All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1901 - Chapter 1910

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第1901話

唯花が姉との通話を終えると、外から陽の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。彼女は陽の変わりように失笑して独り言を言った。「子供って本当にコロコロ機嫌を変えるものなのね」もう子供はいつ生まれるのかと聞いてこなければそれでいい。そして唯月のほうは新しい店舗に戻って車を駐車したところに、隼翔がボディーガードに車椅子を押されて中から出てくるのが見えた。彼は恐らく唯月に会いに来たが、不在だったので帰ろうとしているところだったのだろう。ちょうどこの時、唯月が戻ってきたのだ。唯月が車から降りてきたのを見て、隼翔はボディーガードにさがるよう合図を送り、店の入り口で笑顔で唯月が来るのを待っていた。「東社長、いついらっしゃったんですか?どれくらい待ってました?」唯月は歩いて来ながら彼に尋ねた。「私がお店にいなくても、何か用でしたら電話してくれればいいですよ」「俺もさっき来たばかりなんだ。ちょっと中をのぞいてみたけど、君の姿がなかったから帰ろうかと思っていたところにちょうど君が帰ってきたんだ。別に用があったわけじゃなくて、君の様子を見に来たかっただけだよ」唯月は今の隼翔にとって、再び立ち上がるための心の支えだ。日に日に実力をつけていく彼女を見ているだけで、彼は危機感を覚え、リハビリを頑張らなければという思いに駆り立てられている。彼女のことが諦めきれないというなら、隼翔はいっそ車椅子姿でも唯月が誰かにとられてしまわないように、守りを固めようと思った。唯月は彼の車椅子を押して中に入りながら言った。「オフィスは内装が終わったんです。中でお茶でもどうぞ」「ああ」隼翔は彼女に車椅子を押してもらっている時に、後ろを振り向いて彼女を見つめた。オフィスに入ると、彼は尋ねた。「さっきどこへ行っていたの?まんぷく亭にいると思って先にあっちに行ったけど、いなかったからこっちに来たんだよ」「ああ、ちょっと病院に行っていたんです」唯月は正直に言った。「佐々木英子さんの様子を見に行ってたんです。あと元夫の状況も一緒に聞いてきました。あの人は陽の父親ですからね」隼翔はそれにひとこと「そうか」とだけ返した。明らかに嫉妬している。唯月が俊介とヨリを戻すことは絶対にないとわかっていながらも、俊介が陽の父親である事実は変わりないから、陽がいる限り、唯月が俊介
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第1902話

「唯月さん、俺は本気で君のことが好きだ。もうずっと前から君のことが好きだったのに、俺が鈍すぎてこの気持ちに全く気づいていなかった。もし、気づいていればさっさと君に告白して、ぎこちない時期をもうとっくに過ぎていただろうに」唯月は手を引っ込めると、仕事デスクの前にある椅子に座った。暫くの間黙っていてから、彼女は顔を上げて期待に満ちた隼翔の黒い瞳を見つめて言った。「社長、明日はどうなるか明日にならないとわかりませんよね。私は今すぐその答えを出すことはできません。今までずっと再婚なんて一度も考えたことがなかったので。今はしっかりリハビリを頑張ってください。もし、あなたが歩けるようになって、私も再婚について考えるようになっていれば、社長のことも考慮してみます」この答えでは隼翔を安心させるには足りなかったが、それでも少しは希望があることがわかり彼は笑ってうなずいた。「唯月さん、俺に希望をくれてありがとう」今後、毎日のリハビリを終えて、ボディーガードに唯月のところに送ってもらい、顔を見せていれば期待はできるはずだ。そうすれば、変な虫が彼女につくのを防ぐこともできる。唯月はまだ若く、スリムな体型に戻ってからは魅力的になっている。理仁が隼翔を店まで送ってから先に帰ってしまい、唯月に家まで送ってもらった日、唯月が車椅子を押して店から出てきた時、斜め向かいにある近くのスーパーの若い店長がいつも唯月をちらちらと見ているのに気づいた。唯月はおそらくそれには気づいていないのだろう。隼翔は今足が不自由だが感覚は相変わらず鋭く、唯月よりも敏感に周りに気を配り察することができた。「東社長、私も自分の考えが変わるとはっきり約束はできませんよ。今の生活はとても充実して自由なんです。だから、あまり考えを変える気はないというか」彼女は息子と一緒に生活している今も幸せだと思っていた。息子が幼稚園に通い始めたら、唯月は日中完全に自由に行動できるようになり、自分の店に集中できる。結婚すると親戚が増える。東家は名家で彼女が特別に何かする必要はなかったとしても、夫と義父母たち家族の事も考慮しなければならないので、今のような自由はなくなってしまう。もし、隼翔が付き合うだけで結婚しなくても良いと言うなら、唯月はもしかしたらすでに彼のことを受け入れていたかもしれな
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第1903話

唯月は封筒を受け取った。彼は成瀬莉奈が雇った弁護士だった。莉奈は殺人未遂事件を起こし、以前の罪と合わせてまだ判決が下されておらず、今は誰にも会うことが許されていない。判決がおりたとしても、唯月は彼女の家族でもないし、保護者的な存在でもないから、面会に来てもらうのも難しい。それで彼女は唯月に手紙を書いて、弁護士に持って行ってもらったのだ。実際、莉奈は死を覚悟していて、弁護士を雇うつもりはなかったのだが、家族が何を思ったのか、弁護士を雇った。彼女は、両親がおそらく、俊介の持ち家の相続のために弁護士を雇ったのだろうと思った。俊介の家の不動産権利書には莉奈の名義もある。あれは、彼女も相続する権利があるのだ。彼女の家族が弁護士を雇ったのは、彼女のために罪を軽くするためかもしれないし、もしくはあの財産を狙ってのことかもしれない。彼女と俊介には子供もいない。ようやく授かった命は、莉奈がうっかり転んでしまい、流産してしまった。その子供が亡くなってから、莉奈は将来に絶望してしまった。自分の人生にはもう希望がないと考えてしまい、かなり思い悩んだあげくに結局はナイフで俊介を刺す道を選んでしまった。莉奈の財産はもし彼女が死んでしまえば、それは俊介と、両親が相続することになる。しかし、もし彼女が財産を全て両親に残すと遺書を書き、俊介も死んでしまえば、彼らは無事、莉奈の財産を全て受け取ることができる。莉奈がこのように両親のことを考えてしまうのも無理はない。今の彼女は誰を見ても、自分のことを思っているのではなく、ただ利用しようとして近づいてくるとしか思えなかった。「内海さん、依頼者からこの手紙を受け取ったらすぐに見て返事をもらえないかと言われています。その返事を持って依頼者に会いに行きます」弁護士はそう唯月に頼んだ。唯月は言った。「そうでしたら、こちらにおかけになって、お茶でも飲んで待たれてください。今からゆっくり見てみます」弁護士はそれを拒否することはなかった。唯月は弁護士を中へ通して、オフィスに戻った。この時、隼翔は鋭い眼差しで弁護士を見ていた。彼が成瀬莉奈の弁護士で、莉奈が唯月に宛てた手紙を届けに来たと知ると、その鋭さは少しだけ和らいだ。弁護士に温かいお茶を淹れて持って来た後、唯月は座って、莉奈が書いたという手紙を開け
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第1904話

一時の感情に流されたことで、莉奈と俊介の二人は破滅へと導かれてしまった。そして、結婚生活に終止符を打ち、新たな人生を手に入れた唯月こそが勝利した。【唯月さん、ごめんなさい】と莉奈は何度も手紙の中に書き綴っていた。今までずっと聞けなかった莉奈からの謝罪の言葉を、遅れて今唯月は受け取ることになった。唯月は莉奈からの手紙を見終わり、暫くの間沈黙してから、弁護士に言った。「佐々木俊介さんはまだICUで生死の境を彷徨っています。だから彼女がどうなるかはまだわかっていません」莉奈がやってきた事について、唯月は返事をした。「彼女の謝罪を受け入れますが、許すことはできません。少なくとも、今は許すことは絶対にないのです。彼女が私たちの結婚生活をめちゃくちゃにしたからじゃありません。息子の陽にまで手を出したからです。私たち親子を死にそうな目に遭わせたことがどうしても許せないんです。彼女が更生できるチャンスがあるなら、刑務所の中でしっかり自分と向き合い、将来社会に戻ってきたら誰かのためになることをして、それで罪を償ってほしいです」弁護士も何も言わず黙って唯月が淹れてくれた温かいお茶を飲むと、口を開いた。「ありがとうございます。内海さんの話は依頼者に伝えます。そうだ、もう一つあるのですが。依頼者から、もし佐々木氏が亡くなった場合、あの家はお子様である陽君に譲りたいと」以前、莉奈は市内に家を持つことをひたすら夢見ていた。莉奈は、俊介が若くして順調に部長というポジションに就いたことと、市内に交通の便が良い家を持っているところに引きつけられたのだ。そして今では、彼女は何に対しても欲求はなく、ただ死にたいとだけ考えていた。もし死ねないのなら、唯一彼女に残ったあの財産を陽に譲ることで贖罪としたかった。「それに関しては、また改めてお話しましょう」今の時点では、俊介はまだ生きている。それに、俊介の両親は健在だ。彼が死んだら俊介の財産は彼の両親と妻が相続することになる。今誰も死んでいない状況では、唯月も財産相続に関する問題を話し合いたくはなかった。俊介の家に関しては、実際唯月は息子の陽のために相続を争いたいとは一度も思わなかった。もし、佐々木家が同意し、莉奈が相続を放棄するのであれば、自然に陽に相続させるなら受け入れようと思っていただけだ
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第1905話

「まだ帰りたくないんだよ。帰ったら、母さんからまた後悔したあの顔を向けられて、どうもイライラして落ち着かないんだ」それは正直な隼翔の気持ちだった。彼は母親のことを責めてはいない。あれはスピードを出し過ぎて事故を起こした自分のせいだからだ。しかし、母親はいつも自分のせいで息子が事故を起こしたと、自分を責め続けている。彼は自分の怪我の状況を知った後、すぐには現実を受け入れることができずに、自暴自棄になってしまった。それで母親の自責の念がさらに増すことになった。「東夫人の気持ち、理解できます。他の誰かがあなたを追いかけて事故に遭わせてしまったらもちろんその人は自分を責めるでしょう。それが実の母親ともなれば、なおさらですよ。お母様としっかりと話してみれば、きっと良い方向にいきますよ」自分で蒔いた種は自分で刈り取らなければならない。これは当事者たちの問題だ。周りがいくら何を言っても意味はない。「もちろん、母さんのせいだとは思ってないってはっきり伝えたさ、だけどやっぱりああなんだ。毎日後悔して自分を責めながら涙を流す母さんを見ていると、イライラしてきてしまって。だから気晴らしに外に出てないとやってられない。君のところに一日中いたって、俺は飽きたりしないし」足が不自由になってしまっている今、彼の気性はかなり荒くなっているのだ。母親のあの様子に彼は自暴自棄になり両親にひどく当たり散らすようになっていて、両親はそんな息子の姿にさらに辛く感じてしまう。この悪循環によって、家族はうまくいかなくなっている。彼が家にいなければ、もしかしたら両親も少しは落ち着けるかもしれない。「唯月さん、君は自分の仕事に集中してくれ。俺はここに座っているだけでいいから」唯月は微笑んで言った。「じゃあ、ちょっと仕事してきます。何かあれば声をかけてください、お手伝いしますから」隼翔は言った。「何かあれば俺はボディーガードを呼ぶからいいよ。君は自分のことだけをやっていればいいから。俺のことは気にしないで、俺はこれ以上ないってくらいに暇な奴だからさ」彼は退院してから、東グループの様子を見にも戻っていない。彼には会社のことを考える余裕はまだない。立てるようになるかどうかは気にせず、現実を素直に受け入れられるほど気持ちに区切りをつけない限り、会社に戻るこ
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第1906話

玲は携帯をおろし、心の中で奏汰が今回来た目的を考えていた。しかし、すぐに彼女は奏汰のことは考えないようにし、会議を続けた。会社の外にいた奏汰はクラクションを鳴らした。奏汰が会社に入ろうとしているのを見た警備員は、急いでゲートを開けて、車を中へ入れた。それから数分後。奏汰は真っ赤な薔薇の花束を抱えて、白山グループのビルへ入っていった。仕事をしている時間帯ではあるものの、仕事のため出入りする社員たちもいて、奏汰が大きな花束を抱えている姿は注目を集めた。「結城社長、こんにちは」二人の受付が丁寧に彼に挨拶をした。彼女たちも奏汰が大きな花束を抱えて入ってきたものだから、一体それを誰に渡すのか興味津々だった。会社に結城家の御曹司に見染められた女性がいるのだろうか?その幸運の持ち主は一体誰だろう。結城家は星城にあるが、巨万の富を誇る財閥家である。だから、どうにかして結城家に嫁ぎたいと考えている名家の令嬢は数多い。受付嬢は心の中で、もし自分がそんな幸運の持ち主であれば、遠く離れたところにお嫁に行くのだとしても、喜んで遠い星城まで行こうと考えていた。奏汰は笑顔で周りからの挨拶に返事をし、立ち止まることなく花束を抱えたまま、まるで眩しい光のような輝きを放ちながら中へと進んでいき、周りにとんでもない噂のネタを提供してしまった。奏汰は何事もないかのように颯爽とエレベーターに乗り込み、最上階へとあがっていった。玲は今会議中なので、奏汰は社長オフィスには入れない。そこで秘書に連れられて最上階にある応接室へ行き、そこで玲を待っていた。その応接室は会議室の隣にあるのだが、会議室の防音効果は高く、彼には何も聞こえなかった。奏汰はずっと入り口の物音に気を配っていた。会議が終了し、中からみんなが出てきて応接室の前を通り過ぎる時に、奏汰は花束を抱えて出て行き、みんなの前で玲に差し出すつもりだ。理仁と辰巳に相談した後、奏汰は悩みを捨てて唯花と辰巳が言うように、そのまま玲を口説く作戦に変更した。周りがどう言おうが、彼が男色好みなのかと疑われても、自分自身がわかっていればそれでいい。もし玲が本当は見た目通り男で、おばあさんに騙されたのだとしても、それはもうどうでもいい。しかし、彼はやはりおばあさんのことを信じている。実の祖母が本気で
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第1907話

この時、玲は険悪なオーラを放っていた。彼女は奏汰を睨みつけ、冷ややかな声で言った。「結城社長、これは一体どういう意味ですか?」持ってきたプレゼントとは、この薔薇の花束のことか?玲は別に花束が嫌いなわけではない。結城奏汰がこれを贈ってきて一体どういうつもりなのか。もし今彼女が病気で入院していて、奏汰が花をお見舞いに持って来るのであれば、それは理解できる。しかし、今はそんな状況ではないというのに、奏汰に花束を持って来られると、まるで告白を受けているかのような気分だ。ふざけている。今はまだ男装している姿だというのに。どうして結城奏汰が告白をしてくる?彼は別に男が好きなわけではないだろう。「別に特別な意味があるわけじゃないですよ。ただ途中に花屋があって、ちょうどこの綺麗な薔薇が入荷したばかりだったので、ちょっと買っただけです。でも、誰にもあげる人がいないし、柏浜でよく知っている人と言ったら、白山社長だったので、あなたにあげるしかないなと思って」奏汰は玲から鋭い視線で穴が開いてしまいそうなほど睨まれていたが、彼女のことを怖がることはなく、平静を保ったまま笑顔でそう説明した。ただ、あんな適当な説明では、誰も信じるはずがない。もちろん玲も信じていないが、その言い訳を素直に受け入れることにした。しかし、やはり花束を受け取るのは断わった。「それはどうもありがとうございます。しかし、俺は花はどうも好きじゃないんですよね。あげる対象がいないのであれば、会社で目についた女性に贈ればいいと思います」玲はそう言って、奏汰の横を通り過ぎて去っていった。突然奏汰に花束攻撃を受けて、玲は不意打ちを食らった。もし彼女が冷静で落ち着いて対応できないタイプなら、すぐにボロが出てしまっただろう。奏汰は花束を抱えたまま彼女の後に続き、歩きながら笑って言った。「柏浜では白山社長に一番目がいきますって。だから、この花はあなたに差し上げます。オフィスは殺風景なので、花を飾っておいたほうが活力が出ると思いますよ」「俺が生きてる限り、オフィスには活力が溢れていますので、別に花に頼る必要はないです。別に今は春でもないし」春になってオフィスに花を飾っておけば、春の雰囲気が出て、それならおかしくはない。奏汰はそれを聞いて、はははと大笑いした。「白
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第1908話

「まさか、俺以外にもそんなふうに思ってる奴がいたなんてな」「白山社長がメロメロにした女性は多すぎて、もう数えきれないくらいなのに、まさかあの結城社長も射止めてしまうとはな」「もしかしたら、結城社長は元から女性より男性のほうが好みだったのかも。だから、ずっと彼女がいなかったのよ。そしてうちの社長がもはや神レベルの美形だったから、それでようやく自分が実は男のほうが好きだったんだって気づいたんだわ。だけど、結城社長ってすっごく度胸のある方なのね。自分が男性のほうが好きだって気づいたら、すぐに行動を開始して、うちの社長を口説きに来たんだもの」「お前ら、普段星城のゴシップニュースなんか見ないから、きっと知らないと思うけどさ、結城家のおばあ様が結城社長には花嫁候補を選んだんだよ。だけど、社長はその相手が気に入らなくて、ずっとその相手を口説きに行こうとしなかったんだってさ」その暴露話をした相手にその場にいた全員が視線を向けた時、その人は得意げにこう言った。「俺はいつも星城のゴシップニュースが気になって見てたから、知ってるんだよ。結城社長が今回柏浜に来たのは、出張ってことになってる。ラグジュリゾートはここでは確実に根付いてるから、うちのホテルが潰せるってもんじゃないじゃんか?そんな状況なのに、結城社長がわざわざ出張する必要があるか?彼は絶対、結婚の催促にうんざりしてこっちに逃げて来たんだよ。結城社長は目が肥えすぎて、祖母が選んできた女性が気に入らないんだと思ってたけど、ようやくどういうことか理解できたよ」そう言いながら、その人は「俺の言いたいこと分かっただろう?」という得意げな顔をした。それを見て周りはどういうことなのか意味を理解した。つまり、結城社長は結婚の催促にうんざりして、ここ、柏浜に逃げて来た。そして彼が我ら白山社長のことを好きだと気づいてから、速攻でアプローチしてきた、というわけだ。それには結城社長はかなりの度胸の持ち主だとしか言えない。彼らのように、身分も地位も高い名家出身というのは非常に少ない。そんな彼らの一挙一動は簡単に世間の注目を集めてしまう。だから自分が同性が好きだと気づいても、それは心の奥底に秘めておいて、世間にはばれないように行動を控えるはずだ。しかし、結城社長はそうではない。堂々と我ら白山社長を口説きに来た。
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第1909話

満ちる怒りをなんとか抑え込み、玲は冷ややかな声で言った。「どうも、ご厚意は嬉しいですが、別に何も好きな物はありません。それに好きな物なら自分で買うことができるので、結城社長からわざわざ買ってもらう必要はないです」「白山社長がご自分で買った物と俺が気持ちとして贈る物とはちょっとわけが違うでしょう。ぜひ、この花束を受け取ってくださいよ。俺の気持ちを無駄にする気ですか?生まれて初めて誰かにこんな花束を贈ったんですよ」玲は不機嫌そうに表情を暗くさせた。「俺も、男から花を贈られるのは結城社長が初めてですよ」「男が男に花を贈っちゃダメなんですか?男だって人間なんだし、花は好きでしょう」玲は奏汰とは話にならないと思った。結城奏汰という男は厚かましすぎる。「結城社長、俺はとても忙しいので、今日はお引き取りください」玲は冷たい顔で奏汰に帰るように言った。「俺がここにいても、白山社長の仕事の邪魔はしません。何か話したりうるさくしないで静かにしてますから。白山社長の午後の仕事が終わったら、一緒に食事にでも行きましょう。奢ります」玲は言った。「……結城社長、帰らないというなら、警備員を呼んで外に放り出させますよ」奏汰はニコニコと笑って彼女を見ていた。明らかに彼女の話など聞いていない。玲は奏汰の態度に、成す術がなく、かなり怒りをため込んでいた。彼女は、奏汰のことをさすがは結城家の男、各方面に渡って非常に優れた人だと思っていたのだが、少しでも奏汰に好感を持っていたことを情けなく思った。まさかここまで図々しい野郎だったとは思いもよらなかった。玲はさっき言った通りにすぐに警備部へ電話をかけて、警備員を呼び出し奏汰を追い出そうとした。「警備員の方にそこまで迷惑をかけなくて大丈夫です。仕事が終わる時間に会社の入り口で社長を待っています。それから一緒に食事に、うちのラグジュリゾートのレストランに行きましょうよ。きっとご満足いただけると思います」奏汰はそう言うと、警備員に追い出される前に背を向けて去っていった。追い出されるようなことがあれば、それはかなり面子がない。彼は柏浜出身者ではないが、結城グループは柏浜にいくつものホテルを展開している。そして奏汰は飲食業の責任者であり、よくここへは出張している。だから柏浜の多くの社長たちとは
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第1910話

玲が自分の秘書に奏汰を会社の外まで見送れと言ったのは、この図々しい男がまた戻ってこないようにするためだった。三原は丁寧な態度で奏汰を下まで送ろうとした。奏汰はあの花束を持って玲に笑いかけ、秘書と一緒に社長オフィスを出た。その時彼が秘書に尋ねる言葉が玲に聞こえた。「この花綺麗じゃないですか?そちらの社長はどうしてこれを受け取ってくれないんでしょうね」玲は力を込めてオフィスのドアをバタンッと閉じた。そしてデスクに戻って腰掛けた時に、もう片方の携帯が鳴り出した。弟からの電話だ。「兄さん、俺今日は会社の会議に参加しなかったからさ、めっちゃ面白いことがあったみたいなのに、残念だなぁ」奏汰が姉に花束を贈ったところをすべての管理職が見ていて、その後、碧と関係が良いそのうちの一人が彼に情報を教えたのだ。玲は暗い顔をして、冷たい声で言った。「碧、他に何か言ってみろ、その舌を切り取るぞ」「はいはい、わかったよ。もう笑わないから、怒らないでくれよ。兄さんの顔じゃ、老若男女問わず誰もを魅了するからな。俺の友達だってさ、兄さんとあまり長い時間関わりたくないって言うんだよ、うっかり好きになっちゃいそうだってさ」この時、碧は友人たちと一緒にいたので、友人たちにばれないように、姉と呼ばないように気をつけていた。「兄さん、奏汰さんが薔薇の花束を贈ってきたんだって?しかもかなり大きいやつで上等な花だって。きっと何万かするぞ。本当に受け取らなくていいのかよ?」碧は姉をからかって遊んでいた。そして今ようやく、彼はどうして姉が常に奏汰を警戒していたのか理解した。女性の勘というものはやはり鋭い。姉はきっと結城奏汰がどこかおかしいと気づき、それで警戒心を高めていたのだろう。昨日一緒に外で遊んだばかりだというのに、その次の日に奏汰が姉にアプローチし始めた。もし姉が女性の姿に戻れば、奏汰からのアプローチは周囲が見ても当たり前の光景に映る。しかし、姉は今男として過ごしているので、奏汰から花束など贈られると、すぐにみんなのお茶の間の話題になってしまう。「碧、ぶん殴ってやる!」碧はケラケラと笑った。「はいはい、わかったって、もうからかわないから。兄さん、奏汰さんがこんなことするのは、きっと兄さんを利用しようと考えているからだよ。彼って、結城家のおばあ
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