唯花が姉との通話を終えると、外から陽の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。彼女は陽の変わりように失笑して独り言を言った。「子供って本当にコロコロ機嫌を変えるものなのね」もう子供はいつ生まれるのかと聞いてこなければそれでいい。そして唯月のほうは新しい店舗に戻って車を駐車したところに、隼翔がボディーガードに車椅子を押されて中から出てくるのが見えた。彼は恐らく唯月に会いに来たが、不在だったので帰ろうとしているところだったのだろう。ちょうどこの時、唯月が戻ってきたのだ。唯月が車から降りてきたのを見て、隼翔はボディーガードにさがるよう合図を送り、店の入り口で笑顔で唯月が来るのを待っていた。「東社長、いついらっしゃったんですか?どれくらい待ってました?」唯月は歩いて来ながら彼に尋ねた。「私がお店にいなくても、何か用でしたら電話してくれればいいですよ」「俺もさっき来たばかりなんだ。ちょっと中をのぞいてみたけど、君の姿がなかったから帰ろうかと思っていたところにちょうど君が帰ってきたんだ。別に用があったわけじゃなくて、君の様子を見に来たかっただけだよ」唯月は今の隼翔にとって、再び立ち上がるための心の支えだ。日に日に実力をつけていく彼女を見ているだけで、彼は危機感を覚え、リハビリを頑張らなければという思いに駆り立てられている。彼女のことが諦めきれないというなら、隼翔はいっそ車椅子姿でも唯月が誰かにとられてしまわないように、守りを固めようと思った。唯月は彼の車椅子を押して中に入りながら言った。「オフィスは内装が終わったんです。中でお茶でもどうぞ」「ああ」隼翔は彼女に車椅子を押してもらっている時に、後ろを振り向いて彼女を見つめた。オフィスに入ると、彼は尋ねた。「さっきどこへ行っていたの?まんぷく亭にいると思って先にあっちに行ったけど、いなかったからこっちに来たんだよ」「ああ、ちょっと病院に行っていたんです」唯月は正直に言った。「佐々木英子さんの様子を見に行ってたんです。あと元夫の状況も一緒に聞いてきました。あの人は陽の父親ですからね」隼翔はそれにひとこと「そうか」とだけ返した。明らかに嫉妬している。唯月が俊介とヨリを戻すことは絶対にないとわかっていながらも、俊介が陽の父親である事実は変わりないから、陽がいる限り、唯月が俊介
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