All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1951 - Chapter 1960

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第1951話

「黛家ご当主の和子様」玲は低い声で言った。「凪さんはそんなふうには見えません。むしろ俺はうちのボディガードが彼女にぶつかってしまい、どこか怪我をさせてしまうんじゃないかと心配するぐらいですよ」玲は凪を気に入っており、いつも弟に彼女を口説けと説得していた。それほど玲は彼女のことを評価しているのだ。多くの人間は、ただ凪を表面的に見て彼女には当主になる器はなく、そう簡単に当主の座にはつけないだろうと思っている。黛氏一族のビジネスは多くが当主が中心となり管理している。周りはみんな凪が何も力を持たず、弱者で世間を知らないお嬢様だと思っているのだ。しかし、玲は凪の本性を見抜いていた。弟は黛家は深い闇を抱えた一族であり、もし彼が凪と結婚することになれば、一族の争いに巻き込まれてしまうと言っていた。そして今、和子の凪に対する態度を見ると、玲は弟のほうが自分よりも黛家を見抜いていたのだと認めざるを得なくなった。「白山社長、うちの姉は大丈夫ですよ。痛いって叫んでもいませんでしたもの」この時、若葉が話に入ってきた。若葉は玲が凪を庇うのを見ていられなかったのだ。玲がたった少し凪を庇うような言葉を言っただけでもだ。若葉はどうも玲が凪を庇っていると感じてしまった。柏浜では玲からこのような扱いをしてもらえる女性は一人もいない。それがさっき、若葉は玲の凪に対する態度がとても優しいのを目撃してしまった。若葉はそれを目の当たりにすると怒りが込み上げてきて、凪が玲に色目を使っていると思い、すぐに母親に凪は恥も知らずに、女性たちがよく使う汚い手を使って玲に近づいてると訴えたのだ。「白山社長、先ほどは申し訳ありませんでした。もう大丈夫です。私、ちょっと化粧室に行ってきます」凪は周りから注目されるのが嫌で、適当な言い訳をしてさっさとその場を離れた。「白山社長」凪が去った後、奏汰が入ってきた。彼と一緒に奏汰のファンになった碧もやって来た。碧は奏汰が十数人もの恋敵を相手に、口舌戦で勝利をおさめたことに、感服していた。そして今、碧は奏汰のファン一号になったのだ。奏汰が入ってくるのを見て、会場にいた人たちは、この日の昼間に起きた出来事をすぐに思い返した。星城の結城家の御曹司である奏汰がなんと公の場で白山玲に告白したのだ。し
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第1952話

言い終わると玲は奏汰に背を向けて去ろうとした。「将来は家族になるんですから、先に口慣らししておいたほうがいいでしょう」奏汰は厚かましくも玲の後についていき、知り合いの社長に会うと、彼も丁寧に挨拶した。奏汰がまるで玲の金魚のフンのようにくっついているので、よく知った社長たちもただ会釈する程度で、奏汰とは長く話すことはなく、話せる機会もなかった。奏汰はすでに玲のくっつき虫になってしまい、いくら彼女が奏汰を引き剥がそうとしても無駄だった。玲のボディガードも奏汰を止めることができなかった。彼らは奏汰をどうにか離そうとするが、いつも奏汰が相手になり彼らの中には誰一人として彼に敵うものはいないと気づいた。結城家の男たちはみんな文武両道らしい。ただ数年ほど護身術を習ったくらいかと思いきや、彼らは本格的な武術の腕を持っている。「結城社長」玲は奏汰にいつまでもつきまとわれて、もはや眩暈がしてきて、足を止めると彼に詰問した。「一体何を考えているんですか?俺がビジネスの話をする邪魔になっていると気づいていないんですか。会場にいらっしゃる他社の社長とゆっくり交流ができないでしょう」奏汰はけらけら笑って言った。「俺に気にせず商談して彼らとぜひ交流してください。俺は別に話題に入っていったりしません。それに、俺がそちらのビジネスを奪うことはありませんので、ご心配なく。俺はただ飲食業だけ任されてる身なので、奪えるビジネスはとっくの昔に手に入れてますから」玲は怒りを抑え、冷たい声で言った。「今日の行いのおかげで、今や俺たちは注目の的です。俺が社長たちと商談をしたくても、相手の注意はみんなあなたに向いてるんですよ」奏汰は玲に美味しい物を持ってきて、先に食べてから彼女に毒は入っていないから安心して食べていいと教えていた。常に彼女に何を飲むか、お腹が空いていないか尋ねていた。非常に気が利き、彼女に優しくする様子を周りからしてみれば、二人はまるで本物の恋人のように見える。それで、玲はいくらそうではないと反論したくても、言い訳のように見えてしまう。「じゃ、また今度商談をすることにして、今夜は二人で美味しい物を食べて、飲んで楽しみましょう。あなたが持参したワインのうち一本はもう飲んでしまいましたよね。もう一本開けて隅の方でゆっくり酒を楽しみましょうよ」グラ
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第1953話

奏汰の話を聞いて、玲は一瞬慌てた様子を見せた。玲はまさか奏汰が、自分に本当は男なのかと聞いてくるなど思いもよらなかった。玲の奏汰への疑いはほぼ間違っていなかったわけだ。この男は全て知っていたのだ!一体どうやって知ったのか?しかし、玲はただ一瞬だけ慌てただけで、すぐにはっきりとこう言った。「俺は男です!自信を持って言えます!」彼女はもう二十年以上も男として生きている。だから彼女が男だと言う証拠を奏汰が提示することはできないと思っている。たとえ奏汰が彼女のボロをついて口に出してきたとしても、そのボロを修正することもできる。この時、奏汰はまだ笑みを浮かべていた。彼は二人を隔てるロ―テーブルをぐるりと回り、玲の目の前までやって来ると、高いところから彼女を見下ろした。玲はこのように奏汰に見下ろされるのが嫌で、すぐに立ち上がって彼と向き合い、互いに目を合わせた。見た感じでは、彼女と奏汰の身長はほぼ同じだ。実際は、奏汰のほうが玲より少し高い。「白山社長、あなたが男だと言うなら、目の前で服を脱げますか?」そう言うと、奏汰は前かがみになり顔を玲に近づけた。あと少しだけ前のめりになれば彼女にキスしてしまいそうな距離だった。それでも玲は彼の目線をしっかりと受け止め、奏汰のその行動に慌てることはなかった。「俺がどうしてあなたの目の前で服を脱がなければならないんです?俺には捨てる恥もないとでも?」奏汰は笑った。「玲さん、ただ脱げないだけでしょう。あなたは男だと言いましたね、俺だって男です。なら、あなたにあるものは俺にだってあるのに、どうして脱げないんですか。ここには俺たち二人だけだから、あなたが服を脱いだって誰かが知ることもないでしょう」玲はそれでも顔色を変えなかった。「俺が男だと言ったら男なんです。別に服を脱いでそれをあなたに証明する必要などないでしょう。結城社長、そうやって俺を疑うということは、何か証拠でも見せてくれるんですか?」この時の彼女はわざと声のトーンを落とし、女っぽさを出さなかった。喉ぼとけもあるし、胸もまな板。振舞いも男性そのものだ。二十年以上、男を演じてきて、お風呂に入る時にだけ、彼女は実は女だということを思い出すのだ。奏汰は視線を彼女の顔から下のほうへずらして、首元に、それからまた
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第1954話

奏汰は焦らずゆったりとベルトを外しながら言った。「白山社長が脱いで男だと証明するのは嫌なようですが、俺は喜んで自分が男かどうか証明しますよ」本気で奏汰がズボンを脱ごうとしているのを見て、玲は表情を暗くさせて言った。「わかった、わかったから、謝ります。さっきのは失言でした。結城社長は正真正銘、立派な男です!」奏汰は彼女を少し脅してみたのだ。本気で彼女の前でズボンを脱ぐ気ではなかった。玲も謝ってきたし、奏汰もまたベルトを締め直して、こう言った。「俺は白山社長よりもスカッとした男でしょう。社長は普段、率直でさっぱりとしている方なのに、ズボンを脱ぐ点においては、俺よりも、もじもじしてるんですね。まるで女の子みたいな反応じゃないですか」玲は不機嫌そうに顔を暗くさせた。「白山社長、まさか本当に女性なんじゃないでしょうね?」「そんなことを言うあんたのほうが女でしょう」奏汰はケラケラ笑った。「俺がもし女なら、社長が結婚してくれるまで、しつこくもっとつきまとっているでしょうね」「もう一度言いますが、あんたにはまったく興味ありません。だから、いつまでも俺につきまとわないでいただきたい。もうすでに俺の私生活や仕事にかなりの影響を受けてるんですからね」玲は語気を緩めて、奏汰に道理を説こうとした。ターゲットの女性を落とすまでは、結城奏汰には話が通じなくなっている。彼は瞳を輝かせて玲を見つめて言った。「もう周りには白山社長を追いかけると宣言してしまってます。まだ一日しか経ってないのに、ここですんなり諦めてしまったら、誰が俺を男が好きだなんて信じます?」「つまり、結城社長は周りに本当に同性愛者だと完全に思わせたいと?それなら他の男に協力してもらえばいいでしょう。なぜどうしても俺じゃないといけないんですか?」「それは、俺が白山社長のことが好きだからですよ。あなたは他のどの男よりもカッコいいですからね。俺は自分と同レベルくらいのイケメンが好みなんで」玲は言った。「……星城にもそのような男性がうじゃうじゃいるでしょう。俺よりも優秀な人ならいるというのに、どうして彼らを利用しないんですか?」「彼らとは早くに知り合って、仲が良いですから手をつけられないんですよね。それに、知り尽くしてしまっていて、そういう気持ちになれないんです。白山社長は彼ら
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第1955話

玲は奏汰に言った。「もし、俺が結婚することになった日には、必ず式にお祝いに来ていただきますよ。グルームズマンも頼みます。ご祝儀は気前よく包んでくださいよね」奏汰は、ははははと笑った。「もちろん、豪快にご祝儀を包みますよ。一生あなたのグルームズマンを務めることはないと思いますけどね。それより、あなたの新郎にならなれますよ。式で集まったご祝儀は全て社長のへそくりとしてもらっていただいて結構です」玲が奥歯を噛みしめて、蹴りを入れて部屋から追い出したいと思っている様子なのを見て、奏汰はにこにこと笑いながら去っていった。今夜パーティーに来て、収穫が何もなかったわけではない。結城おばあさんは奏汰に嘘をついてはいなかった。確かに玲は女性だ。奏汰が出ると、玲はバタンッと大きな音をたててドアを閉めた。彼女は急いで下に行こうとはしなかった。誰かに彼女と奏汰が一緒におりるところを目撃されると、あの噂をもっと確かにしてしまうことになる。ソファに戻って座り、背中を座席にもたれた。玲は眉間を押さえて、深く考え事をしていた。結城奏汰はどうやって女だと見抜いたのか。「プルプルプル……」この時、携帯が鳴った。玲が携帯の着信を見てみると、それは母親からだった。一日経つというのに、両親は今になってようやく電話をかけてきた。彼らに情報が回るのは本当に遅い。玲は母親からの電話に出た。「玲、結城奏汰さんがあなたを好きになったって宣言したのは本当なの?」玲は淡々とした口調で答えた。「母さんは今頃やっとそれを知ったわけ?てっきり柏浜全員に知られてしまったと思ってたぞ」「私はお父さんとドライブに出かけていたの。景色を楽しむのに集中してニュースなんて見なかったのよ。だから、この件を知らなかったわ。しかも、碧がさっき家族グループに動画を送ってきて、あの子に尋ねてから何があったか知ったんだからね」白山家と交流がある人たちは、玲の両親がこんな大事件を知らないはずがないと思っていた。玲の親ですら何も言わないのに、彼らがいちいち口を出すわけにもいかない。それにみんな、一番焦っているのは玲の両親ではなく、星城の結城家、奏汰の両親のほうだと思っている。そもそも男が好みなのは奏汰のほうであって、玲ではないからだ。玲の両親が焦ってどうなる?玲は心の中で
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第1956話

弥和は玲の話に驚いてしまった。すると彼女は焦って尋ねた。「奏汰さんがあなたが実は女だって知ってるの?どうしてわかったのよ?」それに娘が男ではないと疑う人は初めてのことだ。弥和は驚いてから、今度は喜び始めた。奏汰が娘は男装をしているのだと疑っているということは、つまり彼はこの「長男」を女だと思っているということだ。だから、奏汰は女である娘を口説いているということになる。つまりそういうことであれば、いくら結城おばあさんが奏汰に特定の女性を結婚相手に選んでいるとしても、奏汰がその相手を気に入らないのだから、娘の玲にも希望はあるということだ。この時の弥和ときたら、まるでジェットコースターに乗った時のように、一気に気持ちが上がったり、下がったりと忙しかった。玲は頭が痛かった。「私だって彼がどうしてこんな疑いを持ち始めたのかわからないよ。彼と一緒にいる時には、別にボロを出すようなことはなかったはずだし」彼女が奏汰と一番長くいたのは、あの日曜日だ。平日も、たまに顔を合わせる程度だった。だから交流した時間ももちろん少ない。他にもたくさん彼女と付き合いのある人間は多くいるのに、誰も玲が女だと疑ったことはない。「彼に、何かあなたが女だって証明できるものはないか聞いてみたら?」弥和の声は興奮した様子だった。玲はそんな母親の様子に気づき、彼女が一体何を考えているのかすぐに悟り、遠慮なくバサッと切る言葉を吐いた。「母さん、結城家のおばあ様が彼に結婚相手の女性を選んだんだ。遅かれ早かれ、彼もその女性と結婚するしかないんだよ」それに対して弥和は言った。「未来の事なんて、誰にもわからないでしょ。ところで、玲、奏汰さんは何て言ってたの?一体あなたの何を見て疑い始めたのかしら」弥和は結城家の家風は非常によく、年配者たちも考え方は非常に自由だと聞いている。たとえ玲がおばあさんの選んだ孫の嫁候補でなかったとしても、玲はトップクラスの名家の令嬢だ。本当に奏汰が玲のことを好きで、二人が両想いになれば、結城家の面々もそんな奏汰の選択を受け入れ、玲を迎え入れてくれるはずだ。もし、結城家がこの二人の結婚に反対するというなら、弥和は白山家として婿養子を迎えるのもいいかもと思った。「ただ勘だって。私がなんとなく女だって感じるって。だから証拠なん
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第1957話

弥和は言った。「そうね、結城家の方はみなさんとても素晴らしい方たちばかりだわ」奏汰が自分の娘を追いかけていて、しかも奏汰が娘は男ではないと疑っていることを知ると、弥和はまた希望に胸を膨らませ始めた。弥和は初めからこの結城奏汰という若者を高く評価していた。「あなた、奏汰さんはどうやって玲が女だって見抜いたのかしら?あの子は二十年以上も男装していて、私が自分で生んだ子じゃなかったら、女の子だって信じられないところだわ。それくらい男性に見えるんだもの」「玲はなんて言ってる?」「奏汰さんが直感で、あの子が男じゃないって思ったって」茂はにこにこと笑い、また奏汰を褒めた。「奏汰君は人を見る目があるなぁ。その直感とやらも確かだ。さすが結城家の御曹司ってところだな」弥和は黙っていた。「弥和、奏汰君がどうやって玲が女だと見抜いたかなんて、この際どうだっていいさ。奏汰君は別に男に興味があるわけじゃなく、うちの娘を好きだってわかっただけで十分だ。奏汰君のこと、本当に心から気に入ったぞ」「私だってそうよ」未来の義父母は奏汰のことをますます気に入っていった。奏汰と玲は何も関係がスタートしていないが、弥和はすでに奏汰を娘婿として見ている。玲はこの時、両親がすでに奏汰を婿として見ていることなど知らず、ソファに少しの間静かに座っていた。するとドアをノックする音が聞こえて、立ち上がりドアを開けに行った。そこには碧が立っていた。「兄さん、大丈夫だよね?」碧は心配して尋ねた。「奏汰さんがおりてきて、満面の笑顔で嬉しそうにしてたからさ、もしかしてと思って……」碧は上から下まで姉の様子を確認し、姉の服が乱れておらず、何もなかったことがわかり、ほっと安心した。「そんなわけないだろ?ただ彼には俺は男で、もうつきまとって来られても気持ちを受け入れることはできないから、さっさと諦めてくれと伝えただけだ」玲はそう言いながら、部屋を出て、プレジデンシャルスイートルームのドアを閉めた。「パーティーはまだ終わっていない。行くぞ」玲は自分が今夜はパーティーに参加していることを忘れてはおらず、以前と変わらずホテルの部屋で少しの間仮面を外して休んでいたのだ。碧は姉について行った。そしてすぐに、二人は会場に戻ってきた。「白山社長」よく通
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第1958話

玲は若葉の誘いを冷たく断わった。「俺はあなたとは酒を飲むつもりはありません。失礼」そう言いながら、彼女はボディガードを従えて、若葉の隣を通り過ぎていった。若葉は目の前で横を通り過ぎていく玲を見つめ、何度か玲を呼びとめようとしたが、玲は一切構うことなく足も止めることはなかった。それには若葉も怒って悔しそうに地団太を踏んでいた。黛家は柏浜ではトップ財閥家ではないが、それでもトップクラスの名家である。以前、彼女はこの黛家の令嬢であり、ただパーティーに出席するだけで、次々と誰かから話しかけられていた。彼女のご機嫌取りをして、仲良くなろうと思う人はかなりの数がいたのだ。そんな彼女に恋焦がれる男たちも数多く存在した。しかし、そんな男たちは自分には何も能力がない金持ち家の七光りだ。若葉は黛家で育てられ、かなりプライドが高い女だ。そんな彼女がそのような二世たちを好きになることはなかった。しかしだ、優秀な男性は黛家の当主は婿養子しか迎えず、娘を嫁に出すことはない。それでみんな黛家の次期当主のご機嫌を損ねるような真似はしたくなかった。何も能力のない二世たちでしか、黛家の後継者を好きになることはないのだ。若葉は、玲を慕う他の女性たち同様、玲に一度会っただけで、忘れることができず、裏でこっそりと玲を観察してきた後、すっかり心を奪われてしまった。以前であれば、彼女が玲と話す時、玲は少しは頷いて彼女の話に応えてくれたし、たまに少しくらい話をしてくれていた。それが一年前に彼女の本当の身分が明らかになり、二度と黛家の後継者になれないとわかった。彼女が黛家で、本物の令嬢である凪と同様の扱いをされても、多くのことが変わってしまった。黛家の次期当主は、若葉ではなく、凪に変わったのだ。そして一族のみんなは凪のほうを気に入っていた。凪はさすが黛家の後継者となる人間だ、オーラが違うと言いはじめた。若葉から見れば、凪は度胸もない軟弱者に映っている。どこにオーラがあるというのか?黛一族の事業の一部はすでに凪に任されていて、今に至るまで何も問題が起きていない。若葉は会社の管理職たちが凪を手助けしていると考えている。そうでなければ、あんな田舎娘がどうやって会社の経営などできるというのか?パーティーに出席した時、みんなが若葉と凪に対する態度の違いこそが、若葉が
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第1959話

「あの結城家の御曹司、本当に図々しいです。白山社長は相手にしたくないのに、いつもくっついてまわるんですもの。まったく白山社長から離れようとしないんです」綾も奏汰のほうを見て言った。「結城奏汰さんね、彼はあなた達よりも優れていて、男だし、身分も高いわ。白山グループだって簡単に結城グループを敵には回したくないはずよ。だから白山社長のボディガードたちも結城社長に手を出すことはできないわ」それを聞いて、若葉はさらに嫉妬心をメラメラと燃やした。そしてまたぐっとワインを一口飲むと、綾に尋ねた。「凪は?」「どこの隅に行ったのか知らないけど、見てないわね」綾は凪のことが嫌いだった。まずは凪が田舎育ちであることが気に食わない。凪が生まれつきオーラを持った人間であり、黛家に戻ってきてから少し着飾っただけで若葉も敵わないくらいであってもだ。彼女は凪という人間はどうも狡猾な女だと思い、どうしても好きになれないのだ。凪は黛家では目立たないように、弱々しい様子でいるくせに、いつの間にか上の兄たちの手から多くの権利を奪っていった。それが彼らの妻である奥様たちは気に食わないのだ。綾は裏で若葉をそそのかして、凪から黛家の権利を奪わせようと企んでいた。若葉は黛家で育ってきて、昔から当主の教育を受けていたと主張した。確かに若葉は黛家の血を引いていないが、養女であっても娘には変わりない。本当のところ、若葉のほうが長女にあたるはずなのだ。若葉のほうが凪より十分早く生まれてきたからだ。綾が企んでいるのは、凪と若葉が権力争いをし、夫には漁夫の利を得てもらうことだった。他の名家は財産は息子に継がせることが多いが、黛家は特殊で、当主には長女が就くことになっているし、会社の株式もほとんどがその当主の手に渡る。黛家の男たちは昔からこの家の制度には不満をもらしており、これを変えてしまいたいと思っている。もし、凪と若葉の二人とも死んでしまえば、当主には娘がいなくなる。そうなると息子に当主の座を渡すしかないだろう?まさか分家の娘たちに継がせるわけにはいかない。綾は、義母である当主の陰険な性格を考えると、絶対に当主の座を分家の娘に継がせるはずはないと思っている。義母の性格からいって、もし娘が死んでしまえば、分家の娘たちも覚悟したほうがいいだろう。黛一族に女がいなくなれ
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第1960話

玲が凪のほうへ向かって歩いて行くのを見て、多くの女性たちが顔色を変えてしまった。この時、若葉が突然飛び出してきて、玲の行く手を阻んだ。そしてキラキラと笑顔を作り玲に尋ねた。「白山社長、私と一曲踊っていただけませんか?」玲は沈んだ声でそれを断わった。「すまない、黛さん、俺にはダンスパートナーがいるので」そう言いながら、玲は若葉の横を通り過ぎて、再び凪が座っているテーブルのほうへ近づいていった。凪は幸せそうに食事を堪能しているところに、突然多くの視線を感じた。彼女が顔をあげると、目の前に玲が立っていた。凪は驚き、すぐに玲に対して微笑んだ。「白山社長、何かご用でしょうか?」奏汰はその後に続いて歩いていった。奏汰が若葉の横を通り過ぎる時、彼女は思わず奏汰を転ばせようと足を伸ばした。若葉にとって、結城奏汰こそ最強の恋敵だ。彼が男であろうが、女であろうが関係なく恋敵なら大勢の前で転ばせて恥をかかせてやろうと思ったのだ。若葉は敵を甘く見過ぎている、怖いもの知らずだ。あの結城奏汰に足を引っ掛けようとしているのだから。奏汰は若葉の、このちょっとした動作に気づき、彼女の足に引っかかりそうになった瞬間、彼は前のめりに倒れ込むことはなく、軽く飛び跳ねて逆に気づかれない動作でサッと彼女に足をかけた。次の瞬間、ドタンッという音が響いた。誰かが転んだ音だ。もちろん、それは奏汰に足をかけようとして返り討ちにあった若葉だ。彼女は後ろ向きに手足をつく暇もなく倒れてしまっていた。頭から床に倒れたので、さっきの大きな音がしたのだ。会場にいる全員がその音がしたほうに目線を向けた。若葉はドレスを着ているのに、手足を投げだした格好で床に倒れてしまい、無様な姿になっていた。それだけでなく見られてはいけない部分が少し露わになってしまっていた。それに十センチ近いヒールの靴の片方が脱げて横に飛んでいってしまった。この光景に、全員が呆然としていた。そして近くに立っていた奏汰も驚いた様子だった。この光景を玲は見ていなかった。彼女は凪に向かい合っていて、背中を奏汰たちのほうへ向けていた。しかし、凪はさっきのシーンの一部始終をはっきり見ていた。若葉が先に奏汰に足を引っ掛けようとし、逆に奏汰に足をとられて転んでしまい、無様な姿になってしまった。こ
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