All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1941 - Chapter 1950

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第1941話

玲のボディーガードたちが車を降りた。彼らは奏汰のほうへ近づいていったが、手を出すことはできなかった。以前、玲に恋し、追いかけてきていた女性たちと結城奏汰では身分が違う。それで、直接彼を捕まえて引きずっていくわけにもいかず、ただ説得を試みるしかなかった。「結城社長」あるボディーガードが丁寧な態度で話し始めた。「申し訳ありませんが、こちらの車が中に入れるように、車を移動していただけませんか」また別のボディーガードも穏やかな態度で頼んだ。「結城社長、それから玲様にはこれ以上つきまとわないでいただけませんか。彼は男性は好みではないのです」柏浜にイケメンならたくさんいるから、お前には回ってこない。しかし、主人は別に女性のことも好きではないようだと彼らは思っていた。彼らは玲に長年仕えているが、玲が誰か女性に優しくしているところを見たことはない。奏汰はボディーガードたちの話など無視して、玲が乗る車の窓をトントンと叩き、車から降りるか、窓を開けるかしてほしいと示した。「社長、結城社長」碧が小走りにやって来て、奏汰の肩に手を伸ばして言った。「結城社長、まずは車を移動させて車を通してください。家に入ってから話しましょう」それでも奏汰はまだ車内の玲を見つめていた。この時、玲は奏汰に対してかなり苛立っていた。最初の頃に持っていた奏汰に対する好感は、今日で完全に消え去ってしまった。彼女は心の中で、この厚かましい男のことを何千回と罵っていた。結城家の誰もこの男をどうにかしようとしない。理仁に訴えたのに、明らかに彼は従兄のプライベートな事に関わる気はなさそうだった。他の従弟たちが理仁にどうにかしろと頼みに行かない限り、彼も構うことはないのだろう。玲は心の中で、結城理仁はあの男の味方をしているのかもしれないと不満をもらした。何度か深呼吸をした後、玲は車のドアを開けて降りてきた。彼女は車を降りるとすぐに奏汰のほうに右手を伸ばした。奏汰はまず少し驚き、すぐに微笑んで手を伸ばして玲の手を掴もうとした。しかし、玲は彼の大きなその手を叩いて払いのけた。奏汰はどうしてこんなことをするのかという眼差しで彼女を見つめた。彼女は一体どういうつもりなのだ?手を繋いでもらいたくて差し出してきたわけではないのか?「車の鍵」
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第1942話

「そうです、兄は結城社長のことは好きじゃないんですよ。俺はあなたのことが好きですよ、結城社長、だったらやっぱり俺にしませんか?俺と兄は双子の兄弟ですから、そっくりでしょ、俺を選んだって同じことじゃないですか」ここで碧が割って入って来て、へらへらと笑っていた。この時姉にぎろりと睨まれて、碧は鼻をさすって、笑うのをやめた。奏汰は真っ黒な瞳でじいっと玲の端正な顔を見つめていた。彼女がロングヘアにして女性の格好をすれば、まるで女神のように綺麗だろう。きっと彼が出会ってきた女性の中で一番美人だ。「白山社長、誰かを愛する権利はこの世のみんな、持っているでしょう。あなたは俺の将来のパートナーです。あなたのことが好きだから、他の奴なんてどうでもいいんです。最初は俺のことを受け入れられないでしょうからそれは問題ありません。時間をかけて慣れてくれればと思ってます。俺も、時間をかけて行動でそれを証明してみせます。俺は本気ですよ。何があっても、絶対に目移りなんかしませんから」そして奏汰は碧をちらりと見て言った。「たとえ、その人が社長とそっくりだとしても、だめですからね」玲はこの男に何を言っても無駄で、これ以上言い合っても意味はないだろうと思った。そして彼女は背を向けて、車に戻った。「車を出せ!」運転手はすぐに車を出した。そしてすぐに玲の車は白山家の敷地内へと入っていった。奏汰はあの現金の花束を抱えて、屋敷のほうへ大きく足を踏み出した。玲のボディーガードは奏汰を止めようとした。奏汰も彼らとやり合うことはなかったが、彼らが道を阻むのは気にせず、向こうが自分に手は出せないことがわかっているかのように、花束を抱えたまま足を止めることはなかった。ボディーガードは奏汰の道を阻もうとしながらも、後退し、彼に手を出すべきかどうか迷っていた。このような相手に目をつけられては、本当にしつこくつきまとわれても、はっきりとした解決策がなくて、実に面倒だ。碧は車に乗り込む前に、姉のボディーガードたちに言った。「兄さんは結城社長を止めるよう指示は出してないから、邪魔する必要はないよ。それにそんなことしたって彼を止められないから。彼が門から入れずに壁をよじ登って、万が一落ちて怪我でもしたら、結城家にも言い訳がしにくくなる」姉ですら奏汰相手にはどうす
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第1943話

家に入ると、執事は奏汰にソファに座るように言った。「結城様、何をお飲みになりますか?」執事が恭しく尋ねた。主人はさっきここへ来た者はお客だから、きちんともてなすように言っていた。「お茶をください。ありがとうございます」「かしこまりました。少々お待ちください」執事はその場を離れ、奏汰にお茶を淹れに行った。碧が入ってきた時には、ロ―テーブルの上には果物やお菓子が並んでいた。碧は執事にしてもらうまでもなく、自分で冷蔵庫からドリンクを取り出して、蓋を開けて一口飲み、喉の渇きを癒やしていた。「今日は本当に暑いな。やっぱ冷たいものを飲むと気持ちいいな」執事が彼に注意した。「碧様、いきなり冷たいものを飲んで、玲様に見られたら注意されてしまいますよ」「それだったら、なんで冷蔵庫の中に俺が好きな飲み物が何本も入ってるんだよ。俺が飲むから入れてあるんだろう。一本しか飲まないんだからいいじゃないか」執事はただ笑うだけで、碧に言い返すことはなかった。「三浦さん、俺のことは構わずに結城社長をもてなしてくれていればいいよ。もう少ししたら、俺と兄さんはパーティーに行くから、早めにご飯を食べるよ。社長もいることだし、キッチンには多めに料理を作るように伝えておいてね」「かしこまりました」そう言うと、執事は去っていった。そしてキッチンに手伝いに行った。碧はドリンクを飲みながら、奏汰のほうへ歩いていって傍に座った。それから奏汰をじろじろと見つめて話した。「結城社長は本当にハイスペックですよね。何をするのも能力が高くて優秀だし、あなたを前にすると自分がなさけなく感じちゃいます」奏汰はちらりと彼を見て、笑って言った。「碧君、そんなに褒めなくてもいいよ。俺は君には本気で興味がないから」「どうしてですか、なんで俺には全く興味がないんですか?兄ほどカッコよくないから?それとも、社長はクール系男子が好きだから?俺だって実際はクールに振舞えるんですよ。笑わないで真顔でいたら、兄とまったく同じですから」碧は突然奏汰の耳元に近寄り、小声で奏汰に尋ねた。「結城社長、俺たち、前より仲良くなったでしょう。社長が兄のパートナーになりたいなら、ちょっと個人的な嗜好を聞きたいんです。社長が兄を落としたら、あなたは攻めになりたいですか?それとも受け?兄
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第1944話

「兄さんが好きなことですか?確かに俺はよく知っていますよ。だけど、どうして社長にそれを教えなくちゃならないんです?教えれば、つまり自分の兄を裏切ることになるでしょ、だから兄のプライバシーに関わるようなことは絶対に教えませんよ」奏汰は大きく笑った。彼は碧から玲の好みが聞き出せるとは元から思っていない。玲の両親から聞いたほうが早いだろう。碧は他の意図はなく、ケラケラと素直に笑う奏汰の笑顔を見て、実際奏汰は玲のことを大事にしていて守ろうとしていると感じていた。「白山社長は帰ってからすぐに二階へ?」奏汰はあの現金でできた花束を横に置いて、お茶の入ったコップを持ち上げて一口飲むと、二階に目を向けた。「兄はもう少ししたらパーティーに参加するんです。彼は出かける前にはシャワーを浴びて服を着替える習慣があるんですよ。それから何か食べてから酒のボトルを二本持って行くんです」奏汰は言った。「酒のボトルを二本持参するってどういうこと?柏浜ではパーティーに出席する人たちは自分で持って行くのかい?」玲が出かける前にシャワーを浴びるのは、奏汰も普通のことだと思った。もしパーティーで酔ってしまい風呂にも入らず寝てしまったら、汚くて嫌になる。玲がこだわりの強い人間であることはわかる。生活する中で他にも潔癖なところがあるのかもしれない。潔癖が行き過ぎていなければ別に構わない。若干潔癖なところがあった理仁は結婚した後、それはなくなってしまったようだ。別に唯花が暮らす中でこだわりがないわけではなく、理仁が彼女と一緒になってからそこまでこだわらなくなったのだ。これが愛の力というやつなのだろう。碧は言った。「結城社長、兄を口説くなら、まずは彼がどんな人間か理解したほうがいいですよ。ただイケメンだからって衝動的に動いたら、後悔するかもしれないですからね。柏浜の社交界では、みんな兄がパーティーに出席する時には家で食事を済ませてから来るというのを知ってるんです。パーティー会場で兄は酒を飲みますが、それは彼が持参した酒だけなんです。別に会場で用意された酒が美味しくないわけじゃなくて、結城社長みたいな兄を慕う人間を警戒してのことですね」奏汰は黙ってしまった。彼は玲にはこのような習慣があると初めて知った。ここまで注意深いのだから、二十年以上も周りを
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第1945話

奏汰は碧のほうへ顔を傾けて尋ねた。「俺が君に気に入られるようなことをしたら、俺に何かメリットでもあるのかな?お兄さんをそのまま俺にくれるか?それだったら、いくらでも君に好かれるように頑張るよ」碧は言った。「……そう思ってたとしても、できないじゃないですか。兄さんに殺されちゃいますよ。社長は知らないでしょうけど、俺は小さい頃から兄さんに殴られ、毎日いじめられてきたんです。俺が優雅に振舞える人間だと思わないでくださいね。それは表面的なものだけで、偽物なんですから。兄は簡単に手をあげる傾向がありますので、家庭内暴力には気をつけたほうがいいですよ」奏汰が言った。「それはちょうどよかった、俺もそういう傾向があるんだよね。だから、殴り合いができるパートナーがほしかったんだよ。どっちが正しいか、間違いかは関係なく殴り合って、負けたほうが間違っていたと認めれば早い」その言葉に碧はまた言葉を失ってしまった。奏汰の考え方は、まるで彼らとは違うらしい。碧が言葉を失っている様子を見て、奏汰はおかしくなり、彼の肩を軽く叩いて笑って言った。「碧君、俺は騙されないから、嘘なんて言うんじゃないよ。君のお兄さんがどのような人なのかはいろんな人からうかがっているよ」「周りが言う話なんて表面的なものだけで全部嘘ですよ。うちの兄さんは面子を気にする人間です。それに記者からは常に目を向けられている対象です。もし、外面を良くしておかないと、うっかり外で盗撮されてニュースにでもなれば、白山グループに大きな影響が及んで損失のほうが大きくなります。だから兄さんは我慢に我慢を重ねて仮面を被っているだけですよ」奏汰は笑って言った。「俺が聞いた話だって本当かどうかは知らないよ。だから自分から彼に近づいているんだ。そうすればゆっくり彼がどんな人なのかわかっていくだろ。恋人になってもっと彼がどんな人間なのか知っていけばいいんだ。俺には残りの人生をかけて彼について知る時間があるから、君が心配する必要はないよ」「嘘だろ、まじで話が通じないよ……」碧は思わず愚痴をこぼしてしまった。相手について、ある程度把握していなければ、軽率に行動したりしないだろう?と奏汰は心の中で呟いた。二人は一階で世間話をしていた。そして暫くしてから、玲がやっと上からおりてきた。彼女は本当に服を着換えていた
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第1946話

「俺は忙しい人間ですから、結城社長に構っているような時間はないんです。社長がもしお腹が空いたなら、ここで食事していってください。お腹が空いていないなら、今すぐその花を持って帰ってくださいよ」「俺にちょうだいって言ったのに……」姉にまた睨まれて、碧はそれ以上何も言えなかった。奏汰はすぐに玲の傍に腰掛け、図々しくもこう言った。「空いてます。白山社長と一緒に食べて行きます。これは無理にもらってくれとは言いません。これから毎日、俺が柏浜にいる時には、あなたが受け取ってくれるまで、ずっと届けに来ますんで」「受け取ったら、もう二度と贈らないと?」「ええ、受け取ってくれるなら、なおさらプレゼントしますよ」玲は唇を噛みしめ、何も聞かなかったことにした。この時、執事がキッチンから出来上がった料理を運んできた。料理を運び終えると、執事はまた高級ブランドのワインを二本持ってきて、食卓に置き、玲に言った。「玲様、こちらは頼まれていたワインです。お持ちになるのをお忘れないように」「わかった。何か袋に入れておいてくれ」執事はまた袋を取りに行って、ワインを入れた。奏汰は玲と一緒の席で食事するのは初めてではなかったから、玲が食べるのが早いことを知っていた。だから彼もあまり余計なおしゃべりはせずに、黙々と将来の妻の家にいるシェフが作った料理を堪能した。食べてみるともう少し努力が必要だと感じ、後日機会があれば自分の料理の腕をふるってみたいと思った。玲の好みに合う料理を彼女に覚えさせていき、ゆっくり玲が自分から離れられないように育てあげるのがベストだ。誰かを落とすには、まずは相手の胃袋をしっかり掴めと言うだろう。食事を終えて十分ほど休憩してから玲は出かけようとした。奏汰はやはり彼女について行った。玲は車に乗る前に、振り返って奏汰に言った。「結城社長、俺は今からパーティーに参加するので、これ以上は控えてもらえませんか」以前、玲はこのようなパーティーに出るのは嫌いだった。しかし、自分のこの身分のせいで各種イベント事には出席せざるを得なかった。しかし、今夜の玲は早く行きたくてたまらなかった。パーティーに行ってしまえば、いつまでもしつこく自分の周りをうろちょろする奏汰から逃れることができると思っていたのだ。奏汰が柏浜に来てから、そう
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第1947話

一行はすぐにグラン・エデンに到着した。ホテルの前には数台しか駐車スペースがない。そこは玲の専用駐車スペースで、他の人が使用してはいけない。客の誰もがその身分に関わらず、車は地下駐車場に駐車する必要があった。奏汰も玲のおかげで、車をホテルの前に停めることができた。ホテルの前には多くの綺麗な女性たちがいた。彼女たちはそれぞれ綺麗なドレスを身に纏い、みんながキラキラと輝いていた。彼女たちがホテルの前に集まっていると、ある種の独特な眩い光景ができていた。奏汰は車を降りると、その美女たちが自分のほうへ向かってくるのに気づいた。これは一体どういう状況だ?奏汰は自分のほうへ向かってくる美女の群れに目を向けて、別に柏浜の美女たちに目をつけられてはいないはずだが、と思った。「白山社長」「白山さん」彼女たちの言葉を聞いて、奏汰はほっと安心した。自分目当てではなく、未来の妻のほうが目的だったわけだ。つまりそうなると、恋のライバルということじゃないのか?奏汰が歩いてくる令嬢たちを数えてみたら、十人以上もいた。ここにいるのは柏浜の社交界に名を連ねる富豪家の令嬢たちで、他にも女優、モデル、白山グループと提携関係にある相手や女性社員の中にも多くの玲のファンが存在している。玲が奏汰に出会う前は、本当に理仁が結婚する前と同じように冷たくクールだった。それでも玲を慕う多くの女性たちがいたので、理仁よりもつきまとわれていた。理仁の性格は周囲も熟知していたし、神崎姫華という強力な追っかけも存在していたので、姫華を敵に回すような真似はみんなしたくなかった。それで、理仁を追っかけてくる女性たちは玲ほど多くなかった。主に、玲の双子の弟である碧は奏汰同様に口が達者で、多くの恋人まではいかない女友達がいる。綺麗で品があり、碧とできる話題を持っているような女性であれば、碧からはそのような女友達として迎え入れられる。そして多くの女性が、碧を利用して玲に近づこうと企んでいた。玲のボディーガードたちがすぐに彼女が中心になるように囲んだ。碧は笑顔で彼女たちに挨拶をした。「みんな、こんなところで俺を待っててくれたのかな?」碧はにこにこと笑って言った。「俺だって白山社長になれる立場だし、『白山さん』だよ」するとある令嬢が笑って言った。「そうだ
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第1948話

奏汰が反応する前に、玲を慕ってホテルまで来た女性たちは、サッと奏汰を取り囲んだ。恋敵に立ち向かう時、しかもそれが彼女たち共通の恋敵であるので、彼女たちは心を一つに協力している。すでにこれほど多くの女性たちが玲のことが好きなのだから、競争はかなり激しい。そこへまさか男の恋敵まで増えてしまった。しかも星城から来た結城家の御曹司の一人だ。彼女たちは親から何度も、結城奏汰を怒らせるような真似はするなと注意されていたが、それでも我慢できずに奏汰に対峙してしまった。奏汰はホテルの中に入る前に、この十数人もいる恋のライバルに囲まれてしまった。しかし、奏汰は昔から口が上手い男で、ぺらぺら言葉巧みに彼女たちを黙らせてしまった。同時に十数人もの女性の恋敵に包囲されても、言葉で令嬢たちが何も言えなくなるほどに打ち負かしてしまった。そして最後に、勝ち誇った様子で堂々と顔を上げ胸を張り、意気揚々とホテルの中へと進んだ。姉と一緒にホテルに入っていなかった碧は、そのすべてを見ていた。しかも彼は携帯を取り出して動画まで撮っていた。それから奏汰が一人で十数人の恋敵に対峙して、言葉合戦を行った動画を家族のLINEグループに送信した。それは一家四人のグループだ。碧はそのグループの中で姉にアットマークをつけてメッセージを送った。「姉さん、見てよ、結城社長めっちゃすげぇぞ。姉ちゃんの追っかけもそれぞれすごいけどさ、結城社長を前にすると惨敗だった。しかも彼は一人で十数人の女性相手に言葉で闘ったんだぞ。すげぇ、本当に尊敬するわ」玲は全く携帯を見ていなかった。パーティー会場には多くの招待客が来ている。彼女は携帯を取り出してメッセージを見ている時に、近くにいる誰かにうっかり見られてしまい、女性であるという事実がばれるのではないかと恐れているのだ。家族グループでは、玲の両親は彼女を娘として見て話すし、弟は「姉さん」と呼ぶ。毎回グループチャットが終わると、彼女は家族にその内容を消去するように要求している。家族が自ら玲の秘密を暴露することなどないが、玲はやはり慎重になっていたほうがいいと思っている。特に最近、彼女は両親と弟が動きを見せて、協力して自分を誰かと結婚させようと企んでいると察している。玲のボディーガードたちはホテルの中で、うっかりある女性に
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第1949話

凪は慌てて言った。「白山社長、痛いところはありませんので、大丈夫です」彼女はこっそりとちらりと玲のほうを見て、すぐに頭を下げ、恥ずかしそうに声を小さくさせた。「白山社長、本当にすみません。歩いている時にちゃんと前を見ていなくて、あなたのボディーガードさんにぶつかってしまいました」「いえ、謝るのはこちらのほうです。ここには大勢の人がいるのに、俺がこれだけ多くのボディーガードを連れているから、それであなたがぶつかってしまったんですよ。でも、黛さんに怪我がなくてよかったです」玲は自分を慕って追いかけてくる令嬢たちには、どれも冷淡な態度をとり、特別誰かに優しくすることはない。凪のことを高く評価している玲は、無意識に語気を和らげ、端正な顔からは冷たさが幾分か消えていた。この一幕は周りからしてみれば、黛家のあの本物の令嬢が、古臭い手を使って玲のボディーガードにぶつかり、彼の注目を得たと映っている。「あの田舎娘、白山社長に妄想を抱くんじゃないわよ」「彼女は今本物の黛家の令嬢だよ。将来は黛家当主になるんだから、白山社長に目をつけたって当然よ。彼ってあんなにハイスペックで、あの結城家の御曹司までメロメロにさせちゃうくらいよ。黛凪がそんな彼に期待を抱いたってそれはおかしくないわよ」「そうだよ、もし俺が女の子だったら、俺だって彼と結婚したいって思うぞ」「黛家の当主様が若葉さんを連れて来てるわよ」ある人が、黛家の当主が養女である若葉を連れて歩いてきているのに気がついた。そして小声で、当主の耳に入らないように周りにこれ以上話すなと注意した。凪は耳が良く、周りのあのひそひそ話が全て聞こえていた。彼女は心の中で、そうよ、確かに白山社長に近づこうとしているの、あんたら文句でもある?と愚痴をこぼしていた。柏浜には多くの好青年がいるが、ほとんどは既婚者になっている。たとえ結婚していなくても、そのほとんどがすでに決まった女性がいるので、凪の目にはかなわない。以前、彼女は何度もお見合いしたが、気に入る相手はおらず、無理に好きになるのも嫌で、今に至るまで結婚はしていない。彼女の育ての親は心の中で彼女が十八歳になったら、お嫁に出してしまおうと企んでいた。彼女に紹介した男たちは、みんな金持ち家の二世で、金は持っているが、本人にはなんの能力もなかった。
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第1950話

凪は会社を設立し、かなりの財産を持っていることを、全て両親と兄妹たちには秘密にしていた。彼らにとられるのを恐れているからだ。まさか自分がもともと黛家の娘であり、財閥家の令嬢などと夢にも思っていなかった。ただ彼女の養父が悪だくみをし、凪と若葉を取り替えたことで、彼女がこんな悲惨な環境で過ごすことになってしまった。凪の実の両親と、三人の兄は凪との関係を認めたとしても、引き続き偽物令嬢の若葉を大事にしている。若葉の実の父親がこのような卑劣な行いをし、罰を与えても、若葉に情がある当主は、そのまま黛家の令嬢として置いているのだった。凪と若葉は同じ年の同じ日に生まれたが、若葉のほうが十分早く生まれてきた。それでいけば凪が次女ということになるが、黛家は血筋を重視する一族であり、将来黛家の当主となるのは凪だから、彼女を長女としている。「白山社長」黛家の当主はすでに七十を越えている。しかし、しっかりと肌の手入れをしているおかげで見た目は五十代前半に見える。そして当主の傍には、自分の娘として非常に可愛がり育ててきた若葉がいた。若葉は来ると、視線を玲に注いで逸らすことはなかった。「白山社長、うちの凪がぶつかりませんでしたか?」黛家の当主である黛和子(まゆずみ かずこ)は心配そうに玲に尋ねた。玲は言った。「いえ、うちのボディーガードがうっかり凪さんにぶつかってしまったんです。でも、彼女に怪我がなくて良かったです」玲のボディーガードのほうが凪にぶつかったと聞き、和子は言おうとしていた言葉を少し変えて、彼女はひとこと「あら」ともらした。「大丈夫ですわ、うちの凪は幼い頃から田舎で育ってきましたから、肉体労働もたくさんしてきて、皮膚も分厚くがっちりとした体だからぶつかっても痛くないんです」周りは思わずこそこそと話し始めた。凪が黛家に戻ってきてから、当主は実の娘である彼女には冷たい態度をとっている。自分の元で育ったわけではないので、情が全くないのだ。和子はひどい事も平気でやってのける冷たい性格をしている。そんな彼女が凪に優しくするのは簡単な事ではない。いくら和子の実の娘に対する情が薄いからといって、このように大勢いる場所であのような事を言うべきではないではないか。凪は母親と若葉がやって来た時、首を垂れた。まるで過ちを犯して怒られるのを怖
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