紹介しに家に連れて帰れば、家族たちは大喜びするはずだ。善は姫華のことが好きだということを兄にだけ伝えていた。蒼真は弟が姫華を追いかけることには大賛成だった。星城でのビジネスを広げる意向もあり、そうすれば弟が星城に長期的に滞在し、結婚へもさらに近づくというわけだ。善は自分の家の門の前に立ち、一颯の車がやって来るのを見ていた。その時一颯の顔もしっかりと確認した。そして自分のほうが一颯よりもイケメンだと思い、ホッと
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