All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1931 - Chapter 1940

2464 Chapters

第1931話

弦はコップを置くと、詩乃に別れの挨拶をして立ち上がって帰っていった。善の横を通り過ぎる時、弦は善の肩をぽんぽんと軽く叩いていった。善はすぐに詩乃に言った。「おば様、僕は九条さんを見送ってきます」彼は弦が一体どういうつもりなのかはっきりさせておきたかった。詩乃は黙ってそれを許可した。善はスーツケースを姫華に返すと、弦の後に続いて家を出ていった。そして外に出ると、善は尋ねた。「九条さん、姫華のことを本気で好きなわけじゃないとわかっています。どうしてこんなことをしたのか教えてくれませんか?」弦は立ち止まると後ろを振り向いて善を見つめ笑った。「今はまだお話できません。ですが、桐生君、もっと頑張って完全に彼女を手に入れないと、もしかすると本当に誰かに取られてしまうかもしれませんよ。婚約までこぎつければ、心配する必要はないでしょう」善は苦しげに笑って言った。「そうしたくないわけないでしょう?夫人が本当に頑固で、僕と彼女の関係を認めてくれないんです。僕たちは今も頑張っていますよ。何があっても姫華のことを諦めるつもりはありません。九条さん、あなたが一体どういう理由でこのようなことをするのかはわかりませんが、あなた相手ではかなりのプレッシャーを感じます」好きな人と結婚するのが、どうしてこんなに難しいのか。彼はどうして順調に姫華と結婚することができないのだろう。やはり順調に付き合い結婚した悟と明凛が羨ましく感じた。二人はほぼ喧嘩することなく、両家も非常に相手を気に入っていて、すぐに彼らの結婚には賛成してくれたのだ。悟は、はははと笑って、また善の肩を軽く叩いた。「そこまでプレッシャーを感じているなら、今後しっかり彼女を大事にしてくださいね。じゃないと、いつでも誰かが彼女を奪おうと狙ってきますよ。世の中にはあなたより優秀な男性はまだまだいるんですから」善は頷いた。「僕はずっと姫華のことを大事にしていますよ」それに常に危機感を持っている。少し前まで、詩乃が姫華と一颯の仲を取り持とうとした時、善は危機感を覚えた。しかし、幸いなことに一颯は詩乃の言う通りにはならなかった。それに詩乃にはっきりと自分は姫華のことは好きでないと態度を示していた。姫華は以前、一颯の従兄である理仁のことが好きだった。一颯は自分が姫華と結婚する
Read more

第1932話

弦が一颯の面倒事を引き受けてくれたのだから、一颯はもちろん無条件で今回のことは秘密にしておくつもりだ。弦に注意されなくとも善は今回の件を誰かに話そうとは思っていない。噂になってしまえば自分にとって何もメリットがない。善は神崎邸の門の前で、弦が車を運転して遠ざかっていくのを見送っていた。甥と姪のお食い初めの時に一度A市に戻り、両親と兄夫婦に顔を出してもらえないか頼もうと善は考えた。善は本来、自分の誠意と心からの姫華に対する愛情に頼り、ゆっくり詩乃には自分のことを受け入れてもらうつもりだった。善も兄には、いくら時間をかけても気にしないと言っていた。彼と姫華が本気で愛し合っていれば、いつかきっと詩乃がこの現実を受け入れてくれるはずだ。善も自分の力だけで、好きな女性と結婚できるよう努力するべきだと思っていた。自分の力ではどうにもできない状況にならない限り、両親や兄夫婦に助けを求めたくはなかった。詩乃がまだ彼を受け入れないということは、つまり彼の誠意が足りないということだ。誠意が伝わらないのであれば、両親や兄夫婦に助けを求めたところで意味がない。両親と兄夫婦が星城に来た時は、それは結婚前の両家の顔合わせの時だ。弦の乗る車が見えなくなってから、善はようやく神崎邸に戻った。この時、ちょうど詩乃が姫華にどういうわけなのか詰問しているところだった。姫華は何度も繰り返し言った。「お母さん、もう聞かないでよ、私だってどういう事なのかわからないんだからね。ここ数日間は出張で外にいたのよ、毎日商談で忙しかったんだから。毎日、商談に行くか、唯花と明凛に電話して、仕事のことを話し合うかばかりだったよ。善君に連絡する回数だってすごく少なかったんだから。九条さんと連絡するのは言うまでもなく有り得ないでしょ。今だって彼の電話番号ですら知らないのよ。私が空港から出てきた時、彼はまるで地上に突然舞い降りてきたかのようだったのよ。いきなり私の荷物を取って、花束を押し付けてきたんだから。その時、私も一体何が起きたのかわからなくて呆然としちゃったわよ。お母さん、九条さんの話を聞くだけならいいけど、本気にしたらダメだからね。彼が私を好きになることなんて絶対有り得ないんだから。それに彼ずっと何かの任務をこなしているような態度だったし」しかし、一体誰に頼まれた任
Read more

第1933話

善が入ってきたのを見て、詩乃はまた無表情で何もしゃべらなかった。善は入った瞬間、雰囲気がおかしいと思った。どうやら弦が帰った後詩乃と姫華はまた口喧嘩をしたらしい。彼は何も知らない顔をして、姫華の傍に行くと、詩乃に言った。「おば様、九条さんはお帰りになりました」詩乃は唇をかたく結んでいたが、最後は口を開いた。「わかったわ、だけど、彼が今日ここへ来た理由は尋ねたの?」「九条さんは本気ではないようです」善は正直に答えた。「さっき彼からお父様に知られたら、神崎家に結婚の申し込み来るから秘密にしておくように言われました」詩乃は言った。「まあ正直に彼が言ったことをそのまま伝えるなんてね。あちらが申込に来たら、私がそのまま承諾するかもって、怖くないの?」「お母さん」姫華はすぐに自分の態度を示しておいた。「私は善君しか好きじゃないの、私と彼は両想いなんだからね。九条家のご当主が申し込みに来られても私はお断りするわ。決めるのは私自身なんだから」詩乃は何も言わず黙っていた。姫華は携帯を取り出して父親に電話をかけ、繋がると話し始めた。「お父さん、どこにいるの?いつ帰ってくる?うちに帰る時にお母さんに花束とアクセサリーに新しいバッグを買ってきてあげて、ご機嫌取ってあげてね」「姫華」詩乃はそれを聞いておかしくなり言った。「お母さんは別にあなたを羨ましいと思ってはいないのよ。あなた、さっきの話は気にしないでちょうだい。何も買う必要はないから、そのまま帰ってきて。もう長年夫婦をやってるのに、今さらプレセントだなんて」結婚記念日でもあるまいし。詩乃の誕生日か二人の結婚記念日に、夫は花束やジュエリーをプレゼントして良い雰囲気を作っている。「夫婦になって長年経ってたって、別にこういうロマンチックな事をしたっていいでしょ。お父さん、お母さんってきちんと肌の手入れしてるからまるで私のお姉ちゃんみたいでしょ、ほったらかしにしてたら、外にいる男がお母さんにつきまとってきて、ヤキモチ焼く羽目になるかもよ」詩乃は言った。「……またそんな適当なことばかり言って。さっさと出て行きなさい。桐生さん、あなたの彼女を連れて外で食事してらっしゃい。うちはまだご飯の用意をしていないから」詩乃は善が娘を迎えに空港まで行くと予想していた。二人は何日も会っていなかっ
Read more

第1934話

善は微笑んで言った。「お母様を恨むようなことは絶対ありませんよ。彼女はただ姫華さんのことが心配で、遠くに行かせたくないだけですから。僕がまだいたらないせいで、娘を任せていいと思えるような男じゃないからです。認めてもらえるよう、これからも努力します」二人は車に乗ると、善は彼女に尋ねた。「どこに食事に行きましょうか?」「善君が決めてくれていいよ」彼女が自分を信用してくれていると感じ、善はにこりと笑った。彼は車のエンジンをかけて車を出した。すると姫華がまた口を開いた。「ご飯を食べたら、星城高校のほうに寄ってくれる?唯花と明凛のお店、最近ずっと開けているの。明凛は家にずっといるのは暇でしょ、農場は市内から遠いから九条さんが出かけるのを許さないの。それで最近は本屋のほうに行ってるのよ」今や九条家の宝物とも呼べる明凛は、暇つぶしのために、今は高校が夏休みであまり客足がないが本屋に行っている。毎日他の店に遊びに行って、おしゃべりをしているのだ。「わかりました」「悟さんと弦さんは従兄弟同士で、関係も良いから、もしかしたら弦さんのあの行動の原因を悟さんが知ってるかも。それなら明凛も知ってるに決まってるわ」姫華は弦の目的がはっきりしないと、どうも安心できなかった。「この件は悟さんでも知っているとは限らないでしょう」善は運転しながら言った。「今日の事は弦さんは悟さんに教えないと思います。だから牧野さんにも直接的に聞かないほうがいいです。ただ言葉を濁しながら、最近の弦さんの動向について尋ねるだけでいいです」姫華は少し考えて頷いた。「誰があの弦さんにこんなことをさせたのかわからないしね」善は少しの間考えてから口を開いた。「白鳥さんは、ここ最近ずっと姿を見せていないようですね」「白鳥一颯?あの人が弦さんを動かすことはできないでしょ。あの結城理仁だって彼に頼むのは難しいのよ。それなのに白鳥さんがそれをやってのけるはずがないわ」姫華は善の言葉の意味を理解し、すぐに否定した。一颯は星城ではかなり目立たないように過ごしているので、多くの人が彼の存在を知らない。彼が白鳥家の御曹司であり、理仁の従弟であっても、あの九条弦に頼んで姫華と善の仲を邪魔してもらうことなどできないはずだ。「それもそうですね」善は笑って言った。「まあもうそれ
Read more

第1935話

弦は自分の父親は焦り過ぎて頭がおかしくなってしまったと思った。父親は弦がちらりと視線を向けた女性をなりふり構わず連れて来るようになった。父親が連れてきた女の子はもちろんきちんと両親のもとに返された。そしてこの件もきれいに隠ぺいされて、知る者はほとんどいない。姫華たちは明凛からこのことを知った。そんなことを聞かされたものだから、姫華は弦の父親の過激な行動に恐れているのだ。姫華は二十代後半で未婚である。もし弦の父親が息子が姫華に花束を贈り、しかも空港まで迎えに来たことを知ってしまえば、恐らく今夜にでも結婚の申し込みに来るはずだ。姫華は唯花にいつ戻ってくるのかメッセージを送った。すると唯花から電話がかかってきた。「姫華、出張から戻ってきたの?」「ちょうど今日帰ってきたのよ。あなたとおばあ様はいつ帰ってくる予定?それから陽ちゃんもね、会いたくてたまらないわ、彼は近くにいるの?電話に出して」姫華は心から陽のことが好きだ。毎回陽が幼く可愛らしい声で自分を呼ぶと、ふにゃりと溶けてしまいそうになる。唯花は笑って言った。「今外で遊んでるよ。私は家にいるから、陽ちゃんが戻って来たらテレビ電話かけさせるよ。ところで、商談はどうだった?」本来、唯花が出張して商談する予定だったのだが、結城おばあさんに言いくるめられて一緒に旅行に出かけてしまった。ちょうど、姫華は母親が一颯と自分を近づけようとするのに、かなり鬱陶しさを感じていたから、一人で商談に赴いた。出張するのを口実にして、数日静かに過ごしたかったのだ。「陽ちゃん、誰と遊んでるの?とっても楽しいみたいね。もうすぐ幼稚園でしょ、そろそろその心構えをさせておいたほうがいいよ。幼稚園が始まったら毎日行きたくないって泣き喚くかもしれないよ」自分が小さい頃もそのようだったと母親から聞いていて、彼女はからかってみた。姫華は小さい頃、遊ぶのが大好きで幼稚園には行きたがらなかった。毎朝幼稚園に行く時間だと彼女を起こすのに一家総出で代わる代わる説得する必要があった。そうすることでやっとベッドから起き上がらせられるのだが、彼女は起きても幼稚園に行きたくないとずっと泣き喚いていた。姫華自身はそのことを覚えていない。しかし、両親と二人の兄はたまに昔のことを持ち出してきて彼女を笑うのだ。姫華
Read more

第1936話

「わかった」唯花のほうから電話を切った。この時、陽と瀧が外から戻ってきた。二人は前後で続けて入ってきて、追いかけっこをしているらしかった。二人とも全身汗びっしょりになっていて、小さな顔を赤くさせていた。彼らについていた二人の家政婦が二分遅れで息をきらして中に入ってきた。恐らくこの二人は暫く彼らを追いかけ続けていたのだろう。唯花と遥が二人の子供の汗を拭いてあげているのを見て、家政婦二人は笑って言った。「若奥様、お二人は足がとても早くて、私たちでは追いつけませんでした」唯花は甥の汗を拭いてあげながら、返事をした。「二人とも武道をやっているから他の同年代の子と比べると脚力があるんでしょうね。私も二人には追いつけないかも」唯花自身も空手をやっていて体力はあるが、それでもすくすく成長している男の子には敵わない。遥が言った。「私なんてもうとっくの昔に瀧には追いつけなくなったわ。瀧は依茉の先生につくようになってから、動作がどんどん機敏になっていってるの」遥は依茉が瀧を育てるというのに同意したことは正しい選択だと思った。名医たちも瀧の教育を怠ることはなかった。それに瀧には武術も教えて、自分で自分を守れるように体を鍛えさせている。瀧は深い恨みが絡み合う世界と関係のある血筋だ。彼自身が強くならなければ、自分を守ることもできないし、将来できるであろう大切な人も守れなくなってしまう。実際、遥は瀧には普通の子供と同じように育ち、平凡な暮らしを送ってほしいと思っていた。しかし、瀧の素性を知った後、彼は普通の人と同じようには生きられないことがわかった。瀧自身が復讐の道を歩みたいとは思わなくとも、彼の家族を殺害した犯人たちが彼を見逃すことはない。彼らは未だに瀧の行方を探しているのだ。瀧は幸運の持ち主で遥に養子として迎え入れられた。それに依茉に才能を見いだされ、弟子として迎えられてからは伝説級の大物たちと暮らすようになった。その幸運がなければ、瀧は恐らく大人になるまで生きられなかったはずだ。桐生家の力をもってしても、完全に瀧を守ることは難しい。他人に身を任せるよりも、瀧を文武両道の優れた人間に育てたほうが、少なくとも自分を守ることはできるはずだ。他人に頼るより、自分を頼るほうがいい。「陽ちゃんは今武術のお稽古はどんな感じ?」
Read more

第1937話

遥が息子の様子を見に行く時、結城おばあさんが言った。「遥さん、娘さんは本当にお利口さんね。起きている時も寝ている時も、いつだっておとなしいんだもの」遥は泣き喚く息子を抱き上げて、おばあさんの言葉を聞くと笑って言った。「おばあ様、一日中芽衣を抱っこしてあげているから、泣くはずがないですよ。元々そんなに泣く子ではないんですから」娘の性格は絶対に夫の蒼真似だと遥は自信を持って言える。さらに蒼真を越えているはずだ。おばあさんは笑って言った。「私と唯花さんはもうすぐ星城に帰るでしょ。帰ったら、またいつ芽衣ちゃんに会えるかわからないもの。だから、しっかり一日中抱っこして堪能しておかないと」おばあさんの年齢では、恐らくまた音濱岳に来る機会はないだろう。遥夫妻が今後、二人の子供を連れて星城に来ない限り、おばあさんはこの可愛い双子に会う機会はないはずだ。「おばあ様、今後星城に行く時には双子も連れて会いに行きますから」善は姫華が好きだから、二人が結婚すれば遥夫妻はきっと頻繁に星城に行くことになる。遥と唯花たちも仲が良いから、子供が少し大きくなれば両親と一緒に出かけると言ってついて来るだろう。子供を連れておばあさんに会いに行くのも難しいことではないし、全く問題ない。おばあさんはにこにこ笑って言った。「双子ちゃんを連れてくるときには、事前に連絡してちょうだいね」おばあさんがいない時に来られると会えないからだ。遥は頷いた。唯花は彼女たちの会話を微笑んで聞いていたが、心の奥では思わずため息をついていた。おばあさんがここまで芽衣のことを気に入っているので、唯花は本当に妊娠して女の子を生みたいと思った。そうすれば、おばあさんが桐生家を羨ましがる必要もなくなる。しかし、唯花は今になってもまだ妊娠する気配がない。娘がほしいと言う前にそもそも妊娠自体していないのだ。自然に任せるしかない。……柏浜にて。午後、奏汰はあれからもう玲の前に姿を現わしていなかった。静かに午後は休ませてやろうと思ったのだ。玲と奏汰の二人はすでに柏浜では話題の二人になっていて、多くの知り合いは玲の秘書にまで連絡して、あのゴシップニュースが本当なのか確かめようとしてきた。ただ玲の携帯にはかけなかったので、玲の邪魔をすることもなく、彼女は知らないふりをし
Read more

第1938話

玲は唇をキュッと結び、話し始めた。「後で一緒に今夜のパーティーに出席してくれ」「はいはい」碧は姉からの要求を断わることはなかった。「兄さん、もう仕事終わらせて帰るの?」「うん」「じゃ、俺ももう帰ろうっと、兄さんと一緒に帰ってご飯食べるよ」姉と弟は普段はそれぞれ自分の家で暮らしていて、たまに一緒に実家に帰っている。多くの場合、碧は姉の家に行って食事をしている。姉は食にうるさく雇っているシェフが作る料理は特に美味しいのだ。玲はそれ以上何も言わずに電話を切った。オフィスを出た後、玲は秘書に尋ねた。「結城社長は会社の前で待ち伏せしてないか?」結城グループは柏浜にもホテルを数件持っていて奏汰がその責任者だ。ホテルの運営に何も問題がない限り、実際奏汰は特に処理しなければならない重要な仕事はない。だから、彼にはかなり暇な時間がある。しかし玲は違う。彼女は白山グループの社長である。毎日猫の手も借りたいほど忙しく、暇な時間など少しもない。図々しいあの男の顔を思い出し、玲はびくびくしていた。彼がまた会社の前に花を広げているのではないか考えてしまうのだ。午前、彼が地面に敷き詰めたあの花を芸能記者たちは現場で写真を撮ってはいない。しかし、あの時多くの人がその場にいたので、写真を撮った人たちがSNSにアップし、それが拡散されて記者たちが写真を使ってしまった。今、ネットにはあれらの写真が大きく一緒に載っている。その真っ赤な写真を見ると、玲は怒りがふつふつと込み上げてきた。芸能記者たちが大々的に彼女と奏汰のゴシップニュースを広めている時、玲はそれをとめることはなかった。奏汰は引き続きこのような騒ぎを起こすだろうから、メディアの報道をとめることはできないとわかっている。隠すこともできず、とめることもできないなら、何をしても時間の無駄だ。どのみち彼女も肝が据わっている人間だから、周りからいくら注目を集めても気にしない。「いいえ」秘書は丁寧に答えた。「警備部門には結城社長が来たらすぐに連絡するよう伝えてあります」「午後、彼は現れなかったか?」秘書は首を横に振った。「いいえ」それを聞いて玲はようやく安心した。彼女がエレベーターで一階におりると、碧と彼女のボディーガードがそこで待っていた。「兄さん」碧は
Read more

第1939話

「もし、白山社長が女性だったら、結城社長の隣に並ぶと本当にお似合いのカップルって感じでしょうけどね。二人は男性だけど、一緒にいると、まるで夫婦みたいな感じがしちゃうわ。結城社長が、うちの社長に数回しか会ったことないのに、好きになっちゃうのも理解できるわ。ねえ、白山社長、最後は結城社長のことを受け入れるかな?」すると受付嬢のもう一人が言った。「あるわけないでしょ、白山社長は普通に女性が好みなのよ。結城社長を受け入れるわけないじゃないの。それに、結城社長だって本気で白山社長を好きなのかはまだはっきりしてないわ。白山社長の弟さんが言っていたらしいけど、結城社長は家族から結婚の催促をされて、ある名家のお嬢様を相手として勧められてるけど、好みじゃなかったんだって。それで柏浜に出張するって言い訳をして逃げてきたのよ。で、うちの社長を利用して、自分が実は男が好きなんだって噂をわざと作り上げたってわけ」この時、二人の受付嬢が小さな声で討論しているのを玲はもちろん知らなかった。玲は会社のビルを出ると、本能的にまずは入り口付近を見て奏汰がいないか確認してから、やっと安心できた。数分後、玲の車が何台かのボディーガードの車に囲まれる形で白山グループを去っていった。ここまで玲から警戒されている奏汰が、この時どこにいたのかというと……彼は玲の家の前で彼女の帰りを待っていたのだった。新しく買った家はちょうど同じ住宅地にあるから、いつでも自由に来ておかしくないわけだ。玲が紹介してくれたおかげで、奏汰はこの家を購入することができた。彼はリフォームする予定なので、まだ家に住んではいない。しかし、ここに持ち家があることで、彼が現れても言い訳はできる。すでにリフォーム業者には連絡済みで、実際に作業が始まったらたまに様子を見に来るだけでいい。奏汰は玲の家のインターフォンは鳴らさなかった。とりあえず、屋敷にいる執事に知らせるのはやめておいた。玲は静かな環境を好んでいるし、実は男装している女性だということは秘密にしている。彼女の屋敷にいる使用人は多くないから、インターフォンを鳴らさなければ、中にいる人も家の前に誰かがいるとは気づかない。それに、奏汰は家から少し距離をとったところに車を停めて、その中で玲の帰りを待っていた。太陽が下に傾いてきてから、待ち人
Read more

第1940話

結城奏汰は従兄の理仁よりも狡猾な野郎だと玲は心の中で思った。奏汰の車は横向きに屋敷の門の前に停まっていた。玲の車の列は直接敷地内に入ることができず、停止するしかなかった。奏汰は玲が乗る車が見えると、車から大きな花束を抱えて降りてきた。午前中の花束とは違う。今回彼はお札を花の形に作ってもらい花束にしていた。なぜかというと、玲が柏浜のすべての花屋に、結城奏汰には薔薇を売るなという禁止令を出したからだ。奏汰は琴ヶ丘邸に助けを求める電話をかけたのだが、そんなに早く空輸することができなかった。それで、すぐに花の花束が手に入らないなら、とりあえず先に現金の花束を作ってそれを代用することにしたのだ。しかも、奏汰は午前中花屋にある全ての薔薇を買い占めてしまっていた。郊外にある花屋の花まで彼によって買い占められた。店は花の調達も間に合っていない。奏汰は車に寄りかかり、両手で現金の花束を抱いて、笑みを浮かべて玲の車を見ていた。彼はオーダーメイドのきっちりとしたスーツにネクタイを締めていた。この時の彼は優雅で気品があった。彼はあの結城家の御曹司の一人だから、この雰囲気は当然と言えるだろう。玲は今夜パーティーに出席する。白山玲を招待できるほどだから今夜は当然大きなパーティーなのだ。参加者は社会的地位も高く金持ちばかりに決まっている。そして結城家の奏汰が柏浜で長期的に暮らしているのであれば、必ずそのパーティーの招待状を受け取っているはずだ。しかし、彼はそうではない。今回のパーティーの主催者は彼に招待状を送っていなかったが、玲が出席すると知った奏汰が自ら招待状をもらいに行ったのだった。それで、彼は少ししたら玲のパートナーとしてパーティーに出席するつもりでいた。「これは結城社長じゃないですか。どうしてここに?」碧は奏汰に気づくと車を降りて、奏汰のほうへ近づいていき、笑顔で挨拶をした。車に乗っている玲は言葉を失っていた。玲はこの時、弟を一発殴ってやりたかった。彼女は、弟がいつかは実の姉である自分を売ってしまうのではないか、そんな予感がしていた。「もちろん、白山社長をお待ちしていたんだよ。碧君もいたんだね。ねえ、この格好イケてるかな?」奏汰は将来の義弟には態度を良くしていた。奏汰は車のフロントから離れて、
Read more
PREV
1
...
192193194195196
...
247
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status