玲のボディーガードたちが車を降りた。彼らは奏汰のほうへ近づいていったが、手を出すことはできなかった。以前、玲に恋し、追いかけてきていた女性たちと結城奏汰では身分が違う。それで、直接彼を捕まえて引きずっていくわけにもいかず、ただ説得を試みるしかなかった。「結城社長」あるボディーガードが丁寧な態度で話し始めた。「申し訳ありませんが、こちらの車が中に入れるように、車を移動していただけませんか」また別のボディーガードも穏やかな態度で頼んだ。「結城社長、それから玲様にはこれ以上つきまとわないでいただけませんか。彼は男性は好みではないのです」柏浜にイケメンならたくさんいるから、お前には回ってこない。しかし、主人は別に女性のことも好きではないようだと彼らは思っていた。彼らは玲に長年仕えているが、玲が誰か女性に優しくしているところを見たことはない。奏汰はボディーガードたちの話など無視して、玲が乗る車の窓をトントンと叩き、車から降りるか、窓を開けるかしてほしいと示した。「社長、結城社長」碧が小走りにやって来て、奏汰の肩に手を伸ばして言った。「結城社長、まずは車を移動させて車を通してください。家に入ってから話しましょう」それでも奏汰はまだ車内の玲を見つめていた。この時、玲は奏汰に対してかなり苛立っていた。最初の頃に持っていた奏汰に対する好感は、今日で完全に消え去ってしまった。彼女は心の中で、この厚かましい男のことを何千回と罵っていた。結城家の誰もこの男をどうにかしようとしない。理仁に訴えたのに、明らかに彼は従兄のプライベートな事に関わる気はなさそうだった。他の従弟たちが理仁にどうにかしろと頼みに行かない限り、彼も構うことはないのだろう。玲は心の中で、結城理仁はあの男の味方をしているのかもしれないと不満をもらした。何度か深呼吸をした後、玲は車のドアを開けて降りてきた。彼女は車を降りるとすぐに奏汰のほうに右手を伸ばした。奏汰はまず少し驚き、すぐに微笑んで手を伸ばして玲の手を掴もうとした。しかし、玲は彼の大きなその手を叩いて払いのけた。奏汰はどうしてこんなことをするのかという眼差しで彼女を見つめた。彼女は一体どういうつもりなのだ?手を繋いでもらいたくて差し出してきたわけではないのか?「車の鍵」
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